入学式直前

 翌朝目を覚ましベットから降りて、荷物から懐中時計を取りだし時間を確認する。

 時間は6時を指しており、予定どおり起きれた事を確認する。

 自身に魔術の残りが無いか確認し、シャワーを浴びて、荷物から出した制服に着替える。

 制服は学院の印章を襟にあしらった白いシャツと黒いズボンその上からローブをきれば完成だ。

 シャツとズボンには特に何も無いがローブには魔術に対して弱冠ながら耐性があり防護服になっている。

 荷物から懐中時計を取り出し時間を確認する。



シャワールームに備え付けの鏡で身だしなみを確認するとローブに印章を着けるのを忘れていた。

 荷物の中から探しだした、金の印章に魔力を込めて自分の胸元にくっつける。もう一度魔力を流して外れるのを、確認すると再びつけ直す。

 この印章は貴族席である事を示すための物だ。

 私は要らないと思うが式典では着けなくてはいけないらしい。


食料がないため、キッチンを使わず食事をとるために一階へと向かう。

 食堂へ向かうと既に何人かの生徒が食事を取っている。

 全員平民だからか、私に声をかける者はいなかった。

 私も食事を受けとるために受け取り口に向かい食事を受けとる。

 因みに料理を作っているのは管理人だった。


 食事を取り終わり、学院へと向かう。

 今回向かうのは学院の中心にある建物だ。

 寮からはそこそこ遠いため少しはや歩きで向かう。

 建物の側にいた案内の先輩にお祝いの言葉を貰いつつ入学式が行われる講堂へ向かった。 

 講堂内はまだ疎らだ。

 どうやら早く来すぎたらしい。

 席は自由みたいなので適当な席に座る。


 席に座りぼうっとしてると隣に誰かが座るのを感じた。

 隣を見ると女性で、向こうも此方をみていたらしく目があった。


 その女性の長い黒髪で顔立ちは整っている、肌は白く細やかで綺麗な黒い瞳が映えて美しい。

 私もまだ12歳だが精通を終え、使用人や領内の女性との経験はある。目も肥えたと思っていた。

 だが、彼女はどうだ、始めてみる美しさだ、明らかに彼女は他とは違う。

(彼女を口説いてから学院を出ていこう。)

 学院に入って良かったと心の底から思った。

私がそんな事を考えていると、彼女は此方の胸元に着いている印章に気付いたのだろう。

 目を見開き驚いていて席を立とうとした。


「いきなり立ち去るなんて失礼じゃないかな?隣に座っても私は構わないよ。」

 

 そんな事はさせない、私は直ぐに彼女に声をかけた。


「ご!…ごめんなさい!」


 彼女は青ざめて涙目で謝ってきた。きっと彼女は貴族を怒らせたという思いでいっぱいだろう。 

 平民にとって貴族は関わらない方が良い物だ。


「別に怒ってないよ、立ったままで目立っているから座りなよ。」


 彼女は私のいう通りにおずおずと座った。


「ああいうときの正しい対処は、軽く頭を下げて会釈して立ち去ればよかったんだよ?私はウーノ。」


 家名を聴いても彼女はピンと来てないようだ、さっきの動揺からして商人の娘じゃない事がわかった。


「私は、ミヤリス村のクロエと申します…。」

 

「クロエか、響が綺麗だね。もしかして君は特待生かな?」


 特待生とは、ファンタジー小説に良くある貧乏だけど才能があって入学って奴だ。


「はい!村を巡回してくださった魔術師様が私には才能があるらしくここに推薦されました!」


 彼女は嬉しそうに私に話してくれた。

 それにしてもやはり特待生か、才能もありそうで面白そうじゃないか。

 仲良くするに越したことは無い。


「特待生か凄いじゃないか同じ新入生としてよろしくね。」


 そういいながら握手を求めると彼女もほっとしたのか笑顔で応じてくれた。




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