1-2 宣告
ニホンカワウソに案内された4人は森の中を歩いていた。
しばらく歩いていると、奥から何かが激しくぶつかる音と誰かの叫び声が聞こえた。
「え!?なになに!?この音!」
「誰かが奥で戦ってるのだ!?」
サーバルとアライグマが焦るように驚く。奥からは「おうらぁ!」や「でやぁ!!」のような文に起こすには難儀な叫び声が止まることなく響いている。
ニホンカワウソは全く焦る様子もなく「いつものことですよ」と答えた。
「あれはバリーさんとケラーさんが手合わせしてるんですよ、ほんとに仲がいいんですよねー」
「私たちがゆうえんちでみたライオンとヘラジカの戦いとは大違いの本気度だねぇ…この声は」
声の方に進んでいくと開けた場所に出た。そこでは2人のフレンズが周りの空気も揺らすかのような迫力の戦いを…狩りをしていた。
「バリーさーん!ケラーさーん!こんにちはー!!」
「ん?おぉーニホンカワウソじゃないか、よく来たな」
「っておい!まだ勝負は終わってねぇぞ!」
「お前全然本気出してないだろう…お前がもっと本気を出すならまたやってやろう」
「なんだとぉ!俺は遊びながら強くなるがモットーなんだ!もっと遊ぼうぜ!」
サーバルが「今のが本気じゃなかったんだ…」とつぶやく。かばんも今の状況に空いた口が塞がらなかった。
「ん?そこのお前達は誰だ?もしかして俺と遊びに来たのか!?」
「ケラー落ち着け。まずは自分を名乗ってからどうだ…」
「うるさいなーバリーは真面目すぎるんだよ!」
「私はバーバリライオン。気軽にバリーとでも呼んでくれ」
「なっ、無視やがって…俺はケープライオンだ!どうだ俺と遊ばないか?」
さっきまでの気迫とは裏腹に、フレンドリーな2人を見て、緊張していたかばんは安堵の息を漏らす。一通り自己紹介をした4人は今までのことを2人の百獣の王に話した
「なるほどな、確かに海にかかってるあの霧は当分晴れないな。この島の霧は1度発生すると収まるまでが長い」
「そうなんですか…1番早く晴れるとしたらいつぐらいなんでしょう…?」
「早くても明日の夜方、遅いと5日は晴れないぞ」
かばんの問いかけにケラーが答える。
「流石に5日とかになるのはやめてほしいねぇ…」
「まぁ天気だけでなく海の流れもここら辺は荒れることもしばしば…だからな」
「自然を甘く見るとお前らみたいな弱っちそうな奴らはすぐにおだぶつだろうな」
「こらケラー、全く…」
ケラーはケケケと笑う。バリーはそれを見て心底呆れかえる。
「霧が晴れるそれまではこの島でゆっくりするといい。各同盟にもお前達のことを伝えておいたからこの島でのことは心配しなくて大丈夫だろう」
「ありがとうございます!」
「よかったー!ここで出ていけー!なんて言われたらどうしようかと思ってたよ…」
「アハハ!そんなことするわけないだろう!霧からの避難ためだとしてもせっかく来てくれたのだし追い出したりはしない」
かばん達は一安心したとりあえず霧が晴れるまではお世話になることが決まった。
大笑いするバリーにニホンカワウソが近づく
「バリーさんケラーさん、ちょっといいですか?」
「どうした?何か話でもあるのか?」
「はいひとつ伝えておきたいことが…」
ニホンカワウソは2人を連れて奥の方に行ってしまった。残った4人は一息吐いた。
「よかったね!私たちの過ごす場所が決まったよ!」
「霧が晴れるまでの間だけだけどねー」
「それでも霧の中闇雲に行くよりも安全になるまでここに居させてもらえた方がいいと思います」
「本当によかったのだぁー」
「――すまなかったな、少し席を外させてもらった」
「あ、いえ、大丈夫です」
しばらくして3人が戻ってきた。
「お前達が島のどこで泊まってもらうか考えてて遅くなった。とりあえず決まったからよく聞くんだ」
真剣な面持ちでバリーが話す。
「フェネックとアライグマ、お前達は島の西にあるちっちゃいもの同盟というところに行くことになった。ニホンカワウソもそこの一員だから付いていくといい」
「ちっちゃいもの同盟かぁーニホンカワウソよろしくー」
「サーバルさんとは別々になっちゃいましたがよろしくお願いしますね」
フェネックとアライグマはニホンカワウソに付いていくことになった。
「そしてサーバル、お前は俺たちのいる百獣の王の一族同盟のところで過ごしてもらう。ここにはお前と同じネコ科のフレンズが多いから退屈しないはずだ」
「ホント!?やったー!!」
サーバルは飛び跳ねながら喜んでいる。が、かばんと一緒じゃないことに疑問を持った。
「ねぇねぇ、かばんちゃんはどこに泊まるの?できれば私はかばんと一緒がよかったんだけど…」
「かばん、いや『ヒト』よ…」
バリーの、バーバリライオンの声色が変わった。
「お前はここから出ていってもらう」
「――えっ…」
突然のことにかばんは頭が追い付いていなかった。
「えっえっ…どういうこと!?かばんちゃんがどうして出ていかなくちゃ行けないの!?さっき追い出すわけないっ言ってたのに!!」
サーバルも動揺している。なぜ自分だけ、なぜ出ていかなければならないのか、全身の血が抜けていくような、そんな感覚に襲われる。
「なぜだかわからないようだな、どうせ自分たちがしたことなんざ覚えちゃいないのだろう」
「待ってよ!かばんちゃんがなにかしたっていうの!?かばんちゃんは今日初めてここに来たんだよ!?」
サーバルも必死になっている。当然だろう、自分の親友だけが出ていかなければならないなんて、信じられないはずだ
「ヒトよ、『絶滅』という言葉を知っているか?」
またの突然のことにかばんは反応出来なかったが、その言葉は知っていた。
「『絶滅』…その生き物が、この世界からいなくなること…ですよね」
「あぁそうだ。絶滅とはその生き物が消えてなくなるということだ」
かばんは察した。自分が何かをした、ではなく自分の『ヒト』というものがなにか不都合なものなのかもしれない。
「もしかして僕が『ヒト』のフレンズだから、誰かほかのヒトがあなた達に不都合になることをしてしまったのであれば謝ります。僕はそんなフレンズさんが嫌がるようなことをしないと誓いますかから」
「謝る?謝るだけで済めばいいのだがな」
「――知ってるか?俺たちが絶滅した理由…
殆どがヒトのせいだからな」
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