君に告げる

 手遅れってこういうことなんだな、と目を閉じる。お祝いの言葉を本当は送るべきなのに、言葉が出てこない。頭が真っ白になるとは、こういう時に使う言葉なのか。だから振り絞って、君に「おめでとう」って言った。君は怪訝そうな表情を浮かべて。よく見たら、君は――。

「え? え?」

 招待状には親友と、君の名前が確かにあって。

「今の今まで気付かなかったのかよ」

 アイツが呆れて、肩を組んでくる。結婚式のご案内書かれたシールが剥がされ、同窓会と――?

「いい加減、俺達におめでとうって言わせろよ」

 そう囁く。近づきすぎず離れずでずっと来て。でも、それは止めにすると決めた。僕は恥も外聞もなく、君に言葉を告げていたんだ。


 





________________

第60回Twitter300字SS参加作品

テーマ「祝う」でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る