慟哭


 あの人はきっと私が死んでも涙を流さない。

 感情を流すには、私たちは長く生きすぎた。エルフと龍人、ともに長命の種だ。エルフは自然と共にあり、龍人は本能のままに血を求める。

 惹かれたのは――きっとお互いの同情から。

 彼は失ってばかりで。そして私は奪われて。

 種が違うんだから、愛情なんかあるはずもなく。

 エルフが命を絶つには、汚れた血で煎じれば良い。どんな薬を調合するよりも、安易で。私は一想いに呷った。

 でも、君に会えてよかったと思っているんだよ?






 慟哭という言葉があるのなら、今がまさにそれで。

 龍人は枯れかけたエルフの躰を抱きしめるが――血で汚れたエルフは、土にも還らず気化して、消え去った。



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第50回Twitter300字SS参加作品。

テーマ「薬」でした。

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