甘露


ここは桃の花が咲き乱れる。甘く、芳しく。その中で、男性器も女性器も持たない、裸の【彼女】が横たわる。


 仙人ともなれば、性別も表情も失われることは当然ながら、命の重さも軽くなる。仙術を志す、感情を残した生き物たちを見やりながら。


 桃の園は、その甘い香りに秘術を匿す。


 ここにいる誰もが、【甘露】を――命の粒を追い求めている。このうちの何人が、仙人として桃の園に残ることができるのだろうか。


 仙人は、知識を生き移す。海のような空を見やりながら、昔は【彼女】と認識されていた仙人は思いふける。


 この中の何人が、仙人として生き残られるか。


 誘惑にも等しい桃の香りは、虚構を彩る。だって、【甘露】は仙人になれなかったなれの果て。


 永遠を生きる仙人は、仙人の命で食いつなぐ。

 昨日食したあの子は、極上の美味であった。






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即興でできたショートショートでした。

本当に即興で申し訳ない。




Twitter経由、薬園台トヲル様のイラストを元に書かせていただきました!

ちなみに、イラストを見たい方は、僕のブログが一番早いかな。


http://oka-reo.hatenablog.com/entry/2016/12/14/210825


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