第13話 涙

 ◇


 意識が晴れる感覚がある。

 それは眠りから覚める時間を感じ、感覚が鋭敏になることでだんだんと思考力が回復していくものだ。眠りから覚醒までの間は一瞬の出来事のように捉えられる。ある意味時間の感覚が圧倒的速度によって流され、すぐに覚醒が当たり前のようにやってくることと同義だろうか。


 人種、獣種に関わらず、覚醒する時が来るのは当たり前である。

 楽しいことも、悲しいことも、嬉しいことも、苛立たしいことも、幸せなことも、苦しいことも、全ての事象を過去に送り、どんなときでも明日がやってくるのだ。

 死ななければ明日が来る。解釈としては間違ってない。


 そう思っていたが故に、を認知することは難しかった。自身の目で見ることが捉えられる全てであろうに、肉体も精神も納得するには至らなかった。

 まさしく時間跳躍だ。

 起きたときはそこが明日ないしは近い将来であろうと誰しもが思うことなのに、時間の流れは残酷で当たり前にいた今までを遥か過去にしてしまっていた。


 結果、望んでいた“明日”は来ない。

 否、既に明日は消え、自身の記憶すらも否定されているようなものだった。


 信じられない。

 信じられるわけがあるはずない。

 男の言葉は事実なのか、そうでないのか。嘘を言ったのか、そうでないのか。どういうことなのか。問い質したくもあるが、事実を突きつけられたときどう思えばよいのかわかるものもない。


 空虚が襲う。

 だから、今だけは目覚めたくなかった。


 なのに、当然のごとく望まない“天道てんどう真雪まゆきの明日”はやってくるのだ。



 光の波が真雪の眼球を刺激させる。ゆっくりと流れる時間を更に伸ばすようにして感覚を周囲に合わせてリンクさせる。


「目が覚めたか」


 両目をうっすらと開けたとき、ぎこちないがしっかりと耳に届く言葉があった。無意識にそちらに視線を動かすと2人の男が間隔を離して座っている。

 見覚えはある。懐かしいような感覚が肌へと浸透するが、生憎と脳は肝の部分で否定的に捉えている。


 そもそも、この男たちは敵であると認知したはずだ。簡単に前言撤回しようにも無理な話である。けれど、残念ながら殺意までは湧いてこなかった。

 寧ろ、ただの言葉が呆気なく自身を絶望させたことには自分自身に失望したと考える。虚言の可能性もあるだろうに、血が昇っていた頭ではよくよく考える機能が低下していたらしい。


 反省すべきだ。

 また、失態をするところだった。


 どんなことでも物事を冷静に捉え、的確な行動をすることが大事であると雪景にも側付きの萊ラにも教えられたことである。単純こそあれ行動するのはやはり難しい。注意せねば。


 情報の整理をゆっくりと行っていくが、肝心な部分の深いところまで踏み込めはしなかった。無意識に頭が拒否しているのだろうが、敢えて意識する気にもなれなかった。

 もう自分自身の中身はもぬけの殻だ。どうなっていようと構わないが、最後まで絶望したまま死のうとも思えない。早い話が現実逃避である。


 しかし、時の流れは残酷である。

 事情の知らない目の前にいる男たちが、状況をよく知ろうとするのは当然な行為である。そうでなくとも、同じ空間に居合わせているのだ。意思の疎通が可能であれば、できるだけ事態の改善や対策に向き合わされよう。

 知りもしないことだが、彼らも彼らでなかなか大変な状況にあることは察している。ならば、完全に他人の立ち位置となる者がいる場合はお荷物にならないように切り捨てるか、うまく溶け込ませられるように動くことだろう。


 そして、不運なことに彼らは後者を取るらしい。


「具合の方はどうかな?」


 軽い口調で訊ねる声が耳にまで届いた。知らない声音だ。確かにこの場にいたもう1人とは会話をしていなかったため、当たり前ではある。

 心配を意味する言葉。状況から真雪へかけた、それ以上でも以下でもない体調等を訊ねる場合に用いる言葉だ。

 しかし、単語として捉えると簡単な言葉で収まるが、真雪は別の解釈をしてしまいそうになる。


 どうしても、悪意を籠められた皮肉に聞こえてくるのだ。


 一体自分の何を知って、そんな言葉が軽々しく吐けるのかと、憎悪の思いが身体を巡る。けれど、冷静に考えろと隅で訴えかける頭もある。

 正しく捉えるのであれば後者が妥当だろう。ただ、宿敵となる人種を目の前に率直に認めることはなかなかできない。


 すると、もう1人の男も少し距離を取ったところから声をかけてくる。


「身体に問題がなさそうならば、どうだろうか。君と話がしたい」


 こちらの心配よりも情報共有を目的とした提案が無機質に飛んでくる。けれど、案外心配されることよりもお互いに距離を持たせた方が真雪としてもやり易いのは確かだ。

 無言で続きを促す。


「正直に言って、君の置かれた状況を私たちは理解できていない。君自身も恐らくそうなのだろう。見る限り記憶障害はなさそうだし、こちらの話が呑み込めるならできる範囲で君の話も聞きたい」

「…………」

「そして、念を押すようではあるが私たちに君への敵意は今のところない。寧ろ、ここから脱出できるなら協力もしてほしいと思っている」


 男の言葉を真雪は黙って理解していく。

 警戒は薄れない。

 敵だとも思っている。

 今の真雪自身、世界のがどこにあるのかわからない。

 思想の違いもあるだろう。

 手をはね除けるべきかもしれない。


 けれど。


「…………いいよ」


 望みのない将来に懸けられる思いも、可能性も少ない今では話をするに他はなかった。


 ──まさか、目覚めて今ある場所が9000年後であるとは思ってもいなかったから。



 ◆


 歴史の一糸を紐解こう。

 語らずしてユレイヤという種の話は始まらない。


 ──聖戦。


 それは史実の中でエラルティアが関わる、5本の指に入るであろう世界存続を懸けた出来事である。


 エラルティアの出現を発見したのは231世紀の話であったが、獣種のいなかった世界の1000年後には技術革新が目覚ましいものとなった。まさしく文明の地を新たに生み出す、かのホモ・サピエンスに変わる種として認められていたのだ。


 しかし。


 あるときに天空からの謎の兵団が出現したことにより、種の生存を懸けた戦争が幕を開ける。それが地球外より現れた者たち――通称、外界人――とエラルティアで勃発した保守戦争である。これ自体は聖戦とは別物だ。


 結果、エラルティアは敗れ、外界人による占領、支配が始まった。

 そこから着々と支配の根が伸びようかとしていたとき、どこからともなくユレイヤは露る。暗黒期間を経てから神聖視されていた存在が再び確認されたのである。


 あとは淡々と進む。

 ユレイヤはその圧倒的な力を奮い、外界人を残らず抹殺したのだ。その期間は短くはない。戦争終結まで6年間は全世界は不安定であった。敵は未確認の技術を持った者たちであったし、能力があれど決定打に至るまでは外界人は食い下がった。

 しかし、当然の結果のように、ユレイヤは単体種族のみでこれを撃破した。場所においても利を得ていたユレイヤが敗北する道理はなかったわけだ。


 少ない時間を経て、人々は彼らを今まで以上に神と崇めるようになる。これには信仰を全面に出さずしていられないと考える者も少なくなかったのだ。世界を救った相手に向けるは敬虔の瞳である。


 一転して平和な時が流れる。領地編纂などの小さな競り合いはあったものの、1世紀ほどにまで渡りエラルティアは発展を遂げていくようになる要因にもなった。ユレイヤという圧倒的な人種の存在は世界の抑止力にもなり得たのだ。

 時が流れるにつれ、ユレイヤは更に神格化していく。楽街という自由都市を造ったきり、表舞台に顔を出すこともなくなったことで話に尾ひれもついていく。


 だが、そこでユレイヤの存在をよく思わない連中も当然ながら出てくる。敵わなかった外界人をゴミのように屠っていく姿を脳裏に焼き付けていた者たちはユレイヤを畏怖し、嫉妬し、反発したいと思うのも無理はない。不穏が連鎖することは半ば必然だった。


 当時にはユレイヤも姿を現さなくなったこともあり、段々と忘れ去られていく存在かに見えていた。しかし、巨大な従属組織が当人たちも知らないまま出来上がり、世界に干渉しているとも知れれば国の代表は脅威に感じることだろう。いつしか謀反でも起こされれば国が抗う術はない。あったとしても防げる消耗は避けたいと考えるはずだ。


 だから、従属組織が力をつける前に、今度はエラルティアが全面的に戦争を仕掛けることを決断したのだ。強者ではあるが、人口差から無謀ではないとも考えていたこともある。


 人種間戦争の火蓋はあっさりと切り開かれることになる。

 どうにかしてユレイヤが隠れ住む地を見つけ出し、奇襲をかけたのが始まりだ。ユレイヤもまさか助けた恩も忘れて戦争を仕掛けてこようとは思うまい。結果、奇襲はこれ以上ないほどに成功する。

 もっと言うと、外界人が残した兵器がエラルティアを優位に立たせることになった。かつてエラルティアを苦しめた兵器を解析し、独自の技術で改良したものを戦争に取り入れることで、ユレイヤたちの知らない攻撃が見事にはまったのだ。


 それが、西暦24830年の話。聖戦と歴史に語られる出来事の始まりである。


 神とも謡われた人種は案外容易くその命を落としていくことになる。ユレイヤの抵抗の決意が固まった時には戦争は激化していた。


 ただ、ユレイヤが最強人種と名高い力を持っていることも事実であった。ひとりひとりの戦力が一軍隊と等しいのだ。時間が流れていくにつれ、両者にあった戦力差、形勢は拮抗状態に戻される。


 しかし、戦争には終わりがある。


 混沌とする戦場で決め手となる出来事が起きたことで状況は一変する。


 ユレイヤの当主が討たれたのだ。

 戦争終結はそれからすぐの話だ。


 エラルティアは勝利する。

 結果、ユレイヤは処刑され、その後信仰団体もまもなく解体された。

 惨たらしくも、エラルティアは万人の血の上で勝利し、ユレイヤは滅亡したのだ。



 ◇


 正直なところ、真雪はエラルティアとユレイヤの戦争の結末を知らなかった。戦火の中で、真雪は長い長い眠りにつくことになってしまったのが原因だ。

 だから、自分たち“ユレイヤ”が滅亡の途を辿ることになっていたなど初めて知ったことだ。


 目が覚めたら仲間たちが起こしに来てくれるものだと信じていた。


 また兄の、従者たちの顔を認めることができると言い聞かせていた。


 これから先も彼らと共に余生を過ごしていくものだと思っていた。


 そんな彼らは、恐らくもうこの地にはいないことを、真雪は理解してしまった。


『おいていかないで!』


 あのとき伝えた言葉は虚空に消えていった。もう想いを伝えることも出来ない。


 ――真雪は。


 話の中で気持ちが満たされぬままに、哭いた。もはや、憎しみすらも抉られ持ち去られていた。



 ◇


「……それで」


 涙は見せまいと手で顔を覆う少女の姿は見まいとユウヤが背を向ける中で、暫くしたときに声がかかる。掠れて震える言葉から想像できるものは多くはない。ユウヤは自身が知る範囲での史実に沿って、彼女と話を共有した。

 但し、それ自体は単なる事実としてのみ受け取っていたため、感情論は廃していた。この少女が経験したことも恐らく話の中では一部分に過ぎないのだろう。それでも、これ以上の詮索はしなかった。


 ユウヤが思うことは、正直に言うと特にはなかった。共感することが出来ようと、支えるなどエラルティアという人種として生まれてきた者ならば到底受け入れられないだろう。彼女の気持ちの整理を優先させた方が良い。


 そんな彼女は踞っていたが、一度ここでの対立は預けておくことにしたらしい。こちらの話へと焦点を当ててくる。


「あなたたちはこれからどうするの?」


 きついものから角が取れたように少しだけ丁寧な話し方でユウヤたちへと訊ねてくる。恐らく、本来の口調に戻ったのだろう。威嚇も兼ねての強い物言いだったが、状況が一転した今、話をする気はあるようにユウヤは感じ取った。

 ユウヤたちとしても、ここで会った縁である。境遇からしてどこかの密偵スパイではない。ならば、伝えるべきことは軍務に反しない範囲でちゃんと伝えると彼女が寝ている間にマコトと話し合い決めた。


「まずはここから脱出することが必須だ。ここは危険すぎる」


 端的にそう答えると、少女が伏して凍りついている氷獣を見つめた。原因は勿論少女の能力によるものだ。


「……こいつらは何? 見るからに味方、ではないと思うけれど」

氷獣ひじゅうという、一種の化け物だ。体表は勿論、身体のほとんどが氷でできていて、中枢機能を担う核となる部分により活動を可能としている。原理について俺も詳しくは知らないが。……獣種、と言えばわかるだろうか?」

「何それ……。まあ、いいわ。“敵”という解釈で今はいいでしょう? それで、『脱出』とはここでの意味で何を指すのかしら」


 ユウヤは思う。

 

 獣種というものを知らない。この場所がどこに当たるか理解していない。地球の構造がわからないから予測も立っていない。確か、世界の凍結現象が始まったのは聖戦と呼ばれる大戦争よりも更に前の話になる。

 であれば、1万年前と現在とでもかなりの齟齬がありそうだとユウヤは判断する。そもそも、眠りについた場所がどこであるかすらも現状で心当たりはなさそうであると考えられる。


 話の一端からこの銀髪の少女が異端であると確信してしまう。


 どこまで踏み込めるかは後にして、現状を優先し疑問を先送りにする。


「ここは、謂わば地下なんだ」

「地下……。どこかの部屋の中とかではなくて?」

「そうだ。人々の活動しているのはここから陽のあたる場所にある本域と呼ばれるところだ。ここはその下でできた層の中と言える。そして、本域にはその氷獣という化け物がほとんどいない。脱出とは本域に出ることと捉えてもらって構わない」


 端的に説明したつもりであったが、少女が首を横に振る。


「よくわからないわ」


 眉を顰める少女の様子から、ユウヤは少女の実感には湧いてこないものであるのではないかと考える。構造を知らなければ、実際に見てみなければ、説明への理解が追い付かないのかもしれない。専門用語として脳内変換が難しいせいもあるかもしれない。

 しかし、それ以上に分かりやすい説明はうまくいきそうになかったため、これからどうするかを伝える。


「何度も言うが、ここは危険だ。さっきは君のお陰でどうにかなったが、この先絶対に倒せる敵とも限らない。であれば、安全な地帯を目指すことが当面の行動方針としておきたい」


 しかし、ユウヤはは敢えて触れなかった。ある意味で言えばその為に下核領域へと足を踏み入れたのだ。現状として本域へと戻らなければこのまま危険と隣り合わせになり続ける観点から、先に目標を絞っておくためだ。どちらにせよ、下核領域には戻っておきたい。

 行動せねば上にも行くことは出来ないが、今はこの程度で十分だろうとユウヤは判断する。


 ふと、同隊の朋友へと思いが馳せる。自分たちのことで手一杯になってしまったことは遣る瀬無いが、本来であれば合流したい気持ちでいたのだ。特に非戦闘員である小込マキノと目刈ライへの心配は底知れない。彼女たちは無事でいるだろうか、不安が募る。


「ふーん……。上、ねえ」


 感傷に浸ろうかというところで少女の声により我へと返る。少女は変わりない氷でできた天井を見上げ、ぶつぶつと何やら呟いている。


「さて、話も固まってきたし、そろそろ行動に移したいですねえ」


 今まで、話し合いには参加してこなかったマコトが、伸びをする仕草をした。


「そうだな」


 傷の状態を感覚で確かめながら相槌を打つ。ただ、方針は伝えたが手段がまだ見えない。氷華のあった場所へと戻る手もなくはないが、それは都合現実的ではない。しかし、当てがないわけでもない。

 考えを詰めているところで、マコトは軽い口調で少女へと話しかけているのを見た。


「それにしても、お嬢さん。渡した毛布要らなかったみたいですけど、その格好で大丈夫なんです?」


 それもそのはず、見るからに少女の身着は寒そうなのだ。ワンピース1枚だけを身に纏っているのみで、他には何もない。防護服をとまでは言わないが、もう少しなんとかならないかとも感じる。

 何より、ここは気流の流れが弱い空間であるが、それでも摂氏マイナス20℃は下回る。どう考えても格好がおかしい。あまつさえ、少女は毛布を拒否したのだ。これは異常とも見える。それとも──。


「大丈夫よ。私、


 悲しそうな表情で少女は呟く。マコトも地雷を踏み抜いたと思ったのか、苦笑いへと変わっている。

 しかし、マコトはそれで話すのを止めようとはしなかった。


「あ、ああ。そうそう! 君に渡しておきたいものがあったんだった」

「……わたしに」

「そうそう。これなんだけどね」


 マコトはごそごそと隠すように置いてあったそれを持ち上げて少女の目の前へと差し出す。


「これは…………!」


 それは凍り付けにされたままの1本の剣だ。

 あの氷華の脇に一緒に凍り付けにされていたものと相違ない。少女の意識が落ちた後にマコトが取ってきたのだ。時間もなかったので完全に氷を撤去することは叶わなかったが、そのせいで重量もあるものをわざわざ持ってきたのだ。恐らく、それが少女の知るものの1つであると確信していたこともある。生憎、剣に無理矢理刻まれたらしい傷がなんと読むのかはわからなかったが。


 少女が氷越しに剣へと触れる。瞬間、信じられないことが起こった。


「っ!!」


 覆っていた氷が次々とぼろぼろにこぼれていくのだ。すると、傷1つつかないまま鞘に収まったままの剣が剥き出しになっていく。


(これは──)


 時間としてもあっという間な出来事だった。氷を通してでしか見れなかった剣が直で見られるのだ。氷解弾を使ったわけでもない。先に多少は用いたがそれでも時間がかかりすぎるのだ。明らかにユレイヤという種の能力の異質さを見たとユウヤは実感した。


 けれど、少女は気にも留めずにじっと剣についた傷を覗く。すると、少女の目からまた涙が溜まり、つーっと一筋に流れ落ちた。


「うん。…………うん!」


 頷き、雑に頬を拭う。

 そこにどんな言葉があるのかはわからないが、その言葉が少女のためにあるのならばそれで良いとユウヤは思った。


 少しして、少女の声音が微妙に上がった。ずずっと鼻をすする音を混ぜながらも彼女の意志が固まったせいなのか。それとも虚勢を張れるだけの力が戻ってきたのか。


「ここから出るんでしょう? なら、私も協力するわ」

「本当ですか!」

「……ああ、ありがとう」


 ポジティブな言葉にマコトとユウヤが並べて応える。内心で諍いも考慮に入れていただけに、ユウヤは素直に安心した。

 ならば、少女の──いや。


「自己紹介が遅れていたわね。天道真雪というわ。この先、どうなるのかわからないけれど、とにかく宜しくお願いするわ」

「白峰マコトです」

「姫野ユウヤだ。取り敢えず、再度確認しておくが私たちに君を害する気はない。私たちがともにいる間はそれを保証する」


 真雪の言葉に、三者が交じりあった。彼女からの反論はない。


「ならば、脱出について話そうかと思うが──」

「それについてなんだけど、いいかしら」


 空気が和んでいるなかでユウヤが切り出そうとすると、真雪がすぐさま待ったをかける。完全に出鼻を挫かれたように見えるも、無視して真雪は好戦的な表情で提案した。


「私がやるわ」



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《補足・裏設定の小話》


“外界人”

正確に言うと玄人種げんじんしゅ(ホモ・サピエンス)と呼ばれるものの進化種にあたります。玄人種は資源の枯渇という深刻な問題から居を構える地として月、火星他惑星を選択し、大半が地球を捨てました。彼らは地球を氷星ひょうじょうとも言います。

その存在が出てくることは…………、多分ありません(短篇か別の作品として出す可能性は極めて低いですがあります)。



(一気にファンタジー感が強くなりますが仕様です)

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