僕と歯車と賢者の石 序章

@kamishiroyaiba

物語の始まりと偽りの記憶

腐った街の腐った少年

 ここはシェミアル王国の北端にある小さな貧民街、ファシシュだ。少年は、その街のドクローズ遺跡の近くに住んでいた。

「ねえエリック、何をしてるの?」

「ん?ああ、歯車ガラクタをなおしてたんだ。なんなら、見るか?」

彼がもっている歯車は、綺麗に純白に、いや、白銀のように輝いている。

「すごいじゃない‼でも......それ、さあ、どうするの?また、もとの場所に返しちゃうの?」

そう、彼はいつもそうだ。すごい技術をもっているのにも関わらず、それを自分のモノにしようとしない。だが、今回は違った。なぜなら、歯車それが美しく煌めいていたからだ。

「そう......だな。これくらいは俺が持っておこうかな」

「うん‼いいんじゃないの。あなたすっごく頑張ってるんだから」

彼は、毎日これを繰り返しているのだ。一日にこのような作業を二十回はやる。

「あ、そういえば!」

彼女が大きな棺桶のようなものを引きずりながら言った。

「扉の前に置いてあったわよ、これ」

棺桶これには人一人分入りそうな感じだ。誰が何のために置いて行ったのだろうか。だが、彼の好奇心が本能に語りかけた。

「さあ、開けよう。中に入っているものが何であれ、これはもうお前のものだ。誰が文句を言ったって、置いて行った奴が悪いんだ」

彼は好奇心に逆らえず、とうとう開ける決心をした。

「なら、俺が開けるよ」

そう言って、彼は棺桶の蓋を開けた。すると、中には神々しいような、それでいて可愛い少女がいた。

「‼?何で人が入ってるんだ⁉」

「エ!?な、な、何これ‼えええええええええ!!」

(何故だ。俺は、いや、俺の好奇心は、こんなのを望んだ訳じゃない!)だが、こんな美しい人間をエリックは見たことがなかった。そして、彼は自分の好奇心に語りかけた。

「おい、好奇心。こんな美しい少女、どんな宝よりいいじゃないか」

(だけど疑問点が多すぎるな。まずは......)

彼が謎の少女と棺桶について試行錯誤していると、それを遮るようにある猫が声をかけた。

「ちょっとエリック‼聞いてんの‼」

「う、うわ!」

彼女(猫だが)はウィル。黒く美しい毛並みだが、街一番の嫌われものだ。だが、いつからか、エリックの家に住み着いている。

「え、な、なんだっけ」

「だーかーらー、この娘どうすんのさ。このまま放っておくわけにはいかないじゃない」

「あ、ああ」

(だけどどうしたもんかな。普通の人間だったら、こんなに騒いでたらさすがに起きるだろ。いや、まてよ。普通の、人間!?

「そうか!」

「エ!ど、どうしたの?」

「これを使えば」




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