リリーの湖.01


パチッと、暖炉の中で燃える薪が音を立てる。

私はその音で目を覚ました。

妻が暖炉のそばで編み物をする姿がぼんやりと見える。


「…少し眠ってしまっていた。」

「あら。おはようございます。体調はどうですか。」

「いつもと変わらんよ。」

「そうですか。」

「……。」


夢を見ていた。

昔の夢を。

この頃、幼い頃の私が度々夢の中に姿を見せるようになった。

その姿の私は、ただただ昔の記憶を辿る。

ベッドに横たわるだけの老いぼれた私がそんな夢を見るのも、最期の時が近いと言う事なのだろうか。



「なぁ、すまないが。」

「はい?」

「廊下にある、百合ユリの花の入った花瓶を持ってきてくれないか。」

「百合ですか?わかりました。」


「はい。」

「あぁ、ありがとう。」

「百合の花がどうかしたんですか?」

「いや……。この花は、裏から採ってきた物だろう?」

「よくわかりましたね。」

「はは…。あそこに咲く百合は、昔からとても美しかったから。」

「へぇ…よく遊びに行かれたんですか?」


先程見た夢を思い返す。


「あぁ、幼い頃はたくさん通ったもんだよ。あそこに咲く百合の花を辿って行くと、湖があるんだ。」

「湖、ありますね。」

「あそこは昔、リリーの湖と呼ばれていてね。」







「少し、思い出話をさせてくれないか。」





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