第二話 別れと出会い
2-1 質問
「ねぇねぇ!あなた初めて見る顔だね!嗅いだことない匂いだったから付いてきちゃった!あなたはどこいくの!?送ってあげようか!?」
そこから出てきたのはこれまた初めて見るフレンズだった。
「えっ、その、あの…」
「んー?どうしたの?私の顔になにかついてる?」
「い、いえ。いきなり出てきたのでびっくりしちゃって…」
「そうかーびっくりさせちゃったかーごめんねー!」
オレンジ色の毛皮でそのフレンズの後ろにある大きな尻尾が大きく振られている。
かわいい…
「ねぇ!あなたなんていうの?あ、私はねーニホンオオカミだよー!よろしくね!」
「えっと…かばんって言います。よろしくお願いします…」
かばんは名前を言うのを躊躇したが、逆に名乗らないと怪しまれると思ってしっかり名乗った。
「かばんって言うのかーめずらしいなまえだねぇ、初めて聞くよ」
「そうなんですか…?もうてっきりこの島の方には全員知られてるかと…」
「えー君有名人だったの!?それなら握手しなきゃ!サイン?ってのも貰わなきゃ!」
「あ、いや、、その…」
ニホンオオカミがまだ自分のことを知らないことに少し安心したが、妙な誤解を与えてしまった。握手を迫られたので、かばんは一応しておいた。
「そういえばなんでここにいたのー?この島に来るフレンズなんて滅多にないのに」
「それはですね…カクカクシカジカありまして…」
かばんは今までのことを話した。バーバリライオン達と有った出来事は有耶無耶にして伝えた。
「ふむふむ、じゃあ霧が晴れるまでは暇なんだよね?」
「暇…と言ったら暇ですね、この島で何をすればいいのかわからないですし…」
「じゃあさじゃあさ!私とお話するのと探検に行くのどっちがいい?」
「えっ!?どっちがいいか…?」
突然の質問に驚いたが、かばん自身疲れているので探検は選ばずまだあったばかりのニホンオオカミと会話して情報を得ようということで「まずはお話をしたいです」と言った。
「なるほどなるほど…私も君のこと気になるし、まずはちゃんとこの島の事とかを知っておくには会話から…君の判断は賢明だ……なんてね!君のことなんでも教えて欲しいなー!」
終始ニホンオオカミのテンポに振り回されるかばん。ニホンオオカミの質問攻めが収まるのはすっかり日が暮れた頃だった。
「はぁー!いろんなことが聞けて満足まんぞくぅー」
「あはは…ニホンオオカミさんの質問だけでもう日が暮れちゃいましたよ…」
「ありゃほんとだ、私気になることがあるとわかるまで追いかけたくなっちゃうんだよね…」
ニホンオオカミは舌を出しながらてへっとした顔をした。
「私ばっかり質問しちゃったから今度はかばんが質問する番だよ!ささなんでも聞いて?なんでも答えるよ!」
「そうですね…何から質問しよぅ…ふわぁー・・・」
質問をしようとしたかばんだったが、大きな欠伸をしてしまった。ニホンオオカミもそれにつられて欠伸をした。
「はわぁ・・・欠伸を移っちゃった!もしかしてかばんは夜行性じゃないんだ」
「僕は夜は眠たくなっちゃうんです…」
「そうなんだ…じゃあかばんの質問は明日にして今日はもう寝ててもいいよ!私が夜の間起きてかばんを守ってあげるよ」
「えっ!いいですよ守ってもらうだなんて…ニホンオオカミさんも眠そうですし…」
「大丈夫大丈夫ー!私夜行性だからね!」
ニホンオオカミが言ったその言葉にかばんはドキッとした。今、いつもは隣にいるサーバルがいないことを。
しかしニホンオオカミといると少しだけ寂しさが紛れるような気がした。
「じゃあお言葉に甘えて守ってもらっちゃおうかなぁ…なんて」
「うんうん!休める時に休む!そして動ける時に狩りをする!かばん、これ基本だよ!」
「ありがとうございます…ではおやすみなさい」
「ん、おやすみー」
そう言ってかばんは眠りについた。
その夜
満月が照らす森の中
彼女は空を見上げ、友達と一緒にいた日々を思い出していた
一緒に追いかけっこをしたり、一緒に水を飲んだり、一緒に戦ったり…
数えようとしたら数え切れないほどの思い出を今夜も記憶の底から引き出す
隣にいるはずのその友達は今はいない。
どうしてその友達が居なくなってしまったのかはまだわかっていない。
自分はもう、1人にはなりたくない。
「今日は月が綺麗だよ」
そうつぶやきまぶたを閉じた。
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