一月二十日
一月二十日、午後六時半すぎ。
営業所の電話が鳴った。
かけてきた相手は、営業所からは少し離れた繁華街にある警察署だった。
堂島小枝子が、亡くなった。
交差点で車にはねられ、手の施しようがなかったと言う。
彼女が持っていた保険証から身元が判明し、取り急ぎ連絡をしてきたようだ。
その時事務室には、女性事務員二人、新城彰、そして外回りから戻った男性営業が数人いたが、電話が切れた後は、皆一様に口を閉ざしていた。
その日の朝、堂島小枝子は出社直後に「辞めます」と告げ、営業所を後にしていた。
新城は女性二人からその報告を受けており、事務室に戻った営業員達にも、そのことは伝わっていた。
彼女のデスクには一冊の就職情報誌が置かれていた。
女性二人によると、堂島小枝子の出勤前から置かれていたと言う。
誰が置いたのか、名乗り出る者はなかったが、一見して『辞めてしまえ』との悪意が篭った存在であるように思われた。
彼女の死は、単なる事故ではなく、他の理由があってのことなのではないか。
彼女が自ら選んだ末のことなのではないか。
その場にいた誰もが、そう考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます