もう包みこまれていた
もう少し、自分の時間が欲しい。理由はそれだけだった。彼に不満があるわけでは無い。そもそも私に選択肢は無い。貴族の家に産まれた子女としての覚悟はある。婚姻の意味も理解している。ただ、もう少しあと少しだけ、先生とこの国の古代史を探求したいだけなのだ。その時間が無いことを私は知って――。
「先生?」
私は目を丸くした。この国の第3王子は、学士院の学長であると聞いていた。その王子――目の前で、私の先生が笑顔を浮かべている。
「結婚なんか興味もなかったんだけどね、君となら一緒に歩みたいって思ったんだ。その、ダメかな?」
包み込むような笑顔で。あぁ、と理解した。今さらに。私、目の前の人に恋していたんだ。
________________
第61回Twitter300字SS参加作品
テーマ「包む」でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます