第4話  『旅立ち』その4


 ぼくは、その男の子を連れて、大勢に人たちの中に混ざって歩いて行きました。


 皆、素足でしたが、とくに痛いとは感じなかったのです。


 それから、ぼくは、聞きたいと思いながら、言い出せていなかったことを尋ねました。


「君は、どうして、ここに来たの?」


 男の子は、ぼくを見上げながら答えました。


「バイクのお兄さんたちが、髪の毛の、大分白くなってる男の人を、ひいたんだ。『こいつだ、殺せ!』って言ってた。」


「はあ・・・・? なんだそりゃ?」


「それで、そのとき、ぼくを見た。『こいつ、見たぞ。』って。それから僕にバイクが向かってきた。」


「むむむ。君、いくつなの?」


 男の子は、指と口とで、きちんと答えました。


「いつつ。」


「ああ。。。」


 思ったよりも、実は大きかったわけです。


 見た目が少し小さいものだから、勝手にみっつくらい、なんて思っていたわけです。


 しかし、いったいそれは、なんでしょうか。


「つまり、殺人事件?」


「うん。」


「ぼくたちは、殺された?」


「うん。」


「なんでまた?」


「さあ、しらない。お家に帰ったら、お母さんとお父さんに聞いてみる。」


「ああ、ありがとう。いやいや、冗談じゃない。そりゃあ、このまま、成仏なんかできるわけがない。」


「おうちに帰るんだよね?」


「あたりまえだよ。帰ってやる、絶対に帰ってやる。化けてでも帰ってやる。」


「ぼくたち、お化けになるの? それ・・・いやだ。」


 男の子は、また大声で泣き出してしまいました。


 ぼくは、回りを見ながら言いました。


「あああ、ごめんね。ぜったいに、おうちに帰るからね。生きたまま。」


 殺される覚えなんか、どこにもありません。


 ぼくは、役立たずのサラリーマンでした。


 出世もできず、褒められることも、また、新聞に乗ったりすることもありませんでした。


 

 **********   **********



 しかし、多くの人たちが歩いていて、回りには鬼さんたちがいっぱい立って見張っています。


 先ほどの事からしても、ここで、脱走しても、無駄に違いありません。


 お店のご主人が教えてくれたことに、かけてみるしかないと、ぼくは思いました。


 やがて、向こう側に、大きな雑踏が見えてきました。


 松の木らしき、そうでもないらしき、大きな木が、横にずらっと並んでいます。


「川だ!」


 ぼくたちは、とうとう黄泉の川に着いたのです。



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