第13話  『帰 還』その6

 『竜さん』の背中の建物とはいえ、動いている、と、いうような感覚は、ほとんどありませんでした。


 大きなフェリーボートの、客室に入るのと何も変わりません。


 ただし、さすがはV.I.P.専用というだけあって、まあ、豪華なものです。


 超豪華ホテルの、エントランス・ホールと言うべき場所が、まずそこに待っておりました。


 当然、上につながる、大きな回転階段が、真ん中にどかんと、座っております。


 「『世界一周旅行』に出るわけじゃあないのになあ」、とも思いましたけれども。


「上に上がって頂くと、カフェがございますし、『宇宙劇場』もありますよ。」


 案内の鬼さんが言いました。


「『宇宙劇場』って、なに?」


 男の子が、さっそく興味を示しました。


「この宇宙が始まって以来、これまでの流れを、ずっと眺めることができます。」


「『プラネタリウム』みたいなものかな?」


 と、ぼくが尋ねました。


「まあ、そうですね。違うのは、『本物』だと言う事ですね。」


「はあ?」


「見たいなあ。」


 男の子が言いました。


「うん。じゃあ、上がって来ようか。」


「30分程度ですから、済まれましたら、カフェへ、どうぞ。」


「ああ、わかりました。」


 ぼくたちは、階段をぐるぐるっと廻って、上の階に昇りました。


 美しい絨毯が敷かれた通路があり、豪華なカフェらしきところが広がっておりますが、向こう側に『宇宙劇場』という大きな文字が浮かびあっがていたのです。


「あそこだね。」


 男の子が言いながら、もう、ぐんぐんと、ぼくの手を引っ張りながら、歩いて行きます。


「あああ、急がない、急がない・・・」


 ぼくらは、小走りに、その『宇宙劇場』の入口に、やって来たのです。



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