2-8 自傷

 ニホンオオカミとかばんはその日も日が暮れるまで喋り倒した。その後かばんはうとうとし始めニホンオオカミはかばんにもうベッドで寝ることを提案した。かばんはその提案を受けもう寝ることにした




 かばんが寝たことを確認するとニホンオオカミは外に出た。









「――なんで私、あんなこと言ったんだろう」


 ニホンオオカミは今日の自分の行動に自分で自分に疑問を抱いていた。


「私が動物の時に死んだのが、ヒトのせいだってわかってるのに」


絶対に忘れない、忘れるはずがない

自分が死んだあの日のことを

かばんには私が動物だった頃の記憶がないって言ったけど

本当は覚えてる

なのに、

なのになんで、

『ヒト』であるかばんに


「――おかしい…おかしいよこんなの…!!」


ニホンオオカミは近くにあった木片を力任せに蹴り飛ばす


あの日もそうだ

空腹で何も食べるものがなかった

しょうがなくヒトに飼われてる奴を食ってやろうと忍び込んだ

最後に食べた肉の味は忘れない

そして自分に向けられた銃口も

己に向け撃たれた鉛玉も


言い表せないあの痛みも


――その時に見たヒトの表情も…!!



なんでそんな恨んでるヒトの姿になったのか

今でも理解できない

自分の顔を見るだけでも虫唾が走るというのに

なぜほかのみんなはこんな姿でも平気でいられるのか

自分たちを殺したヒトの姿になってるなんて想像でも思いたくない



なのに、

なのになんで…!


「かばんなら…!かばんとなら一緒にいても楽しいって…!」


自分から自分のことを喋っちゃうし

言わなくていいことも、教えなくていいことも

可愛いなんて言われて、こんな大嫌いな自分の姿を褒められて


嬉しいって思っちゃったんだよ…!






「もう…なにがなんだかわかんないよ…!!」






近くにあった大木を殴りつける



そういえばこの木…私が目覚めたところだ…


もうあのまま死んでもう目覚めたくなかったよ…




……。




でも…

あの目覚めた日

死にそうになった時

死にたくないって思っちゃてたかも

助けてもらったことがよかったって思ってたかも


でも…


やっぱりヒトは嫌いだ

調子狂わされる


「――ヒトなんて絶滅してしまえばいいのに」

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