3-5 共有

 緑の派手な服装に黄色と赤のグラデーションの掛かった髪の毛。頭には緑の羽と嘴のような柄の髪型。鳥系のフレンズだということはすぐにわかったが肝心な名前の方が思い出せない。


「あー、一応大丈夫。変な夢見てたらしい。心配してくれてサンキューな」


 心配そうな顔をしてたからとりあえず落ち着かせるために一言と一緒に礼もしておく。


「そうでしたか…ケープライオンさん『やめろっ…やめろっ…』と繰り返し呟いていたので…安心しました」

「そうか…恥ずかしいところを見られてしまったようだな…」


 ケープライオンは笑って誤魔化したがかなり不自然になってしまった。


「ところでお前は俺のことを知ってるのか?」


 魘されてたところを見られて少し恥ずかしくなり焦って話を続けようと質問をしたが、この島でフレンズの姿になったらまずは自分たちのところに来るようになっていたのを思い出し愚問だと気づいた。


「まぁ私が目覚めた時にケープライオンさんたちの所へ行って、そこでお会いしましたからね。今日はバーバリライオンさんは一緒じゃないんですね」

「あ、あぁ今日はちょっと俺が島の見回りをしようと思ってな。で、ここでちょっと昼寝でもしようかとな」


 咄嗟に嘘をついてしまったが頭領というところに居る身だし怪しまれることはないだろう。


「それとすまない、俺はお前の名前を忘れてしまってるかもしれない…名前を聞いてもいいか?」

「あ、はい。えっと、私の名前はカロライナインコと申します。気兼ねなく『カロラ』とお呼びください」


――カロライナインコ

 赤と黄色の頭部に首から下は緑の鳥の仲間で絶滅動物の一種だ。フレンズの姿では派手な羽の装飾を付けた服にあまり長くないスカートと黄色のローファー。そして髪型はミディアムロブで頭にはぴょこんと2本の髪が立っており鳥のフレンズよろしく緑の羽が付いている。


「思い出した、リョコウバトと一緒に俺たちのところに来たんだよな」

「はい!覚えてていただけて光栄です!!」


 カロライナインコのカロラは嬉しさのあまりかケープライオンの腕を掴みブンブンと振った。


「イテテ…そんなに振ると腕が取れちまうぜ…」


ケープライオンに言われカロライナインコは焦るように手を離しあたふたと謝った。


「んと、カロラはここで何をしてたんだ?」

「えっ!あ、私ですか?私はここら辺の空を飛んでました。ここら辺の風って/とっても気持ちいいんですよねぇ、だから時々ここに来ては空を飛んで遊んでるんですよ」

「ほぉー、ということはここいらにはよく来るのか?」

「そうですよ、時間がある時は毎日と言っていいほど。でもここら辺私以外誰もいないんですよね」


 カロラはそう言うとその場で大きくジャンプし空に羽ばたいた。キョロキョロと辺りを見回したあとゆっくりと地面に戻った。


「やっぱり今日もいないですね、というか私以外でここに居たのはケープライオンさんが初めてですよ多分」

「なるほどな…という事は秘密裏に話したいことがあったり他のフレンズから隠れるにはうってつけの場所って事だな」

「ん…?えっと、それは一体どういう…」


 ケープライオンのつぶやきにカロライナインコは首を傾げる。


「いんや、こっちの話だ気にすんな」

「そうですか、でもたしかにここなら1人で考え事をしたりゆっくりお昼寝するのもできますね」

「そうだな、俺も時間があったらここに来てまた一眠りでもしようかね…」


 ケープライオンが喋っていると『ぐぅー』という音がした。その音はケープライオンの腹の音だった。

 そういえば朝から何も食べていないことに気づいた。

 ケープライオンが空腹だということを察したのかカロライナインコは懐からじゃぱりまんじゅうを取り出しケープライオンに差し出した。


「お腹がすいてらっしゃるのならこれを食べてください」

「お、だけどそれはお前のだし、貰ってもいいのか?」

「はい!私はもう食べ終わったあとですし、それとこのじゃぱりまんは誰かに渡そうと思ってたものですので」


 そういうことならとケープライオンはそのじゃぱりまんを受け取りその場で食べた。

 空腹だった事も相まってそのじゃぱりまんはとても美味しかった。





 ケープライオンはじゃぱりまんを食べ終わるとカロライナインコにある質問をした。


「カロラって自分がこの島に来る前のことを覚えてるか?」


 突然話しかけれたのでカロライナインコは一瞬肩を震わせたが落ち着いた声で返事をした。


「この島に来る前のことですか?んー…覚えてないですね…」


 カロライナインコは申し訳なさそうな顔でそういった。しかしその後何かを思い出したかのような仕草をし、話しを続けた。


「そういえばこの島に来る前の事かはわからないんですけど、リョコウバトちゃんと一緒にいたような気がします!」

「リョコウバト…か、確か種族的には別の動物同士だったよな」

「はい、それでも何故か一緒にいた気がするんですよね」


 そういえば自分とバーバリライオンも別種族のはずなのに一緒に目覚めた。全く別の個体なのに一緒の場所時間に目覚めるというのは何か法則のようなものがあるのだろうか。

 謎は解けるどころか増えるばかりである。


「ところでお前、かばんってやつ見なかったか?」

「かばん…ですか?いえ、そんなフレンズさんは知らないですね…」

「そうか…赤い服に大きなかばんと帽子を被ってるんだが」


 外見の特徴を伝えるがカロライナインコは見ていないらしい。


 つまりはもうこの島には居ない可能性があるのか。いや、別にあいつが何処にいるか気になるとかでは無い、って自分は誰に言い訳してるんだ…


「えっと、そのかばんさん?っていう方がどうかしたんですか?」

「え!?あ、いや、その、まぁ、ちょっとその子が気になるんだよねー最近ここに来たみたいだしーどんな感じなのかなぁ、と…」


だめだ、絶望的に嘘と誤魔化しが下手だ。変に勘繰れても面倒だし変な解釈で受け取られたらメンツ丸潰れだ!だがしかし、これ以上何か言うと余計に収拾つかなくなりそうだ…


「あ、新しいこの島の住人さんなんですか?さすが頭領!新人さんのことを気遣うなんて優しいんですね!見直しましたケープライオン少し顔が怖いのでてっきり手厳しい方なのかと」

「そ、そうなんだよ!新しく来た奴のことが気になって夜も眠れないんだ!!俺夜行性だけど!!!」

「ふふっ、可笑しいですね。」


ケープライオンが変に動揺しているのを気にする様子もなくカロライナインコはケープライオンにポジティブなイメージで納得した。

 カロライナインコが少し、というか全然違う解釈で理解してしまったがまぁいいだろう。


「というわけでそういうことだ。でもこのことは周りの奴らには内緒にしておいてくれ。少し面倒なことになるからな」

「面倒なこと、ですか。わかりました!これは私とケープライオンさんの秘密ですね!」


 カロライナインコがこれで秘密にしておいておけばこの嘘はバレないだろう。しかし本当にかばんはこの島には居ないのだろうか、矢張り気になってしまう。


 ここでケープライオンはあることを思いついた。


「カロラ、お前にある仕事を頼みたいと思うのだがいいだろうか」

「仕事…ですか?」

「あぁ、これは誰にも言ってはいけない極秘任務となる」


 カロライナインコは背筋を伸ばし真剣な顔になる。ケープライオンはカロライナインコにある任務を伝えた。

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