第三話 詮方のない生贄

3-1 追求

 同日


 サーバル、フェネック、アライグマはバーバリライオンの元に集まっていた

理由はもちろんかばんのことだ。かばんが、というよりも「ヒト」というものがどのようなものなのかを聞き出すためだ。特にサーバルはかばんが出ていかなければならないことに納得する答えが出るまで問い続けるとまで言っている。


「というわけでー。お姉さんにヒトのことを聞きに来たのさー」

「なるほど…連れに出て行けと言った俺らが相当憎いようだな」


 ケープライオンは表情一つ変えずに牽制するようにそう言う。その表情はまさに百獣の王の風格があった。


「そんな怖い顔しないでよー。別に私たちは恨みをぶつけるためにここに来てるわけじゃないんだからさー」


 平気そうに笑顔でそう言うが、フェネックの笑顔は恐怖からか引きつっていた。バーバリライオンもケープライオンも、動物の中では最強と言っていいほどの力を持つ獣の1人である。

 いつも元気なサーバルもアライグマも不安と緊張の表情を見せる。


「警戒することも理解している、お前達があの『ヒト』を仲間として旅をしてるし、その仲間を半ば強引に引き離したのだから無理もないだろう」


 バーバリライオンは優しく、でもどこにも隙を見せないような佇まいでサーバル達に接する。


「しかしこの島にもこの島なりの掟がある。その掟に則って、我々頭領としてああいう判断をとらせてもらった」

「そういうこった悪く思うなよ」

「でもあんなふうに追い出すように言うことも無かったんじゃないかな?」


 バーバリライオンの答えにサーバルは不満を混ぜた言葉で返す。


「そのことに関しては無礼を詫びたい、すまなかった。その代わりとは言ってはなんだがこの島のことについて話させてくれないか?お前達が知りたいと言っていたことも答えよう。」


 バーバリライオンは張り詰めた顔を笑顔にし、そう提案した。


「少しだけ納得いかないところもあるけど、この島に居候させてもらってる身としては、島のことについてわかるなら悪い話じゃないねぇー。」

「そう言ってくれると私もありがたい。まだちゃんと自己紹介もできてないからな」


 そういうとバーバリライオンは奥から2本ほど大きな木の丸太を持ってきた。その丸太を3人の前に下ろすと座るよう促した


「立ち話もなんだし、よかったら座って話を聞いてほしい」

「すごいのだ…こんな大きい丸太2本を片手で持ってくるなんてすごいのだ…」


 アライグマが驚嘆の声を上げる。それを見たバーバリライオンは微笑みながら これぐらいは私にとっては簡単なことだ という。


「まぁ私は毎日何かあった時のため鍛えているからな。ケラーはただ遊んでるだけだが」

「おいちょっと待て、俺は遊んでるだけってなんだよ。何回も言ってるだろ楽しんでやらないと意味が無いんだよ!」

「あれで遊んでるって言えるのがまず驚きだよぉ…たしかに私だって狩りごっこは楽しいけどあんなに本気ではできないよぉー」


 2人と自分たちの通常が違いすぎて3人は驚くばかりだ。


「サーバルキャット、お前もネコ科だろ?後で一緒に遊ぼうぜ!」

「えぇ!!?わ、私は遠慮しておこうかなぁなんて…あはは」

「なんだかんだでサーバルならいい勝負しそうだけどねぇー」

「フェネックまでひどいよー!」

「ふふっ、サーバルキャットをいじるのはそれぐらいにして、この島についてを話させて貰わせてもいいかな?」


 バーバリライオンはそう3人に合意を促し、3人が頷いたところで話し始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る