第25話 『生 還』その5
ぼくは、綱だけを頼りに、高い崖を降りて行きました。
男の子の為にも、帰らなければ!
そう確信は、していました。
それでも、やはり、怖いものは、怖いのです。
正直言って、ぼくは高いところは好きじゃあ、ありません。
こんなこと、やりたくはないです。
しかし、いまは、やるしかないと思ったのです。
*** ***
くまさんが「がんばれ! がんばれ!」
と励ましてくれていました。
ぱっちゃくんは、ぐすんぐすん、しながらも、
「がん・・・ば・・・れえ・・・ううわ・・・こわいよ~!」
と小さな声で、ぼくの背中にしがみつきながら言いました。
がんばってます。
ぼくは、崖に足場を見つけながら、ゆっくりですが、降りて行きました。
でも、しかし・・・・
ぶきっちょなものは、あくまでぶきっちょです。
なかなか、映画の格好いい主人公のようには、まいりません。
半分以上は降りたというあたりで、つるっと、足がすべったのを契機にして、
ぼくの手は、綱から離れてしまいました。
ここでも、当然重力が効いているらしく、ぼくは真っ逆さまに、転落いたしました。
そう・・・・これで、このお話は、もう、おしまいです。
かっこのつかない、お話です・・・・・。
みなさん、さようならあ・・・・・・・・・・
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【何者かが現れて、ぼくと、くまさんと、ぱっちゃくんを、激しい流れの中から救い上げ、川岸に並べました・・・・・・・・・】
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でも、それから、どのくらい、たったのか・・・・・
ぼくは、気が付きました。
くまさんとぱっちゃくんが、心配そうに、のぞき込んいます。
「あれれ。どうなったんだろう。」
「ちっくん。ここ、ここ。」
くまさんが言いました。
ぼくは、ごごうと落下する滝の淵に、寝かされていました。
そうして、細い道が、その巨大な滝の後ろへと続いていたのです。
「あんなところから落ちたら、命なんか、ある訳ないよな。」
ぼくは、崖を眺めながら思いました。
しかし。
ぼくは、すでに生きてはいなかったわけです。
くまさんと、ぱっちゃくんは、もとから、ぬいぐるみさんです。
起き上がってみれば、なんということも、ないようだったのです。
まあ、なんだか、筋の通らないお話ですが、ぼくたちは、無事だったわけです。
滝に流されなかったことが、おそらくは、幸運だったのでしょう。
ぼくは、起き上がり、くまさんとぱっちゃくんを抱えて、その道をたどって行きました。
すると。
ありました。
あったのです。
洞窟の入口が見つかったのです。
「この世に帰る、入口か!」
ぼくは、みんなのお札が、剥がれていないかどうかを確認して、それからその洞窟に入って行きました。
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