第27話 『生 還』その7
その光景は、同じ場所で映し出されているわけではありませんでした。
それは、普通歩きよりも、もっと早い速度で、前に移動していっていたのです。
ぼくは、ですから、それを追いかけるように前進していたのでした。
その映像は、やがてヘルメットをかぶった若い男性二人と、かなり怖そうな、しかし、それなりの紳士らしき感じの人との会話となりました。
*** ***
「いいな。これが相手だから、よく覚えてほしい。足が付くから、見るだけだ。」
「脅すだけでいいんじゃないですか?」
「いやあ。やるなら徹底的にやる。それが私の主義でな。ちゃんとやったら、借金は二人とも帳消しにしよう。」
「ぼくらがつくった借金じゃあない。」
「親だろうがなんだろうが、君たち兄弟には責任があるのだ。いやなら、それなりの処分をするだけだ。」
「本当に? もう家にも会社にも、付きまとわないか?」
「約束しよう。」
「ならば、わかったよ・・・・・」
「いいかな、きちんと最後までやらないと意味ないんだからな、覚悟してやれ。」
*** ***
ぼくは、その人が誰だかは、まったく知りませんでした。
雰囲気的には、なかなか、お金持ちっぽいなあ、とは思いました。
どうやら、ぼくたちをバイクではねた二人組も、また脅迫されていたようなのです。
しかし、たとえそうではあっても、許されることじゃあないでしょう。
男の子の為にも、この犯人の人たちは、絶対に許せないと、ぼくは思ったのです。
***** *****
そうして、映像が消え去ったとき、周囲はまた、真の暗闇に戻りました。
ぼくは、しかし、そうした気持ちになっていたこともあって、そのまま構わずにどんどんと、進んだのです。
そうして・・・
突然、地面が消え去ったのです。
ぼくは、遥かな彼方に、落ちて行きました。
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