彼のミスと彼女の昔話

「なあソニア。こういうのどうだ?」

エリックはソニアという少女に、蒼く輝く歯車を見せた。

「そうね。色は結構良いと思う。センスもあると思うわ。でも......。これじゃ、駄目。裏をよく見て」

エリックは歯車の裏をじっと見つめた。特に変わったところはないように見えるが、じっくりと見てみるとわかる。小さな小さなひびがはいっている。

「ほ、ほんとだ。でも......。何でこんなのがすぐに見えるんだ?」

ソニアは少し迷い、答えた。

「そういえば、エリックには話してなかったね。これはさあ、聞かなくってもいいんだけど、ちょっとした思出話なんだ。聞いてくれる?」

エリックは静かに頷いた。

「わかった。じゃあ少しおさらいするけど、私がこの街に来たとき、どんなだったか覚えてる?」

「えっと......確か俺が中央の広場に来たとき、みんながソニアに武器を構えてたよな」

「うん、そうだね。それで、エリックがみんなを説得してくれた。だから私は今安心できる。じゃあここで問題です。何で私はみんなから武器を向けられていたでしょう」

(なんだろう。ソニアがなんか悪いことでもしたのか?でもあの超お人好しのソニアがそんなことするはずないだろうし......。)

「うーん、わかんないかな?じゃあヒントあげる。正確には、なぜ私が。どうわかる?」

(ソニアが恐れられていた?それってどういう......!)

「わかっちゃった?そう私はみんなが恐れている」

彼女の言葉は、エリックに遮られた。

「ソニア‼俺はそんなこと信じないからな。お前はお前だろ?違うのか?」

彼は力いっぱい叫んだ。認めたくないのだ。誰だってそうだ。最愛の人が怪物だったら、誰だって壊れる。

「うーん。困ったな」

彼女は絶えず笑っている。

「そうだね。違うかな。私は......だから」

とうとう聞いてしまった。エリックは絶望する他なかった。

「ッ‼」

彼は全力で走った。なぜこうなった。

「ま、待ってよエリック‼」

彼にはもうソニアの声は届かない。彼は走り続けた。そして......。彼の体が宙を舞った。

(あ、俺死ぬのか。ソニア嘘だと言ってくれ。そしたら心おきなく死ねる。さあ言ってくれ。)

彼が願ったその時、彼女の魔法が、エリックに炸裂した。

「風の精シルフよ。我が呼び掛けに応え、彼の者を救う、導きとなれ。唸れ、リード・ウィンド‼」

異空間から輝かしい風が吹き抜け、彼の体を、地に導いた。

「はあ」

ソニアは深くため息をついた。

「エリック。逃げないで聞いて。私は......」

彼女がエリックに近づいた瞬間、ソニアの体を銃弾が貫いた。血しぶきがエリックにかかる。

「やったぞオオオ‼ついにあの化け物を殺したぞ。大丈夫か、エリック。今まで洗脳されていたお前を救えず、すまなかった」

そう言うと、街長がエリックを抱き締めた。エリックの心が赤黒く燃えた。彼は怒りに呑み込まれた。

グシャッという音のあと、街長が崩れた。

「どう......して」

エリックは街長を殺した。だが、その怒りはおさまらなかった。そして彼は街をその赤黒い凶悪な力で破壊した。彼が理性を取り戻したのは、完全に街が滅び、ソニアがエリックに話しかけたときだった。

「エリッ......ク」

「ごめん。俺のせいだ。ごめん」

「いい......よ。それ......より、聞い......て。わ、私、は......半機人ミオス、なの。死んでも、賢者の石があれば......人間として......蘇ることが......できるの。でもそれは、き、けん」

ソニアは死んだ。だが、彼女の言おうとしたことはわかる。

(わかった。でも俺はお前を救いたい。だから、待っててくれよ。必ずお前を救って見せる)

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