4-2 告白
部屋から飛び出し、草木も気にせず走っていく。
早くあの場所から逃げ出さなければならないという己の本能のようなものに突き動かされただひたすらに走る。
息が切れそうになる中ただ我武者羅に走った。
かなり遠くまできたところでニホンオオカミは近くにあった大木に手を当て、呼吸を整える
「はぁ…はぁ…はぁ…くっ、ゲホッ、ゲホッ……」
にげるように走ったからかすぐには回復しそうになかった。
そして、ニホンオオカミは倒れるように木にもたれかかり、座り込んだ。
――私ずっと思ってたの!『ヒトなんて絶滅してしまえばいいんだ』って!私たちと同じ気持ちになれば少しはわかるんじゃないかって!!
言ってしまった。ついに言ってしまった。
自分たちを殺した張本人であるヒトに。
我慢できると思ってた。ほんの数日なら隠せると思ってた。でも、我慢出来なくなってしまった。
自分の嘘がバレた途端のかばんの目を見た時、今までの恨んでいたという気持ちが、ヒトへの恐怖に変わってしまった。
ニホンオオカミは自分の手を見た。
ずっと走ってたせいなのか、若しくは恐怖からか、手の震えが止まらない。
相手はヒトなのだ。自分らの都合でほかの種をも絶え指すことも吝かではない残忍な生き物なのである。
確かに自分は、ずっと前からヒトというものを恨み、できるなら自分の手で絶やすことも考えていた。
だけど、そんな戦意はもう消えてしまった。
フレンズも見た目はヒトだ。でもかばんからはほかのフレンズとは違う何かを感じた。それこそヒトの姿のフレンズと本物のヒトを区別できるほどに。
――やっぱりヒトって…とっても残忍なんだね…
この言葉は決して怒りが我慢出来なくなってしまったから出た言葉ではなかった。
恐怖から逃げ出したい一心で出た言葉だった。
もうかばんのいるあの場所には戻れない。
若しかしたら自分を殺す準備はもう出来てるのかもしれない。
そんな絶望的な中、突然の睡魔に襲われた。
そういえば自分は二日間も寝ていなかったことを思い出す。かばんという脅威が近くにいたから本能的に寝ることを拒んでたのかもしれない。
かばんから離れたことからか、ニホンオオカミは気付かぬうちに寝てしまっていた。
ニホンオオカミが出ていったあと、かばんは1人部屋の中で項垂れていた。
ニホンオオカミは動物だった時を覚えていて、ヒトのこともよく知っていた。
そして、ヒトに事をとても嫌っているという事。
それなのにニホンオオカミはかばんとパートナーになりたいと言っていた。
どうしてニホンオオカミはそんなことを言ったのか。
かばんはまた一人になってしまった。
「ラッキーさん。僕って一体なんなんでしょうか…」
ラッキービーストに話しかけるが全く反応がない。
風の音も水の音も誰かの声も音もない静寂な空間。
今度こそ本当に1人になってしまったのだ。
――ヒトなんて絶滅してしまえばいいんだ!!
ニホンオオカミはそう言っていた。
その言葉にかばんは1つ思い出したことがあった。それはジャパリパークにいた時にジャパリ図書館で言われたことだ。
「ヒトはもうどこにも居ないのです。絶滅したのです」
もしもこの言葉が正しかったのなら、自分もニホンオオカミらと同じ絶滅種ということになる。
しかしそれはジャパリパークに居ないだけであって、どこか別の場所にいる。それを信じて旅をしているのだしミライさんたちもどこかにいるはずだ。
だけど、自分一人しかいないという気持ちはわからない訳では無い。寧ろ強く感じてるほどにわかる。
このことを伝えられたら、少しだけでも自分のことを受け入れてもらえないだろうか…。
「ラッキーさん、やっぱり僕ニホンオオカミさんを探しに行きます。自分の気持ちをちゃんと伝えたいんです」
ラッキービーストは相変わらず無反応だったがなんとなく頷いてくれたような気がした。
そしてかばんは部屋を出て探しに行くのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます