第6話 アンデッドドラゴン戦
「とにかく行け!サンダーマン!」
だからそのネーミングセンスはどうなんだよ!てかオレの辛辣なコメントにへこたれていないし!
ルドルフの矢がフードの者達を襲う。しかしその攻撃は同じ雷属性の障壁によってバチッ!という音と共に消滅させられた。
それを見てルドルフは悔しそうに眉をしかめる。
「どうやら相手はそう簡単にやられてはくれないようだな」
「そのようですね。なら少しばかり本気を出させてもらうとしましょう」
そう言うとルドルフは長さ三メートルと長くて、幅が直径十メートル程の太い雷の矢を生成した。このタイプの矢はかなり威力があり、高位魔法で生成された障壁でも簡単に破る。だから相手は防ぐ事ができないはずだ。
「行け!サンダーマン!!」
だからそのダサいネーミングは止めろ。ちょくちょく笑いそうになって力が抜けるからちゃんと矢を生成する事が出来なくなるだろうが。
雷の矢が相手の生成した障壁とぶつかり、障壁はパリンとガラスが割れるような音を立てながら消滅した。
今だ!!
すかさず敵達に向けて大量の矢を放つ。すると2人に刺さり、その2人は黒い灰となって霧散するように消えた。残るは六人だ。
危機を感じ始めたのか、敵は再び一斉に詠唱を開始する。
「ルドルフ、相手さんは何かするつもりらしいぞ」
「そのようですね」
「面白い事になりそうだから放置するか」
そう言ってフフッと笑う。
「ダメですっ!!」
うん、やはりと言うべきか突っ込まれた。
「冗談だ」
「そうじゃないと困ります!それに今の私たちは本来の力を取り戻せていないんですよ?それなのにこんな余裕を持って……こういうのはあまり言いたくないのですが、ガリル様はバカなのですか!?」
「お前、ぶん殴るぞ?」
「す、すみません」
そうこうしている間に敵達の呪文詠唱は終了する。そして敵達は何もしていないのに力なく地面に落下し、呻き声を上げながら絶命した。
「いったい何が起こったんだ?」
自殺ではなさそうだが、何故敵は勝手に死んでしまったのか?謎である。
「ドラゴンに喰われたのだと思われます」
なるほど、自分の魔力量を使い果たしてしまったのか。となると外では大量のドラゴンが暴れまくっているはずだ。
もしくは相当強いドラゴンを召喚したか。
「「うおっ!?」」
急に大きな地響きが鳴り始め、オレとルドルフは頓狂な声を出す。
「ガリル様、物凄くイヤな予感がします」
ルドフルの首筋を一筋の雫が這う。
「奇遇だな。オレもだ」
一方のオレはそのイヤな予感から来る鳥肌を楽しんでいた。
これは強い勇者と対峙した時と同じ感覚だ。という事は物凄く強い敵が現れたと思われる。オレの魔族としての感はよく当たるからきっとそうに違いない。
「ルドルフ!外に出るぞ!」
「はい!」
オレ達はドームの割れた天井から外に出る。
そして出たら出たで、外は悲惨な事になっていた。
二百体は超える大量の人間大のワイバーンが生徒達と戦いを繰り広げ、約五百メートル先には体高が百メートルを超え、体長がその四倍はある、所々肉が腐り落ちて、骨の見える巨大なアンデッドドラゴンが校舎を破壊しようとしている。
一応、アルが一人で、何とかアンデッドドラゴンが校舎を壊さないよう応戦しているが、それがいつまで持つか分からない。これは一刻も早く加勢しに行った方が良さそうだ。だが、生徒達もワイバーンと戦うのに苦戦している。怪我をしている人も多い。
どうする?アルから助けるか?生徒達から助けるか?
迷いどころだ。アルを助けないと校舎が破壊される。かと言って生徒達を助けないとそのうち被害者が出る。
うーん……いや、悩まなくても分かるか。
「ルドルフ!オレと勝負だ!」
「勝負……ですか?」
「そうだ。ワイバーンを一体倒せば1ポイント、あのデッカイヤツを倒したら5ポイントだ。賭けはそうだな……勝った方が負けた方に何でも一つだけ命令する事が出来るってのはどうだ?」
窮地なのに何を悠長な事を言っているんだオレは。でもそうした方が互いのモチベーションも上がって敵を沢山倒せるはず。なので判断としては間違っていないはずだ。
「……分かりました。やりましょう!」
勝ったらオレに何をさせるか決まったのか、ルドルフは興奮気味に鼻息を荒くして話に乗った。かなりイヤな予感がするが、魔王のオレが負けるはずがない。それに今、ルドルフに何をさせるか浮かんだので、俄然やる気が出て来た。
その浮かんだ事とはルドルフに胸を触らせてもらうというものだ。となると、どうしても勝負に勝つしかない。
おっぱい!おっぱい!
「じゃあ決まりな!」
「みんなー!今の聞いたかー?最も多くポイントを取った者はガリル様に何でも命令出来るらしいぞー!」
………は?コイツなに言っちゃってんの?
これはオレとルドルフの間だけの勝負だ。それなのにみんなを巻き添えにして……いったい何を考えているんだ?
「マジ!?」
「やった!」
「よーし!狩りまくるぞー!」
そして何故か士気が上がるし。
「おい、なにしてくれちゃってるんだ?」
「そう怒らないでくださいよ。これはみんなの生存率を上げるための策ですよ?」
やる気が出たらみんな頑張ってくれる。そうなるとみんな冷静な判断が出来、無謀な事はしなくなる。
なるほど、それなら生存率は上がるな。ルドルフの野郎なかなかの策士だな。さすが作戦参謀をしていただけはある。
「ガリル様!やりますよ!」
「ああ!」
「じゃあ5、4、3、ゼロ!!」
ルドルフは一瞬で飛ぶ速さを最速にして、早速ワイバーン狩りを開始した。
「お前もかよ!!」
シェル同様、アイツも姑息な手を使いやがった。
一瞬、呆気に取られてしまったが、負けるわけにはいかないのでオレも飛ぶスピードを上げて、ワイバーン狩りを開始する。
まず、真正面にいたワイバーンの腹部にダガーの切っ先ぐらい尖らせた右手を貫通させて投げ捨てる。次にすぐ右側で女生徒に襲いかかっていたヤツの首を両手で掴み、そのまま頸部を握りつぶし、頭部と胴体を分断させる。直後、オレは生臭いくて汚い血を頭から被った。
嗚呼、この感覚だよ。この生き物を蹂躙しながら惨殺する高揚感……久しぶりだ。ゾクゾクする。
ふとルドルフを見ると、ヤツは笑い声を上げながら雷、炎、水等、ありとあらゆる魔法でワイバーン共を次々に倒しまくっていた。あの様子を見るに、どうやらアイツもオレ同様生き物を殺す快感に浸っているようだ。
オレもさっさと殺さないとだな。
「おおおおお!!」
雄叫びを上げながら大量の火の玉を生成する。
「死いねえええ!!」
嬉々とした笑みを浮かべながら大量の火の玉をワイバーン達に向けて放つ。
その火の玉を受けたワイバーンたちは断末魔の悲鳴を上げながら一瞬で消し炭となって絶命した。
今の攻撃で敵の全体の三分の一は倒せた。これでオレが負ける事はないだろう。となると、後は美味しい所を持って行くだけだ。
ロケットダッシュでアンデッドドラゴンの所へと向かう。そしてヤツとの距離が百メートルを切った所で高密度まで圧縮した火の玉をヤツにぶつける。
「グルオオオ!!」
アンデッドドラゴンは悲痛の声を上げて大暴れで身を捩った。
「よう、アル。元気か?」
「生徒達のパンツがちょくちょく見れるから、かなり元気だ。特に下半身が」
「あんた最低だな」
人間界では教師は神聖な存在であり、生徒に邪な感情を抱いてはいけないらしい。一応、その一戦は超えていないようだが、それでも生徒を邪な目で見ているあの男は最低人間と言えよう。
「だがオレも結構ラッキーだとは思っている」
だって男の子なんだもん。
女子共よーく聞け!男子とはそういう生き物だ!はぁーっはっはっはっ!!って、オレは誰に言っているんだよ!……まあ、良いか。
それを聞いてアルは『ヒュー!やるねえー!』と言うかのように口笛を吹いた。
「君も男だねえー」
「あんたもな!」
そんなやり取りをして、オレ達はニカッと笑う。ほんのちょっとだが、アルと打ち解けたような気がする。
「で、アイツどうする?」
「色々攻撃を試して手に入れたヤツの弱点なのだけれど、基本ないね。炎、光、雷、風、地、水……どれも有効打を与える事が出来なかった。でもーー」
「闇は試していないと……」
アルの言い方的にはそんな感じだ。
「いやぁー、闇魔法は好かないんだよ。だからあまり使いたくはない。人間の場合、闇属性の大規模魔法を使ったら、魔力を大量に消費してしまうから暫くは追撃出来なくなるしね!」
種族ごとに得意な魔法と弱点となる魔法はそれぞれ違う。例えばドラゴン系は炎系の攻撃が得意だが雷属攻撃が苦手。ゾンビ系は闇属性のドレインーーつまり生き物の生気を吸うのが得意だが、炎に弱いなど、種族によってバラバラだ。
そして人間はどんな魔法でも使うが闇属性の対しては苦手であり、弱点でもある。なので一度使用したら暫くは魔法を使えなくなる、なんてのは一般的によくある事だ。アルはそれを懸念しているらしい。
「それに比べ、君は種族があれだからーー」
魔王だからって言えよ!!
いや、でもここでアルがそう言って誰かが聞いてしまったら、恐らくオレの立場は悪くなるだろうから突っ込みは入れないでおこう。
「闇魔法を使ってもペナルティーは何も付かないんだろ?」
アルの言う通り、オレなら闇魔法を使ってもなんともない。若干、魔力を吸い取られるだけだ。となるとーー
「分かった。試してみる」
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