かき氷の記憶
幼馴染と言うには、語弊がある。なんとなく、駄菓子屋の孫、それぐらいの認識しかない。クラスは一緒になったことがない、その程度の関係だった。
この駄菓子屋は、夏になるとかき氷を始める。かき氷を彼女と並んで一食べた記憶だけが鮮明で。
その駄菓子屋も、地震で倒壊したと知ったのは、親しき人の訃報を聞いた後――。
記憶なんて、淡くて脆くて曖昧で。
ようやく街に帰ってきた僕は、目を疑った。かつての跡地には「DAGASI⭐︎」と手作りの旗がたち、かき氷器を回す、彼女がいて。
「やっと帰ってきたのか、都会かぶれ。ちょっと手伝え」
開口一番、口の悪さは健在で。
ずっと探していたなんて、言ってやらない。
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第29回Twitter300字SS参加作品。テーマは「氷」でした。もう一本あるので、また次回で。
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