第18話 これから

 ◆


 ──まただ。

 真雪の眼に映る姫野ユウヤという男の姿が、兄である雪景に重なるのは。



 ▼


(……ここはどこだ?)


 目を開けると、そこは氷の床に壁、天井と、あらゆる場所が同じ物質でできた部屋だった。見ると、この場は空間のひとつに過ぎないらしく、空間の一部には他へとつながる道があった。

 起き上がり、進む。

 しかし、事態の深刻さに愕然として歩むのは止めた。


 氷でできた自分の足が視界に捉える。

 両手を前に差し出す。氷だった。手を握り、開く。動作は完全に意思あるそれで動いていて、違和感がない。


 唖然として、漠然と氷の部屋を眺めた。すると、何重にも渡りそうな氷壁は鏡としての役割を持つようになり、そして、映したのは見たことのない自らの肉体だった。

 「肉」と呼べるものは全くない。全身が氷でできていて、もはや異なる生物に生まれ変わってしまっていたのだ。


 だが、愕然とはしたものの、そのときは絶望はしなかった。案外、冷静に受け止める頭は持ち合わせていたらしく、パニックにならずに周囲を観察している自分がいる。

 自身が既に化け物の容れ物になったがための精神構造だとは知らずに。


 そして、数千年は下核領域を彷徨うこととなった。こうなる前の記憶はほとんどない。特に直前の記憶が著しく消滅していたため、原因の追求には至らなかった。


 だが、自分が氷獣としてあるべき姿はなんとなくわかっていたお陰か、生活には苦労しなかった。

 相対する同族は即座に殺し、血肉とする。飢えはあまり来ないため、日々の流れは苦にならなかった。

 それでも、時々もやもやとした感情が全身を包み込む。自分がどうしてここにいるのか。どうしてこんな姿になっているのか。。わからないことは年を経るにつれて多くなり、遂に自分が何なのかすらもあやふやになった。原因は記憶領域の限界か、それとも別の要因か、定かにはならなかった。


 そんなときに見つけたのだ。


 結晶に眠る、ひとりの少女の存在を。

 何故か、憎らしくなった。

 反して、何故か、愛しくもなった。


 この想いだけは年を重ねるごとに憎悪へと変える。そうだ、自分がここまでのもこの少女のせいである、とすら考えるようになった。

 けれど、氷の結晶はびくともしなかった。取り出そうにも出来なかった。殴ってみても自身の腕が壊れるだけだった。そんな頭すら残されていなかったのだ。


『コノカンジョウカラカイホウサレルニハ、モウコロスシカナイ』


 想いがいつまでも成就されないまま、また時間が経過することになった。

 覚えているのは、もう何もない。



 ◇


 身体は流れ、地に落ちた。辛うじて、受け身は取れたが、酷い足場に落ちたところで身体はぎすぎすと痛む。残った氷の破片に刺されないだけマシだと考え直して、ユウヤは流れで身を起こした。


「ぐっ」


 立て膝をついて光学銃を構えるも、それだけで精一杯だった。

 氷獣は微動だにせず、直立している。ここから、背後を狙い撃ちすることも可能だが、不思議とユウヤの頭にはの結果が先行していた。


 そして、引き伸ばされた時間の後、氷獣が何もなかったように動き出す。

 振り返る氷獣がユウヤを睨む。


「これは、失敗だったかな……?」


 超然とした威圧感がユウヤを襲う。

 特殊弾はまだ残りがあるが、もはや迎撃できるだけの力はユウヤに残っていなかった。通常弾もあと僅かで、手の打ちようもない。遂に、スキーマも破損しガラクタ同然となっている。


 誰が見ても、明らかに詰み。

 残された道はしかない。


「もう、良いだろう? 時間稼ぎは終わった。あとは逃げるつもりだったが、もう無理かな」


 ユウヤの施した仕掛けは、結局、氷獣には通用しなかったことになる。

 或いは、

 けれど、とうに動けないユウヤにとって、それは意味を成していなかった。目的は果たしたことになるが、結局、良くて道連れの未来が待っている。


 氷獣の手がユウヤへと翳される。

 ユレイヤの秘術によって、当然のように氷槍を生成することが、


「はっ」


 ──出来なかった。

 突如、氷獣の身体からが漏れだした。勢いよく、の作用したものが噴出すると、氷獣はあからさまに戸惑って見せた。

 そんな様子にユウヤは再度鼻で嗤う。

 気力のみで光学銃を固定し、乱射した。僅かな反動にも痛みが生じるが、一切の間を空かせず撃ち抜いていく。


 氷獣が後退した。

 そして、反射的に氷壁を生み出そうとして、失敗。紫煙が更に勢いよく漏出していく。


 ここまではユウヤの思い通りに事が進んでいたのだ。

 ユウヤは遠い日の博士ドクターとの会話を思い返す。



『……親和性?』

『そう。この氷解液リキッドファイは今までの無駄を取り除き、他の性質を折り込むことができるようになったのだよ。その過程には、2種の性質が如何にお互いが反発せず、中和せず、混在する形を作る必要性から生まれたものになる。つまり、親和性の高い第3の物質を更に閉じ込めることで、この実験は成功したのだよ。その中でもこの氷解液リキッドファイは良いサンプルになってくれたよ。君のアイデアの賜物だな』


 滔々と語る博士の言葉の半分も理解できずに、ユウヤは首を傾げる。


『その“親和性”があるとして、どうしてそれが“本質”なんて言い方をする? メリットはあるのか』


 ユウヤの当然の質問に、待ってましたと言わんばかりに博士は大袈裟に手を広げて説明をした。


『フフフッ。この“本質”としての重要度は極めて高いことになる。例えば、我らの住む本域の下に蔓延る氷獣には有用性が示されることになるだろう』

『しかし、氷獣に氷解液が効いても効果は遅く、大したメリットにはならないはずではなかったか? もし、その効果を縮めたのなら大きな功績になるかもしれないが、それでも実用性は乏しいだろう』


 ユウヤが割り込んでした指摘に、意外に博士は笑って見せた。


『確かに、君の言っていることは正しい。本研究においてもまだ、完全とは言えないし、改良の余地はいくらでもあるだろう』

『なら──』

『しかし、この氷解液の性質として持つ“親和性”というのは別にこの液体だけに通用するものではないのだよ。言っただろう? 他の性質を混在させる、と』

『……!』


 博士が科学者として楽しそうに喋るなか、ユウヤはピンと来るものがあった。その意味が間違っていないか、問い質す。


『なら、?』



 不敵な表情で首肯く博士の顔を最後に、ユウヤは我に返る。

 賭けは成功した。

 氷獣と切り札のソレ──氷解液との親和性を高めることで、元々氷でできている氷獣の身体は体内に浸透した氷解液によって氷解していく。ユウヤが氷獣の顔面を叩いたときに捩じ込んだものがソレだ。

 氷獣の内部構造を知らないユウヤではあるが、物を司る本質というのは決まって内部にある。だから、無理にでも近付く必要があった。


 不安要素はあった。

 親和性が高いのであれば、使はずであろう。

 しかし、氷雪の能力が発動しないところから察するに、身体を溶解させる『破壊』と能力を促進させる『付加』は、互いに相容れないのだ。若しくは、身体に異常を来したお陰でうまく能力を起動できないのかもしれない。どちらにせよ、今の氷獣は無力だと言うことだ。真雪を見て思っていたが、ユレイヤの力というものも何分精密にできているらしい。

 そして、起動しない力を使おうとすればするほど、不条理にも親和性は仕事をする。


(あとは、完全に自壊するまで粘り続ければ勝ちだ!)


 ユウヤの攻撃を悉く無力化してきた氷獣であることから、押し切ることは難しいだろう。それでも、あと少しだ。奮闘するには今までと比べれば短い時間だ。


 また、一歩、氷獣が後退する。衝撃にも耐えきれなくなってきたようだ。構わず、射つ。

 そして、光学銃の最後の1発が氷獣を叩いた。


 カチャカチャと引鉄をなおも引き続けるが、既にそこから弾丸が飛び出ることはなかった。弾切れだ。

 煙を巻いている氷獣はそれでも立っていた。身体の装甲もボロボロになり、逆に、勢い変わらず吐き出してくる紫色の煙が、容赦なく氷獣の体内で暴れていることを示している。


 氷獣の動きは鈍い。ピクピクと身体が痙攣していて、思うような動きが出来ていないのがわかる。

 ユウヤにはもう、他に何もできることはなかった。通常弾は尽き、特殊弾は自らを巻き込むものばかりだ。左足にあるホルスターの中にはナイフが眠っているが、生憎その刃は届くことはないだろう。今回は真っ向から挑んだ為、特殊装備は扱うこともなかった。他にも準備していたものはあるが、ダメージが与えられるものは残念ながらもう装備していない。

 そういった意味では、今のユウヤは電磁シールドのみの無防備と言えた。


 だからということはないが、動けないことを言い訳に気を緩めたのが間違いだった。


 氷獣が咆哮をあげる。

 そして、動けない身体から解放されるように、一歩、ユウヤへと足を踏み出した。


「……マジかよ」


 残るは電撃弾があるが、それを使えば真の意味で共倒れになる。即ち、ユウヤが攻撃力皆無で身体が動けない状況に、氷獣は最後の力を振り絞り止めを刺さんとまた一歩近付く。


 ユウヤは恐怖を覚えた。

 そこまでして、何か目指すものでもあるのか。それとも、本能がそう動かすのか。紫煙に塗れた様は更に不気味に見えて、ユウヤは畏怖する。

 身体を地に引き摺りながら、ユウヤは後退する。だが、差は縮まるばかりだ。ここまで来たが、ユウヤの運命はどう足掻こうとも変えられないらしい。倒したと思っても、最後まで油断することなかれ。軍で学んだ教訓を忘れていた。


 終わりを確信してしまった。

 氷獣がユウヤへと迫り、手を伸ばす。そして、徐にユウヤの頭部をなけなしの力で引き千切るのだ。


 ──けれど、その終わりは来なかった。


「……!」


 両手で頭を守ろうとしていたユウヤの眼前で、氷獣の伸ばした腕が弾けた。呆気なく宙を舞うそれは、氷獣から10メートルもの距離を空けてぼとりと落ちた。

 更に、間を空けて3発の弾が氷獣にヒットし、あれだけ何をしても動じなかった身体が吹き飛ぶ。

 そのときになって、ユウヤは気付く。

 切っていた無線の電源を入れる。電撃弾の影響も及ぶことなく、威勢よく稼働する無線から馴染みある声が耳元で響いた。


『無事ですか?』

「……ああ。正直、助かった。逃げろと言ったはずなんだがな。本当に、優秀な後輩だよ、お前は」


 マコトの声に目を閉じる。どうやら、結局、助かったらしい。

 最後の最後で美味しいところをマコトに持っていかれたが、ユウヤはまだ生きている自分の身に安堵を隠せなかった。

 後味はどうにも情けないが、これがユウヤ自身のクオリティであると納得させる。


 氷獣はまだ生きている。あろうことか、未だにこちらへ向かおうと這いつくばっていた。しかし、ユウヤはそれに取り合わない。もう、結末へと移行したから。


 程なくして、マコトと、背負う形で満身創痍な真雪がユウヤの元へと到着する。


「無茶しましたね」

「無謀だったからな」


 交わす言葉は少なく、今は、状況の維持に務めようとしている。

 マコトは真雪を下ろすと、意識は取り戻したようだった。どうやって下核領域から本域までこれたか定かではないが、恐らく、ユウヤ同様に氷獣によって崩れた道を無理矢理辿ってきたのだろう。

 そして、ユウヤに着いていかなかった理由は、ここ一番というところで援護するためであろう。マコトは遠距離狙撃がメインだ。そして、1発残らず遠距離から氷獣を狙撃してみせた。なんとも心強い味方である。


 マコトの肩を借りながら、ふらふらとした足取りで真雪が歩む。目指すのは氷獣のところだ。

 既に、氷解液は身体に浸透し、体内にすら紫色が廻っている。真雪を確認すると、ぼこぼこと溢れる煙を燻らせて、氷獣は力なく哭いた。


 ──ユレイヤと、ユレイヤだった氷獣の対面である。

 一方は悲しそうに見下ろし、一方は怯えるように哭いている。あれだけ威圧感のあった面影はもうない。


「ごめんね」


 真雪は汗まみれで弱々しくそう呟くと、氷獣は逃げようと必死にもがいた。けれど、もうどうしようもない。

 震える手で触れて、真雪は最後に笑った。


「多分、私のせいだよね? あとは私が頑張るから。ユレイヤは死なないから。だから、もう、おやすみなさい。ありがとう」


 ──結局、何が氷獣かれを動かしていたのか、ユウヤとマコトにはその一切がわからなかった。ただ狙われたから戦い、死に物狂いで敵を討っただけに過ぎない。殺さなければ、自分が殺されていた、血に塗れた死闘だった。

 それも、感慨深い空気の中でもう終わる。


 弱々しい力を集めて込めて、真雪は氷墓の中に氷獣どうぞくを沈め、弔った。


『……ありがとう』


 ユウヤの耳に、そんな言葉が聞こえた気がした。



 ◇


 その後は、何かと慌ただしかった。動かぬ身体に鞭打って、荷物を回収すると、予備のスキーマを使って早々にこの場から立ち去った。

 流石に、下核領域で様子見というわけにもいかず、流れるように南下していく。


 1つの戦闘がここで漸く終わりを告げたが、他から見れば単なる結果に過ぎない。下手をすれば、戦闘音を辿って新たな敵が姿を現すかもしれないのだ。留まっている理由はない。


 移動には数日かけた。

 そして、もう追手に阻まれないだろう結論付けたところで、待望の休息に入った。

 このときまで、必死過ぎて記憶があやふやになっている。生き残るための手立てを考え続けていたお陰で、余計なことや過去のことは即座に排除していたらしい。

 疲労は限界を超えていた。

 貪るように眠る日ができたのも十数日以来だったため、時の流れも長く感じられていた。

 ユウヤもマコトも、何か言葉にする気力もなかった。


 真雪の方は昨日になって、ようやく回復の兆しが見えた。体調はすこぶる悪かったわけだが、処置をしようにも断られ続け、勝手に治るからと手を振り払っていたが、事実回復してきている。

 依然として、白のワンピースのみを身に纏う彼女には、肝を冷やすことが度々とあったが、信じられないくらいに元気になってきていることを見れば、閉口せざるを得ない。

 彼女の回復の要因は環境にあるそうだ。ユレイヤは氷雪を扱う一族である。だから、今ある環境に身を置くことが、それだけで療養になるということらしい。疑わしいことこの上ないが、現に結果が出ている。


 そんな真雪とは、マコトが積極的にコミュニケーションを取ろうとしてきた甲斐もあり、話をすることができるようになってきた。

 ユウヤはまだマコトに及ばないが、前の戦闘で真雪の信頼を勝ち取ることが多少はできたらしい。もう、少なくはない時間を共に過ごすようになってきたのだ。このくらいでなければ、後々が心配になるが、それも杞憂に終わりそうだ。


「真雪ちゃんはこれからどうするつもりなんだい?」


 打ち解けて、言葉まで軽くなったマコトが、夜も更けて眠る前に全員が集まった場で真雪へと問う。

 軽い口調だが、言葉の真意は重く真面目なものだ。ユウヤは真雪が悩んでいる姿を横目に、そのまま視線を落とした。


「まだ、自分がこれからどうしたいかわからない。でも、きっと、この世界にもまだ私の仲間が、ユレイヤの同胞がいるなら、……会いたい」


 言葉を紡ぐ彼女は、一言一言に意味を持たせようとしていた。それはとても難題な願望だ。絶滅したとも言われる種が自分だけだと信じられなくなる気持ちはわからないでもないが、しかし、解決できるかどうか問われれば限りなく不可能な問題であろう。

 そして、ユウヤとマコトのふたりは軍人である。これからどう動くのかというのも踏まえて、結局、どこかで道を分かたなければならない。とても面倒は見切れない。


 軍に匿ってもらう方針もあまり選択したくはない。ユレイヤと知られれば、上層部が何を言い出すのかわかったものではない。最悪、実験動物だ。

 命の恩人にそんな酷な未来を歩ませるわけにはいかない。もっと慎重に行かねばならない。


「なら、暫くは付き合おう。ここで、はい、さよならってわけにもいかないしな」

「そうですね。ひとりじゃ危ないですし」


 ユウヤに被せるように、マコトが首肯く。


「でも、あなたたちは……」


 エラルティアの人間だから。そう言葉が続いているのはすぐにわかった。尻すぼみに呟く真雪は、過去の出来事に思いを馳せているのだろう。

 無理もない。彼女にとっては遠い昔は昨日のような感覚でいるのだ。そんな敵対していた人間と、急に共に行動するのは踏ん切りがつかない筈だ。


 けれど、そんな考えを放り出し、ユウヤは真雪へ選択の余地を与えない。


「悪いが、これには当面は付き合ってもらう。何せ、君がこちらを知らないように、こちらも君を知らない。だから、本当に安全であるかどうか見させてもらう。別に、こちらから何かを強要するつもりはないし、こちらの任務が終わる前には解放するさ。君もこちらを信用おけないなら君の力で私たちを凪ぎ払えば良い。短い間、行動を共にするだけだ。そうなれば、君の願いにも微量ながら協力しよう」

「……わかった」


 言うべきことを一気に捲し立て、自分達の意思を伝える。すると、少々の間はあったが真雪は瞑目し了承した。

 案外、あっさり決断してくれたことに、ユウヤは意外に思う。


「良いのか?」

「ええ。私も結局、ここがどうなっているのかわからないし。少しの間だけだけど、従うことにするわ」

「……感謝する」

「勿論、敵と見なせば私は容赦なくあなたたちを刈る」

「それで構わない」


 こうして、3人の旅はもう少しだけ続くことになった。



 ◇


 真雪は考える。

 狙われていたのは明らかに自分だった。それも性質から同族だと判断できてしまった。なんとも醜い同族争いを見せてしまった、そうも思っていた。

 なのに、彼らは真雪を命を懸けて助けようとしてくれた。これがふたりを信用するには十分な要因だった。


 正直、事が解決すれば、もう消えようと思っていた。迷惑はかけられないし、ふたりの素性も軍人(?)と判断できた。

 だとすれば、いずれ真雪自身は軍にとって、国にとって、世界にとって狙われる立場になる可能性が高い。ユレイヤという種族が神話化されていることを耳にして、一層そう考えるようになった。

 だから、そうなる前に、消えるのだ。この世界にも未練はない。望むものは何もないし、何も叶わない。


 そう思っていたのだ。


 なのに、彼らに同行することを決めた理由は彼らへまだ恩を返していないからだ。あれだけ危険な目に晒されていて、死にかけたのに、まだ気にかけようとしてくれている。

 無礼をしてまで消えるか、或いは、消えることが彼らの為になるか、選択肢の行く先は未知数だ。なら、答えは決まったいた。


 未だ、自分の価値は失ったままだ。それでも、役に立てるなら立ちたい。


 そう考えるのは我が儘なのだろうか。


 トクン。


 胸の中が小さく木霊した。

 終始元気な彼と、無愛想な彼。助けてくれたふたりを見て、真雪は明日のために安らかに眠った。

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