お腹が空いたよ、まだですか?


 手をかける。その手を惜しまない。今頃、ちょっと店に行けば手頃なランチを食べることができる。冷凍食品だって主婦の強い味方だ。

 それでいいんじゃないかって思うのに、許してくれないんだよね。


 ――手作り餃子が食べた・い・の!


 そうですか、そうですか。餃子の皮にタネを包みながら、億劫な気持ちを隠しながら、手際よく包み込んでいく。ニンニクとニラを少し多めにしてね。力任せではダメなのだ。優しく、食べてくれる君達のことを想いながら。

 チビさんは良しよう。我が奥様まで、子どものように無邪気に餃子を待ち望んでいるんだから、どうしたものか。お前まで腹が減ったと騒ぐなよ、頼むから。


 あと少しだけ、お待ちあれ。



________________

第61回Twitter300字SS参加作品

テーマ「包む」でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る