第28話 『生 還』その8

「おおい! こっちが生き返ったぞ~!」


 ぼくの耳元で大きな声がしました。


「そうか! そりゃあよかった。でも、こっちは駄目だ。どうにもならない。」


 近くに救急車が止まり、警察官の方もたくさんいるようです。


 ざわざわと人声がたくさんするので、見物人もかなり集まっているような感じがします。


 でも、ぼくは動けなかったのです。


 あれほど、どんな山道でも、がけでも、動けたのに・・・・・


 あたりは、もう真っ暗で、赤いランプがぐるぐると、走馬灯のように巡っているのです。


 突然、猛烈な痛みが体中を走り回りました。


 ぼくは、苦痛のあまり、大きく、うめきました。


「痛いですか? 生きてる証拠です。すぐ病院に行きます。頑張ってください。」


 救急隊員とおぼしき方が、声をかけてくれます。


「男の子は?」


 ぼくは喘ぎながら言いました。


 彼は、首を横に何度か振りました。


 ぼくは、一所懸命に、しゃべろうとしました。


 でも、うまく声が出ないのです。


「しゃべらないで。」


 その人が言いました。


 でも、忘れないうちに、言わなくてはなりません。


 ぼくは、必死で言いました。


「ナンバー、ナンバー・・・・二人。番号・・・・・」


「まって、メモするから。もう一回言って‼」


 ぼくは、必死であの映像で見た、バイクのナンバーを言いました。


 救急隊の方は、警察官の方に、それをすぐ伝えてくれたようです。


 制服の警官さんが、来てくれました。


「どんなバイク! メーカーは?」


 ぼくは、首を横に振ろうとしました。


 はっきり言って、ぼくは自動車の形式や、さらにバイクについては、ほぼ知識がありませんでした。


 ぼくの首は、動きませんでした


「大きな・・・・大きな・・・・」


「大きいんだね! どのくらい?」


「無理ですよ。病院でやってくれ。搬送します。」


 救急隊員の方が、ぐっと警官さんを押しのけました。


 ぼくは、痛みと、でも、うっすら、ぼんやりした意識の中で、病院に向かいました。


 きっと、涙はいっぱい、出ていたんだと思います。




 ************   ************

















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る