第14話 『 帰 還』その7
『宇宙劇場』の入口には、鬼さんがふたり立っておりました。
男の鬼さんと、女の鬼さんです。
どちらも、鬼さんと言うには、あまりに優雅で、優しそうでした。
きちっとした、ブルーの制服を着ています。
「どうぞ、お入りくださいませ。」
ぼくたちは、開かれた立派な扉から、中に入りました。
うす暗い、ちょっと重たい空気が、のしかかってくるような劇場の内部には、やはり、奇麗な新幹線のグリーン車みたいな、でももう少し大きい、ブルーのいすが、10ばかり、横に並んでおりました。
もともと、沢山の人や鬼さんが見ることは、想定していないのでしょう。
ぼくたちは、生意気にも、真ん中あたりに、どかんと並んで座りました。
しかし、投影機のようなものは、見当たりません。
ぼくは、不思議に思って、周囲を見回しておりました。
すると、すぐに、あたりは真っ暗になりました。
「ぼく、お父さんと、プラネタリウム見たんだ。やっぱり、こんな風に真っ暗になるんだ。でも、そこでは街の風景が浮かんでいたりするけど、ここでは、何もないなあ。」
男の子が言いました。
「うん。何も見えないね。」
ぼくが応じました。
やがて、女性のアナウンスが聞こえて来ました。
「本日は、ようこそ、当宇宙劇場においでくださいました。では、さっそく始めましょう!」
不思議な音楽が背景に流れてきました。
寂しいような、楽しいような、哀しいような、なあんとなく、どっちつかずの音楽なのです。
「さあ、わたくしたちの宇宙を見に行きましょう。」
あたり一面が、星だらけになりました。
上だけではなく、横も、下も、周囲全てが宇宙になったのです。
ぼくたちは、宇宙空間に、浮いておりました。
「すごい!」
男の子が小さく叫びました。
「ううん・・・」
ぼくも、感心しました。
いったい、どうやって投影しているのでしょうか?
「これは、真実の宇宙です。映像ではありません。見えて居る星々は、みな、本物なのです。みなさんは、『今』という宇宙空間に移動しました。でも、皆さんは、保護されているので、宇宙の中でも安全です。」
ぼくの質問に答えるように、その解説者の方は言いました。
「ここに、輝いているのが、もちろんわが太陽です。もう少し近寄ってみましょう。はい、サン・グラスが右手に出て来ましたから、掛けてください。」
たしかに、右手のひじ掛けから、何かが出て来たのが解りました。
そう、眼鏡のようなものです。
ぼくたちは、それを目に装着しました。
すると、ぼくたちは、まるで、宇宙船の中にいるように、高速で太陽に近寄って行きます。
「さあ、ぎりぎりまで行きますよ。太陽は、半径69万6000キロ。地球の約109倍もあります。太陽は、大きな核融合炉です。太陽の中心あたりでは、約2500億気圧で、温度は、約1500万度Cだと考えられています。ここで、水素をヘリウムに変える核融合が起きていると考えられます。」
「すごいなあ。これホンモノ?」
「はい、本物です。」
「うわあ~!」
『なあんか、怪しいなあ・・・・・・・』
ぼくは、悪い癖で、全て疑ってかかります。
本物といっても、どうせ観測された映像か、それを上手く活用した、CGでしょう。
「お断りいたしますが、お二人は、実際、太陽の近くに来ています。保護を解除したら、焼けてしまいますよ。」
「こあ~~~!!」
こいつ、やはり、まだ『がき』だなあ。
自分の立場というものが、やはりわかっては、いないようなのです。
なんて、ぼくは思いましたけれども・・・
しかし、そうは言っても、迫力満点の、ものすごい映像なのですが。
そのとき、太陽の表面で、とてつもない大爆発が起きました。
巨大な火の柱のようなのが、ものすごい勢いで、ぼくたちに迫って来るのです。
「おわ~~~‼」
ぼくたちふたりは、のけぞりながら、叫びました。
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