キャラメルボックス


 悲しい時はキャラメルを舐めたらいいよ。

 そう言って、隣の多久兄ちゃんは小箱からキャラメルを取り出して私の口に放り込む。それが恒例行事だった。

 今やキャラメルを舐めるのが習慣になって。甘い味が口に広がる。多久兄ちゃんが髪を撫でてくれる、そんな幼い記憶が再生される。

 多久兄ちゃんと同じ高校に行く。今の学力じゃ合格圏内ギリギリ。だからもっと頑張らないと。私はまたキャラメルを舐めた。



 久々に多久兄ちゃんを見かけて、私は追いかけようとした――その足が止まる。

 楽しそうに、同級生と思わしき人と笑い合っている。

 私は踵を返した。

 キャラメルを舐める。

 甘い記憶はもう再生されなかった。




________________


第82回twitter300字SS参加作品

テーマ「箱」でした。

文字数、ジャスト300字!





ちょっと余談。

「箱」というテーマで、思いついたのがキャラメルボックス。

僕が大好きな劇団で。いったん休止しましたが、また再始動したんですけどね。僕は職業上、このコロナ禍で観に行けないのが悔しくてたまらないのですが。


本題。


箱というテーマで考えていたら「キャラメルボックス」というワードがこびり付いて離れなかったという(笑)


でも、実際書いたらファンタジーとは真逆の恋愛でした。てへぺろ。

(キャラメルボックスはファンタジーが好き)


実は企画には提出しませんが、この後、この作品の後編を書く予定です。


ではでは。

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