2-2 隠家

 この島に来て二日目。かばんは朝の陽ざしで目が覚めた。

 風と風によって揺れる草木の音。そしていつも隣にいるパートナーの…


「あ…」


 サーバルちゃんは今は別のところにいるんだっけ…。そうだ、海の霧を確認しないと…。もしかしたらも晴れててもうこの島を出れるかもしれないし…。

 かばんがそう立ち上がろうとした刹那、目の前に大きな影が現れた


「がおー!食べちゃうぞーー!!」

「う、うわー!!たべないでくだ…ってニホンオオカミさんか…びっくりした…」

「うぉ!冷静だなぁ…もっと驚いてくれると思ってたのに…」


 それは、昨日出会ったニホンオオカミだった。


「ちっちゃいもの同盟の子達にやると、すっごく驚いてくれるのに…君は結構驚かないタイプなのかな?」

「ど、どうなんでしょう…」


 ニホンオオカミはかばんに乗っかった状態から立ち上がった。


「おはようかばん、昨日はよく眠れた?」

「おはようございます、昨日は珍しくゆっくり眠れました」

「ん!私が守ってあげてたおかげかな?ムフフー褒めて褒めて!」


 ニホンオオカミは撫でて欲しそうに頭を差し出した。かばんは「ありがとうございます」と言いながらニホンオオカミの頭を撫でてあげた。体はかばんより大きいニホンオオカミは大きい尻尾を揺らしながらかばんに擦り寄る。それはまるで親子のような、かばんにとって初めての体験だった。


「むふー我は満足じゃ…」

「あはは、ニホンオオカミさんって可愛いですね」

「なななな…かわいい!?そ、そんな恥ずかしいこと自然に言わないでよ…!」

「え、えっとごめんなさい!」

「いや謝らなくても…むう…」


 心底恥ずかしかったのか、顔を赤らめてそっぽを向いてしまった。


「と、とりあえず、、お腹すいてない?昨日の続きもあるし私の住処に行こうか」


 ニホンオオカミはそういうと逃げるように歩き出し始めた。それを追いかけるようにかばんも付いて行った。





 しばらく森を進むと、岩肌のところの小さな洞窟についた。ここがニホンオオカミの住む家の入口らしく、ニホンオオカミが中に入るのに続いてかばんも中に入った。中は少し暗く肌寒さを感じる。以前のスナネコの家と似ていたが、アメリカビーバーとオグロプレーリードッグの家に行くための穴にあった木のような骨組みがあった。だがその骨組みは木ではなく、見たことのないもので出来ていた。そして地面には石と細長い何かでできた道のような線があり、その上にはこうざんを下る時に使った箱のようなものが置いてあった。

 そしてそのまま奥へ進むと突き当りにドアがあるのが見えた。するとニホンオオカミは振り返り


「ようこそ我が住処へー」

と言った


 かばんがドアを開けるとそこには1人で住んでいるには広すぎるぐらいの大きな空間があった。その空間にはたくさんのベッドとたくさんの机が置いてあり、見たことのない道具も置いてあった。


「ここが私の住んでる場所だよ!霧が晴れるまではここで休んだりしてくれていいからね!あ、そういえばまだ霧は晴れてなかったね、、まぁゆっくりしなよ!」

「ありがとうございます。それにしてもすごく広いお家ですね!これはニホンオオカミさんが作ったんですか?」

「いんやーここ誰も使ってないみたいだから最近私が住み着いたの」

「そうなんですか、最近…ってどれ位ですか?」

「ほんとに最近だよ。時間的には…1ヶ月くらい?私が生まれたのもそれぐらいなんだー」


 ニホンオオカミは奥から水の入ったコップとじゃぱりまんを持ってきながらそういった。


「だからこの島では結構新人なんだよねーわからないことも多いからかばんの質問に答えられない質問もあるかも…みんなが知ってることでも私が知らないことも多分いっぱいあるかもだし…そしたらごめんね?」

「い、いえ、僕も自分のことも知らないことだらけですから…最近学んだこともたくさんありますし」

「そうなんだーってそんな暗い雰囲気にしちゃいけないよね!ささじゃぱりまん食べて!そしたら質問とか何でも聞くよ」


 かばんは机に置かれたじゃぱりまんを手に取る。ひとまずニホンオオカミに質問をする前に自分が置かれてる状況を確認した。


 今自分はヒトのフレンズとしてこの島の頭領から出て行けとそう言われている

つまり自分はあまり公には出れない状態にある。だけどとてもありがたいことにニホンオオカミさんはここで自由にしていいと言ってくれた。最悪、霧が晴れるまではここでじっとしていることも出来る。

 しかしそうなると自分はニホンオオカミさんに多大な迷惑をかけることになってしまう。

 そして、もしもニホンオオカミさんもヒトのせいで絶滅してしまっていた動物のフレンズさんなら…。


「おーい?かばーん?」

「あ!はい!なんでしょう?」

「大丈夫ー?難しい顔したてけど。無理に質問考えなくてもいいんだからね?」

「すいません色々考えちゃってました。それじゃあ質問いいですか?」

「ばっちこーい!」


 ニホンオオカミは大きく胸を叩いた。

 かばんは1つ息を吸うとこの島のこと、ニホンオオカミ自身のこと、そしてこれからの事を質問していった。









また朝がやってき。

もう夢ですら期待しなくなった

あの時からずっとひとりなんだ

もう朝なんか来なきゃいいのに

ずっとこのまま寝ていられたらいいのに

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