第22話復活は半年後の出来事で。

本題:第22話対面は予想外の終着で。


――――――――――――――――




三つ巴。


いやあ、見て欲しい。こんなにもいい天気に恵まれているんだ。

サッカーでもして遊んだらきっと楽しいぞ。

ほら、丁度あそこに片付け忘れたボールが一つ転がってる事だし、今からでも遊びに行けばいいと思います。

というか、遊びに行きませんか。

遊びに行きましょうよ。

ねえ。

お二人さん。

ちょっと。


あ、心地良い風。


「あの・・・」


屋上に立つは三人。

満面の笑みを浮かべる二宮。

ただただ真顔で佇む五十嵐。

屋上からグラウンドを見下ろしながら、目を細める俺。


・・・まずくない?



†    †    †    †



いや、うん。分かってたさ。こうなる事くらい、予想はついてたさ。

だからあんなにも鉢合わせを避けて行動してたのに、気が付いたらこうですよ。

だって、今日の予定おかしくない?

屋上で二宮の作った弁当食べながら五十嵐に説教されて、放課後木の下で五十嵐と待ち合わせて、二宮とパフェ。

一言で片付くよ。

は?

もう一回言ってやろうか。

は?

そう。は?である。

女の子二人と一日ずっと一緒なんて、なんて幸せなんだろう。

は?

は?である。

普通の女の子が居ない気がするのだが、それは俺の勘違いなんだろうか。

一人は険しい顔をしていて、もう一人はめっちゃ笑ってるんだよ?

無言で。

いやいや、怖すぎるだろ。

俺の顔を一言で言い表すならば、そう。戦慄、だな。

さながら戦争を思わせるトライアングルの対立に、先手を打ったのは五十嵐だった。

「一之瀬くん、ご飯食べるよ」

言いながらフェンス側に寄り、長方形の石のブロックに腰を掛ける五十嵐。

「お、お」

おう。と返事をしようと腰を曲げたのと同時に、今度は二宮が動く。

「せんぱーい!こっちですよー!」

ビクっと肩を震わせ、声のする方へ目を向けると。

「ほら、ここおいで」

良い笑顔でレジャーシートにちょこんと正座する二宮が、弁当を広げ自分の隣に来いと、右側をトントンと叩く。

くそ、なんだそれ可愛いじゃねえか。

「・・・」

・・・またしても無言である。

しかし何故だろう、二宮の方を向くと鼻の下が伸びていけない。『むふっ』っと声が出てもおかしくないな。うん。

だが、五十嵐の方を向くと顔が引き攣って体が強張る。なんだこれ。なんだこれ。

「・・・前世はメデューサだったのかいがr」

「は?」

「調子に乗りましたごめんなさい」

「・・・」

「・・・」

無言が、怖すぎる。

・・・。

「せんぱ」

「一之瀬くん」

「・・・はい」

「「早く」」

怖いよ!そもそもなんでお互い初めましての挨拶とかしないの。何、今の女子高生ってユリゲラー的な何かで通じてる訳なの?

「ええ・・・」




ど う し て こ う な っ た 。


シートに正座する俺、弁当を挟んで向かい合う二宮。

と、五十嵐。

意味が分からない。

何お前ら、何でそんな平然と肩を並べて飯食えるわけ?俺の初対面の概念ぶち壊さないでくれないですかね。

「せんぱい、手、止まってますよ?早く食べてください」

「私、今日一之瀬くんのためだけに購買に寄って、菓子パンを買ってきたんだけど。食べてくれるよね」

きっとお前らギャルゲだったらどっちもヤンデレ属性だよ。

「いや、ちょっと待って。なんかおかしいと思うんだ。だからとりあえず言わせて欲しい」

俺は正座のままこうべを垂れて。

「俺が悪かったのでこの雰囲気はやめてくださいお願いします」

それはそれは綺麗な土下座で、お願いしていた。

神前に拝謁の権を頂戴してる訳でも無し、何故にここまで深々と頭を下げているのか。甚だ疑問である。

と言うかそもそも俺謝る必要無くない?今回のブッキングに関しては、俺精一杯努力した方だと思うんだけど。

遺憾の念を抱き始め、これは理不尽なのでは?とようやっと気が付いた俺に対し、五十嵐。

「それは無理」

「えぇ・・・」

「と言うか、何が悪いか分かってるの?」

「何一つ」

「じゃあ謝んないでよ。別に怒ってる訳じゃ無いし」

「ならなんでそんなに厳つい顔してんだよ。魅力度60%ダウンだよ」

「う、うるさい。良いから早くこれ食べてよ。せっかく買ってきたんだから」

そう言って突き出すように安い袋に入ったアンパンを差し出す。

「お、おう・・・。って、お前もおんなじヤツなのか。そんなんでいいのか」

「うん。そこまでお腹減ってないし」

「ふーん。ま、ありがとな」

袋を破き、その砂糖まみれの揚げ物にかぶりつこうとした矢先。

「せんぱい、そんな体に悪いもの食べちゃダメですよ?ほら、煮付けあるのでこっち食べて下さいっ」

屋上で二人が鉢合わせてから初めてじゃないだろうか。やっと五十嵐に関わる事で切り出したのは。

けれど、どう考えたって切り出し方が悪すぎる。もうこれは宣戦布告みたいなもんじゃないか。

ほら見てみろ、五十嵐が眉を顰めてピクついてるじゃねえか。

「もう仕方ないなあ・・・。はい、あーん」

有無を言わさず口に押し込まれた人参。少しして咀嚼を開始するとこれはまた。

「・・・美味い」

「えへへ」

何と言うか、幸せの味がした。

「あ、ちょ、待って五十嵐さん、今アンパン食べるんで殺さないで下さい」

「だからそんな怖い顔してないじゃん・・・」

「あ~せんぱいダメですよお。帰りにパフェ食べるんですから、甘いものは控えて下さいよ」

「・・・は?どういう事?」

「待て待て待て、ちょっと待て。・・・もう一回聞くけど、別に五十嵐は怒ってないんだもんな」

「そんなの聞くまでも無いじゃん」

「だ、だよな」

「怒ってるよ」

「ガッデム」

終わったよ。

「いや待て違うぞ五十嵐。別に約束はしてない、気付いたらなんかそんな感じになってただけで、当然五十嵐のが優先だから」

「・・・えっ、せんぱい、私とは遊びだったんですか?」

「だっからお前話ややこしくすんなよばか!遊び・・・じゃないけどなんかもうお前はネタ枠みたいなもんじゃんか」

「と言うかそもそも朝のアレ何?すっごい腹立ったんだけど!昨日も放課後どっか行っちゃうしさあ。ちょっと馴れ馴れしすぎると思うんだけどっ!」

「あれ、五十嵐せんぱい嫉妬ですかあ?可愛いとこあるんですねっ」

「は、はあ!?そんなんじゃないから!そもそも二宮さんはどうやって一之瀬くんと知り合ったのよ!」

「雨の降る校庭で憂鬱そうに空を見上げてたせんぱいに挨拶しただけですけど」

「はあ!なにそれロマンチックな出会い!」

「五十嵐お前混乱しすぎて褒めてんのか貶してんのか分かんなくなってるぞ・・・。全然ロマンチックじゃないし」

「うるさいっ!一之瀬くんも放課後にパフェって何!?今日は私と放課後デートするって約束だったじゃん!」

「・・・えっ、せんぱい方デートするんですか?」

「・・・デートなのか?」

「・・・い、イマドキは説教の事をデートって言うんだし・・・」

「「言わねえよ・・・」」

ヒートアップする五十嵐の失言に、俺も二宮も一歩引いて見る形で。

「・・・お前、こんなに取り乱すキャラだっけ」

「だってムカついたんだもん・・・」

「だもんって・・・。悪かったよ五十嵐。放課後はどこでも付き合ってやる。飯は俺のおごりだ。だから、な?機嫌直せよ」

「・・・豚骨らーめん」

「よし。いっぱい食え」

駄々をこねる子供のような五十嵐を、やっぱり駄々をこねる子供をあやす様に宥めてやると、少し落ち着きを取り戻したようだ。

「二宮もすまんな。・・・けど、紛らわしい事ばっか言うなよな。・・・疲れるから」

「あはは。今のせんぱいは、結構いい感じでしたよー。あ、でも私もパフェは食べたいんですけど」

「そうは言ってもな・・・」

言いながら五十嵐を見やる。

この様子で二宮が付いてくるとか言い出したら、今度こそ泣いて喚いての幼児退行が為されるかもしれない。

「いい」

すると、以外にも肯定が飛んで帰ってきた。

「え、いいのか?」

「らーめんも一緒に行くから」

「お、おう」

「あと、今日は私ゲーセン行きたい気分なんだけど」

「お前・・・」

どうやらまだ怒っている事に変わりは無かったらしい。

・・・こいつ、全部俺におごらせる気だ。

「あーもう分かったよ。今日はとことん遊んでやる。元々、俺が原因だしな」

財布が悲鳴を上げるのが確定したが、これで二人の機嫌が直るなら安いもんだ。

そう思い込み、アンパンと煮付けをかき込んだのだった。

・・・クソっ、食べ合わせ悪いな。

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