光を待つ

光を待つ.01



「…将太郎しょうたろう。」

「なに?」

「痣、また増えたね。」


しおりが僕の顔に貼られた大きめの絆創膏を見て言った。


「…階段でコケただけだから。」

「……。」

「…クラスのやつに変なこと言うなよ。」

「わかってるよ…。」

栞は悲しそうな顔で机に目線を落とした。

栞が僕を心配してくれてるのはわかってる。


「栞。大丈夫だよ。」

「ん?」

「あと少しで卒業なんだ。就職して、すぐに家を出るよ。妹も一緒に。栞にもこれ以上心配かけたくないしさ。」

「将ちゃん…。はやく卒業したいね。」

「将ちゃんはやめろってば。まぁ、あと少しの辛抱だから。大丈夫だよ。」

僕はそう言って笑ってみせた。

「そうだね。何かあったらいつでも言ってね。」

「うん。いつもありがとな。」

「いえいえ、へへ。」


栞は少し恥ずかしそうに笑った。



線路。電車。大きなビル。


高架下。騒音。汚い壁。


入学。卒業。灰色の空。


今はただ。上を見て。


僕のための。


光を待つ。








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