第24話 『生 還』その4 

 ぼくは、くまさんと、ぱっちゃくんを連れて、その深い山道を進みました。


 こんどは、霧が晴れてしまっているので、その、おそろしい光景を眺めながらです。


 とはいえ、なんとなく慣れてくると、これはまた、ものすごい絶景なんだと、感心するようにもなりました。


 すごいのです。


 もう、おそらく、二度と見る事はない、あの世の、はずれの光景です。


 しかし、ついに、その滝が近くになって来ると、そんな、のんきなことを言っていられる状況ではなくなってきたのです。


 向こう岸が見えない川は、はるか下を、ものすごい勢いで流れてゆくのでした。


 しかも、川面までは、相当の高さがあります。


 そうして、直前で、この川は真っ逆さまに、落ちて行っているのです。


 「ごうごう。」「どうどう。」


 という、壮大な響きが、このあたりを支配しておりました。


 もちろん、ここからは、その底は見えません。


 「これを、降りるんだって・・・」


 「きゅ~~~~~・・・・」


 くまさんが鳴きました。


 それから、こう言いました。


 「ちっくん、行こう、行こう。」


 「ぐすん・・ぐすん。。。」


 ぱっちゃくんは、泣きべそをかいています。


 ほかに道はありません。


 しかし、いったい、何処から下に降りて行くのでしょうか?


 ぼくは、とうとう、滝の真横にまで到達しました。


 そうして、一本の『綱』が、下に向かって伸びている場所を見つけたのです。


 「ここ、ここ・・・」


 くまさんが言いました。


 「これって、道じゃなくて、ロープ降下だよ・・やったことないなあ。」


 「できる。できる。」


 「ぐすん。ぐすん。」


 まあ、だって、他に道はないでしょう。


 ぼくは、でも、ふと、思い当たったのです。


 そうなのです。


 こんな山道だって、ちっとも、つらくなかったのです。


 素足の足だって、全然平気でした。


 男の子と歩いていたときも、そうでした。


 つまり、ぼくは、死者なので、どうやら、疲れない、らしいのです。


 「なら、できるかもな。」


 ぼくは、覚悟を決めました。





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