3-2 跡地

「私たちがいるこの島は『今は亡き動物が集う島 ロスアニ島』だ。このロスアニっていう名前はこの島の研究所から見つかった資料の中にあった名前だ」


 バーバリライオンは淡々と語っていく。


「俺らが目覚めた時には今俺らがいるこの森の開けた場所にいたんだ。どういうことかわからないが俺とバリーがそこで一緒に目覚めたんだよな。」


 ケープライオンはその時の様子を思い出すよう目を瞑る。


「あの時の俺らはなんもわかんねぇ状態だったからお互いを見た時に敵だと本能的に思っちまって本気の狩りをしてたなぁ、ケケケ」

「本当にそうだったなぁ、やらねばやられるって思ってしまっていたからな」


 バーバリライオンとケープライオンは懐かしいなと笑い合っている。一方のサーバル達は2人の本気の狩りを想像して体を震わせる。


「でもこの姿、元々の自分の姿と全く違うのにやけに普通に動かせたり歩いたりできるんだよなぁ。あの時は狩りに夢中になってて全く気にしてなかったんだけど、元々俺って4本足じゃなかったっけか?こんな前足だったっけか?って」

「え?!ということは自分の元々の姿ってフレンズになる前のことを覚えてるってことなのか?」


 ケープライオンが言ったことにアライグマが驚く。

 サーバル達はあの島でいた博士から自分がどんな動物だったかを聞いたことはあるが、自分の記憶の中で自分が動物だったことを覚えていない。


「そうなんだよなぁー。だから自分が後ろ足だけで立ってられてるのもこの変な前足も違和感がある。けどなんの障害もなく使えるんだよな」


 そう言われると自分の使っているこの手足に今まではなんも考えたことがなかったが、確かに不思議なものだなぁとサーバルは手をグーパーグーパーしながら思った。普段何気なく使っていたけどよくよく考えると物を持ったり触ったりできるのはこの形だからこそだろう。


「ちなみに俺は結構覚えてる方なんだ。バリーはちょっとしか覚えてないらしいが」

「あぁ、ほんの少しだけだが自分がどんなふうだったかは覚えてる。だが、どんなことをして生きてたかは思い出せないんだ」

「へぇー珍しいね。動物だった頃を覚えてるなんて」


 動物だった頃を覚えてるフレンズは少ない。しかも覚えていたとしてもうっすらとしたものしか覚えてない方が多い。

 そんな中ケープライオンはかなりのものを覚えているらしい。


「動物だった頃かぁー。あ、そうだ話変わっちゃうんだけど、さっき『この島の研究所』って言ってたけど研究所って?」

「あ、あぁ、先程言った研究所って言うのはこの島の北にある大きな白い建物がそうらしい」


 バーバリライオンはその研究室とやらがある方角を指さした。


「そこにはなんやら変なものが置いてあったり、研究資料?とか言う俺たちのことが書いてある本やこの島の詳しいことも書いてあった」

「私には何が書いてあるかさっぱりわからないのだが、ケラーは何故かそれが読めるらしいんだ。だからケラーを頼ってそこにあった情報を全部覚えて、そのときに自分がバーバリライオンであることを知った訳なんだ」

「え!?ケープライオンは文字が読めるの!?」

「なんでかよくわかんねぇけど何故か俺だけは読めるらしい。動物だった頃を覚えてるとかなんか関係してるのかなんなのかはよー知らんけど」

「だがケラーがその文字とやらが読めたおかげでこの島のこともここにいる動物達のこともわかったんだ。そしてここにいる動物達は全員絶滅している動物だと言うことも、絶滅というのがどんなものかも知ることが出来た」


 ここにいる動物全員が絶滅というものをしてしまっている動物達…。ラッキービーストが言ってたことを思い出すと『絶滅はこの世界から一匹も居なくなること』と、ケープライオンが言ってた『絶滅した理由が殆どがヒトのせいである』ということ。

 この事から一緒に冒険している『かばん』はこの島ではかなり危ない存在なのかもしれないと悟る


「なぜこの島に絶滅動物が集まるのかはまだわかっていない。あの研究所はまだ入れないところもあって謎が多い。あそこにあるものを理解できるのがケラーだけという事も、解読を遅らせてしまっている原因になっている」

「んー、私達がいた島でも文字が読めるのは博士と助手だけだったもんねー。博士たちもあの図書館にあった本を一通り読むのに長時間かかったって言ってたよ」

「俺も早く全貌を知りたいとは思ってるんだけどさぁ、あのちっちゃい字を読んでると眠くなるんだよなー」


 ケープライオンは大きな伸びをし大欠伸をしながらそう言う。


「そんで、眠くなりながらもわかったことが、この島の名前とここにいる動物達の種族。逆にまだわかってないのが、あの研究所では何があったのか、どうして絶滅動物ばかりがこの島に集まるのか。どうして俺たちがこの姿になったのか…こう並べていくとまだまだわからないことばかりだな」


 こりゃ当分休めねぇなーと苦笑しながら愚痴をこぼすケープライオン。その言葉に4人もくすりと笑った

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る