パワハラ

くろーばー

【パワハラ】




今から500年前。地球に寿命が来て、地球は爆発した。


その時、人間を筆頭に地球の生物は他の星に移動した。



移動した先では、人間よりも遥かに長生きで強い生き物が生活をしていた。


見た目は、そう、よく人間の作ったファンタジーな物語に出てくる、エルフに似たような感じだ。

それに丁度、クマのような手が付いている者や、鳥や天使の羽のが付いている者がいる。


そんな生き物が生きている星に、人間はやって来た。

勿論、すぐに戦争が始まる。


人間は負け、何人かは地球で暮らしていた様な地位や自由を失った。



これは、そんな世界の話である----




そして、青年はペンを置き、さっきから自分の手元にあるノートを覗き込む友人を見た。



「今度は何書いてるんだよ。」


友人は、水の入ったグラスを片手に、空いた手で頬杖を付き聞いてくる。


「俺たちの現状を書こうと思って。」


友人は、その言葉を聞くと眉をしかめた。


「大丈夫。下克上のことは書かない。もし見つかっても大丈夫な事しか書かないよ。」


青年は、声を潜めて言った。

それを聞いた友人は、安堵のため息を付く。


「なら良いけどよ。気を付けてくれよ?今、計画がバレたら全ておじゃんだ。」


「分かってる。」


青年は、そう答えると、友人の頬を見た。

その頬は赤く腫れている。

仕事場の上司にやられたものである。

昔の言葉で言うと、いわゆるパワハラだ。

まぁ、相手は人間ではなく、仕事場の上司部下の関係というよりは飼い主とペットに近いものがあるが...。


友人は青年の視線に気付き、にっと笑う。


「大丈夫だよ。すぐ治る。でもまさか、コンクリート投げてくるとは思わなかったよ。」


「本当に大丈夫?人間も身体が強くなってきてるとは言っても、まだまだ奴らには敵わないんだから気を付けてよ?」


「分かってるって。それよりも、そんな話書いてどうするんだよ。」


友人は、話を替えようと慌てて言った。

そんな彼を見て、青年は軽く苦笑する。


「宇宙に流してみようと思って。」


そう言って、青年は、ひとつのボトルを取り出した。ボタンがいくつかあり、パッと見ただけでも頑丈そうな作りである。

友人は、目を丸くする。


「お前、ソレどこで手に入れたんだよ!?」


「秘密。宇宙人達から盗んだなんて口が裂けても言えないよ。」


青年は、大袈裟に首を振り言った後、ニヤッと笑った。

友人はハハッと笑う。


「それ、書き終わったら見せろよ?」


友人の言葉に、青年はふっと嬉しそうに小さく笑う。


「分かったよ。」


青年はそう言うと、グラスの水をぐいっ飲み干した。



静かな部屋に、からん と氷の音が鳴り響いた。



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