灯.01


ありがとう。ありがとう。

ちっぽけで弱い僕を、愛してくれて。


僕はもうすぐ、この世を去る。


けどね、悲しくなんてないよ。

こんな醜い僕に愛を教えてくれた。こんな臆病な僕を光の温かさを教えてくれた。


それだけで、僕は満足だよ。




僕の人生は、ずっと暗い闇の中だった。

ニキビが出来やすく、顎のバランスも悪くてしゃくれてる。目も細くて唇も分厚い。体が大きかったのもあって、とにかく目立った。

小学生くらいから、みんなは僕の醜い容姿を笑うようになった。

チョウチンアンコウが来たぞ。ブツブツお化け。

たくさん言われてここまで育った。


けど僕は知っている。

体にイボがあるのはメスのチョウチンアンコウだけだと。あのイボの正体は、子孫を残すために一体化したオスの姿だと。

心の中で、無知なクラスメイトを馬鹿にしながら育った。

そんな思春期を過ごした僕に青春を謳歌する権利など無かった。きっと、生まれた時から決まっていたのだろう。


あれは21歳くらいの頃だったか。

学校の帰り道。冬の寒い日に、僕はコンビニへ立ち寄り肉まんとコーヒーを買った。


「うわっ、奥田じゃん。」

「…えっ。」


僕は耳を疑った。何事かと思い、顔を上げる。

「やっぱ奥田じゃん。」

「あっ……。」


そこにいたのは、中学時代に罰ゲームと称して僕に告白してきた須藤だった。

「アンタ相変わらず気持ち悪いね。元気してた?」

「あ…うん…。」

「なにその反応。気持ち悪。」

「ご、ごめん…。」


レジで話す僕らの姿を見て、同い年くらいの店員がこちらに寄ってきた。

「須藤さん、友達?」

「え?友達ってか、前に話したチョウチンアンコウ。こいつ。やばいでしょ。」

「え?あっ!ちょっとー!ははははは!本物!?」

「本物のチョウチンアンコウ!あははは!」

「はははは!やめてよー!てか、須藤さんから罰ゲームで告白されたんだって?ウケる!」


僕の知らないところでも僕は馬鹿にされ、笑われていた。

「いや、あれは…。」

「今須藤さん彼氏いないから付き合っちゃいなよ!あはははははは!」

「ちょっ、ホントに気持ち悪いから!こいつだけは無理!てか昨日彼氏出来たし。」

「マジ!?この人とどっちがカッコイイ?」

「後で写メ見せてあげるよ、めっちゃカッコイイから。」

「見たいー!残念だったね、彼氏できてたっぽい!」

「てかお前いつまでいんだよ。帰れ気持ち悪い。」

「え…うん…。」

「あはははははは!!ひどー!」

「あんなんレジいたらお客さんびびっちゃうって。ははは。」









それから数日後、須藤が僕の家に来る事になった。

これまでの非礼を泣きながら謝罪し、僕に好きだ、と何度も告げた。何度も。何度も。

1度騙されている僕がその証明を求めると、須藤は服を脱いだ。女の子と手を繋いだ事すらない僕には刺激が強かったが、僕も男だ。

覚悟を決めて、僕らは愛し合った。



それからと言うものの、僕らは毎日の様に幾度となく交わった。

須藤は僕の家に住み着き、外に出なかった。

僕もそんな須藤と一緒にいたかったので、極力外出は控えた。休学届けもだした。

こんな身近に愛があったなんて、と僕は思った。

自分に自信が持てた。



僕らは動けなくなるほど、何度も、何度も、何度も、何度も、愛し合った。



須藤との別れが来るまで。

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