第8話  『帰 還』その1

 ぼくと男の子は、長い列にならんでおりましたが、間違いなく、少しづつ前には


進んでゆきました。


 そうして、あの見上げるばかりの巨大な門が目の前になったとき、異変が起こり


ました。


 突然、なにも見ない天に稲妻が走り、大きな雷の音が響き渡ったのです。


 多くの人々は、地にひれふすように屈みました、鬼さんたちは、恐れおののくよ


うに天を見あげたままでした。


 そうして、やがて、なにか、ひらひらとしたものが、天から舞い降りてくるのが


見えました。


 それは、自然に、男の子の手の中に落ち込んだのです。


 お札のような感じの紙でしたが、よくわからない、なんだか模様のようなものが


書いてありました。


「おおお、天賦が降りた。天賦が降りた!」


 鬼さんたちが騒ぎ出しました。


 それから、大勢の鬼さんたちが、ぼくたちのところ・・・いえ、この男の子のと


ころにやって来たのです。


 先頭の鬼さんは、大きな旗を立てています。


 その旗の旗印は、男の子に振ってきた『お札』の模様とそっくりだったのです。


「あなたには、天賦が下りました。どうぞこちらに。」


 男の子は、にっこりとして言いました。


「このおにいさんも一緒でなきゃあ、だめだよ。」


「わかりました。それは、道ずれ一人は許されております。ただしかし、こ


の・・・不思議なモノたちは・・・・」


 鬼さんは、ぼくの「くまさん」と「ぱっちゃくん」を見て言いました。


 どちらも、まるで本当に、生きているように、すやすやと眠っているのです。


「これは、おにいさんと一体なんだから、切り離せないんだよ。」


 鬼さんたちは、ちょっと、顔を見合わせていましたが、一番偉いらしい鬼さんが


肯きました。


「では、お船をご用意いたしますので、こちらに、どうぞ。そのまえに、渡し守の


長がお目にかかります。これは、定められた儀礼であります。」


 男の子とぼくは、列から離れて、門の脇にある、大きくて立派な建物の方に向か


いました。




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