第4話 決闘
さて、シェルの件をどうにかすると決めたわけだが、これからどうするか……
隣の席にいるシェルをチラリと横目で見る。
彼女は一生懸命ノートを取っているーーと思ったら鼻がムズムズしてきたのか、鼻をヒクヒクさせ始めた。
「ヘクチ!」
そして小さくくしゃみする。
こうして見ると可愛いんだけどなあ……でもーー
「なに見てんのよ」
こういう所は可愛くない。
ギロリと睨まれてそう思う。
「別に何でもない」
「ふん!」
シェルは鼻を鳴らすと再びノートを取り始めた。
本当に可愛くない。
「えーっと、じゃあ地獄のデススペルの説明を……よそ見をしているガリル君にしてもらいます!」
やばっ、当てられた。
「地獄のデススペル、それは禁忌として遥か昔に封印されたもの。なので呪文の内容を知る者は誰一人としていないと言われている。それを詠唱すると凶悪なドラゴンを召喚する事が出来る。だが召喚できる数や種類はその詠唱した者の魔力量によって変わる。人によっては中ランクのドラゴンを100体以上、若しくは竜族で最強と言われるレッドドラゴンを召喚して使い馴らす事も出来るらしい。因みに、自分の魔力量を見誤って召喚し過ぎたら、ドラゴンに魔力だけじゃなく、魂まで喰われて殺されるからそこは要注意だ。更に因みにだが、もし使役する者が死ねばドラゴンは自由になるので、暴れてそこらの生物を喰いまくる。それを止めたいなら直接ドラゴンを殺すしかない……こんな感じで良いか?」
昔ルドルフから教わった事があるのでこれぐらいの知識はある。だから自信満々で答えたわけだが、はたして当たっているだろうか?
「はい、正解です!」
よっしゃ!
小さく右拳を引いてガッツポーズ。
「ガリル君、ありがとうございました!」
リリちゃんはニッコリ笑って拍手した。
「ガリル君凄ーい!」
「ガリルはオレの嫁!」
「後でチューしてあげるわ!」
クラスメート達も拍手喝采。
良かった。当たっていたか。後でルドルフを褒めてやるとしよう。
ふと、シェルを見る。
「なに見てるのよ」
目が合うと彼女はこちらにジト目を向けた。
一見、ツンツンしているように見えるが、これはオレと仲良くしたいと思っているサインだ。そうに違いない。
勝手に決め付けた後、オレは爽やかな笑みを浮かべてこう言う事にした。
「いや、お前が可愛いからつい見惚れてしまっただけさ!」
「なっ!?」
シェルの顔が一瞬で赤くなり、湯気を上げる。
どうやら効果は抜群だったらしい。
「ば、バカじゃないの!?バーカバーカ!」
これがオレの好きなツンデレのあるべき姿だ。今のシェルには本気で萌える。
「貴様!ガリル様をバカ呼ばわりするな!!」
ルドルフ、お前は黙ってろ。
それから……
~数学で仲良くなろう作戦~
「シェル、この公式を教えてくれ」
「やだ」
~文章で仲良くなろう作戦~
「シェル、この文章の意味を教えてくれ」
「やだ」
~一緒にお昼ご飯作戦~
「シェル、一緒に昼飯食べようぜ」
「やだ」
オレの作戦はことごとく失敗した。このままじゃ打つ手無しだ。本当にシェルが孤独になってしまう。
しかぁーし!!これだけじゃあオレはへこたれない!なんてったって魔王なのだから!!
「シェル、愛してる!結婚しよう!」
「…………」
再三のオレの攻めに堪えきれなくなったのか、シェルはこめかみにぶっとい血管を浮かべてブルブルと震え始めた。そしてーー
「うっがああああ!!」
とうとうキレる。
「もういい!決闘よ!決闘!!」
牙を剥き出しにし、右手でこちらを指差しながらそう言うシェル。
決闘か……確か喧嘩した相手とは仲良くなれるなんて誰かが言っていたな。となるとこれは好都合かもしれない。
「分かった。その喧嘩買った!!」
校舎の中央にある半径三百メートル程のドーム状の闘技場。そこにオレとシェルはいた。
「ガリル君頑張れー!!」
「ガリル君格好良いー!!」
「結婚してー!!」
因みに、この学園の生徒、総勢四百人余りが観客席に座っている。きっとオレの実力を見る為なのだろう。もしくはシェルを小バカにする為にここにいると思われる。
「警護隊!バリア生成開始!!」
「「はい!!」」
隊長らしき女に返事をした後、その部下十数名がオレとシェルのいるフィールドを囲むようにして飛行した。そして彼女達が呪文を詠唱し始めると、たちまちオレとシェルのいるフィールドを包むようにして半透明の膜が生成される。
これは高等魔法の一種で、これが生成出来るのは限られた者だけだ。
という説明はどうでも良いとしてーー
「ルールは?」
「魔法攻撃を先にヒットさせた方が勝ちよ」
「ほう」
シェルがポンコツである事は既に知れている。魔王城で見てるからな。だからオレの勝利は揺るぎない。一瞬で方がつくだろう。でもそれだとシェルが可哀想だし、観客も満足してくれないはずだから、ここは手加減して簡易魔法を仕掛け、それなりに良い感じにしてから終わらせた方が良さそうだ。
「じゃあ始めるわよ?5、4、3……」
そこまで数えるとシェルはニヤリと笑った。
「ゼロ!!」
そしてこちらから見て左に走る。
「ちょっ!?」
アイツきたねえ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます