第17話 『帰 還』その10

「ぼくは、死んじゃったんでしょう?」


 ソフトクリームをなめながら、男の子は言いました。


「そうね。」


 案内の鬼さんも、同じようにソフトクリームをなめながら、でも、優しく答えました。


「死んだ人が、どうして、ソフトクリームを食べられるの?」


 鬼さんは、少し体を前に倒しながら言いました。


「あなたは、これから、その答えがわかる場所に行くのです。」


「天国?」


「うん。そうですよ。」


「このお兄さんも?」


「ええ、多分ね。でも、この人には、まだ審査が残っている。あなたは『天賦』を受けたから、それはない。」


「じゃあ、このお船を降りたら、分かれるわけ?」


「そうね。」


「でも、ぼく、約束したんだけど。」


  『うわ、ここで言うなあ!』

 

 ぼくは心で叫びました。


「なにを?」


「一緒に行くって、ね。」


「ああ、そうか。」


 案内の鬼さんは、納得したようです。


「そうよね。よくわかる。でも、ひとには分かれ道が来る。必ず、別れる時が来る。でも、思いがけない出会いだって、待っているんですよ。」


「? 思いがけない・・・」


「そう。思いがけない、・・・着いたら解るの。」


 ぼくは、やはり鬼さんが言っている意味が、さっぱりわかりませんでしたが、鬼さんはそれ以上は答えてくれなかったのです。


「じゃあ、到着まで、まだ2時間はあります。船室で休みましょう。」


 ぼくたちのソフトクリームが無くなるのを見計らって、彼女は立ち上がりました。


 

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