天空都市


 まっしろい。

 天空都市を龍人が建立したという伝説のみが残る。

 雲海に足を踏み込んだ時点で、コンパスは役に立たなかった。

 皇位継承権ならくれてやると言っているのに、愚弟は納得しない。

 そこまで思いながら、今さら我に返る。国を追われた私に何が残る?

 自嘲し笑った刹那――足が滑った。雲の欠片となるならそれもまた本望。私は薄く笑って、墜ちた。







 頭痛に苛まれながら、目を開ける。

 雲海を前に広がる都市群――。

 だが、それよりも腕が千切れて、配線が剥き出しの騎士型機械人形に目を奪われた。

「網膜認証を終了、遺伝子適合を確認。コード・ランスロットは貴女を王として認証しました」

 ――私の物語は、まだ終わらない。





________________


300字SS参加作品

テーマ「雲」でした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る