彼の魔力と機械少女

彼は右手から白く輝く歯車を取り出した。

「え、それってさあ、さっきあなたがなおしたものじゃない‼そ、それってど、どうするの?」

「黙って見てて」

そう言って彼は、横たわっている少女の腹部を無理矢理こじ開けた。

「きゃ!な、何これ」

「これは、機械人シルヴァン特有の心臓殻コアパーツだ。こいつの中に、機械人シルヴァンたちの心臓コアがあるんだ。心臓コアがない機械人シルヴァンは、動くことができない、つまり、ただの人形だ」

「で、でもさあ、あなたよくそんなことわかるわね」

彼はうつむいた。

(これは絶対に言えない。それが、ウィル、お前だとしても。)

「まあいいわ。誰にでも言いたくないことってあるわ。まあそのうち教えてちょうだい。ほら、続けなさいよ」

(そ、そうだった。今はこの娘を救うことを考えなければ。)

そして彼は、歯車をコアパーツにセットし、魔力を込めた。彼の魔力は、電流ライソラス、電気の力を自在に操ることができる。本来魔法は、攻撃の為に戦争などに用いられるが、彼は、歯車や機械をなおすために使っている。

「我はサンダエル。曇天よ我が呼び掛けに応え、我に力をかせ。微量の電流シックルビート‼」

エリックがそう言うと、少女の体を眩しい光が突き抜けた。

「す、すごい」

そしてしばらくすると、少女が目を覚ました。

「こ、ここは?」

さすがに驚くのは仕方ない。誰だってそうだろう。目を覚ましたらそこは自分の全く知らない場所なのだから。

「ここは、ファシシュって言う街にある俺の家だ」

「そ、そうですか。あの、えっと、た、助けて頂きありがとうございます。その、私、ガーネットと言います」

「そ、そうなんだ」

(さてと。どうすっかなあ。この娘を助けたのはいいけど、この娘どうせいく宛もないだろうし......)

彼がこの先について考えていると、ウィルの声に遮られた。

「ねえあなた。いったいあなたは何者なのかしら」

ガーネットは少し迷ったあと、語った。

「私は機械少女ルフライム、人間ではありません。そして、デルドルフという方に作られました。デルドルフさんに作られたあと聞きました。私についていたコアには特別な力が宿っているそうです」

「その特別な力って何なんだ?」

「それは......。わ、私にも分かりません。で、ですが、それが何者かに狙われ、奪われてしまったことぐらいはわかります」

「そうか」

(何者か、ねえ。確かウィルがガーネットを見つけたときは、棺桶に入れられて俺の家の前に置いてあったんだよな。でもどうしてだ。わざわざ人の家の前に置く必要なんてないだろ。もしかして何か意図があるのか。わからないことだらけだな。まあいいさ。いずれもこの娘のコアが奪われたという事実は変わらない。それが俺の求めているものの可能性もあるしな。)





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る