0日目

 改札を出たときはもう真っ暗だった。海へと続く道路をぽつぽつと街頭が照らしている。

 その道路を私とアサミは寒さに耐えながら歩く。風が強くなっていた。海から吹いてくる冬の風。潮の香りというよりにも潮の臭いがする冷たい風だった。

 道路はどこか砂っぽい歩き心地だった。

 しばらく歩くと堤防があって、波の音が聞こえてきて、夏には満車になっているであろう駐車場があって、その先に海へと降りる階段があった。

 その階段を降りると地面は完全に砂になった。ローファーで来たことをすぐに後悔した。

 真っ暗の中、砂の上を歩く。波の音が大きくなっていく。

「海だね」

「うん。海だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る