第75話
ディケイルから返されたメテオフォールと、ディケイルの光属性上級魔法であるディバインレイが迫る中、俺とソフィアはいつも以上に集中をしていた。
「んっ」
俺が魔力制御をしているので、ソフィアが少しくすぐったそうな声をする。
「バ、バニッシュ!!」
ソフィアの両手から魔力そのものが多量に放たれた。魔力はソフィアを覆うように展開される。
本来なら魔力そのものを魔法に変換しないと、攻撃にも防御にもならない。
だが、ソフィアの魔力にメテオフォールとディバインレイが触れた瞬間。
「なにっ!?」
そこには何もなかったように、2つの魔法は霧散するように消えてしまった。
(成功だ!)
これは密かにソフィアの本来のギフトの効果を最大限に生かせるように作り上げた無属性魔法だ。
ルマルタからの帰る途中、俺はソフィアと夢の中でソフィアのギフトの件について話した。
その夢の内容は2人共覚えており、帰ってから話し合ったのだ。(俺は筆談で)
詳しく調べた結果、ソフィアのギフトは『障壁貫通』ではなく、『魔法無力化』や『魔法解体』とも呼べる強力過ぎるものだった。
だから、ソフィアが着ている制服に施された障壁魔法は、ソフィアが魔法を使った時に溢れた魔力に触れ、魔法が打ち消されてしまっていたのだ。
戦いの時の魔法のぶつかり合いだって、ソフィアの魔法が触れた瞬間、相手の魔法を突き破るようにして、撃ち勝っていた。これも魔法を打ち消したと考えれば納得がいく。
これだけ聞くと最強のように聞こえるかもしれないが、例外があることがわかった。
1つは自分自身の魔法は打ち消せないこと。
そしてもう1つは魔力器官を持つ生物の内側の魔力は消せないことだ。
あくまで打ち消せるのは放出された魔力だけだ。
体内に変化をもたらす身体強化等は打ち消せないのだ。
それは俺の姿を変えている魔法『トランス』も例外ではないようで、効かなかった。
ソフィアは次の攻撃に移るため、魔力制御を行い始める。
「ふむ、ここまでだ」
「え?」
だが、ディケイルは両手を上に上げ、戦いを中断してきた。
「ソフィア・ミールの力はわかった。学生にしては申し分ない力を持っている。使い魔と連携しての魔法発動速度の上昇も見事だ。最後の魔法を打ち消した魔法も見事だった。だが、あの魔法は私も初めて見た。何処であの魔法を覚えたのだ?」
「えっと、あれはその・・・」
ソフィアは俺と作った魔法であることを、なんて説明しようか、俺とディケイルを視線を交互に送りながら、迷っていた。
「話し辛いならよい。もしかすると君の魔法を頼りにさせて貰うことがあるかもしれんので、そのつもりでいてくれ」
ディケイルはそう言い残し、背を向けてアリーナから出ていこうとする。
「は、はい!ありがとうございました」
ソフィアの言葉にディケイルは片手を上げて返事をし、この場を去っていった。
「ミールさん、怪我は・・・大丈夫そうね」
「はい、これぐらいなら自分で治せますので」
最初に受けた魔法の時に擦り傷が幾つか出来てしまってるだけで、大きな怪我はしなかった。
「それにしてもソフィアちゃんって強いんですね。戦っている姿は初めて見ましたが、これ程とは思いませんでした」
と、セリカも感想を述べてきた。
この日はこれで解散となり、俺とソフィアは自宅へと帰宅することにした。
☆ ☆ ☆
「リアン様、その、ちょっと試したいことがあるのですが」
「にゃ?」
俺がクッションの上でくつろいでいると、制服から部屋着に着替えたソフィアが話し掛けてきた。
「その、私のギフトを使ってリアン様の魔法を解けないのでしょうか?」
ソフィアは自分のギフトがわかってからというもの、何回もこの話をしてくる。
結論からいうと、出来ない。
ソフィアのギフトは体内の魔法を打ち消すことはできないのだ。
例外としてあるのは、以前俺が人間に戻った時だ。
怪我という体内へ通じる入り口から、ヒーリングという体内へ影響を及ぼす魔法が一時的に俺の魔法を表面上だけ打ち消したのだ。
もし俺が大怪我を負って、ソフィアに治癒魔法をかけて貰ったとしても、俺に変化を与えている魔法を全て打ち消すというのは難しいだろう。いや、その前に俺がどうなるかわからない。
俺の魔法は体内に流れる魔力に変化を及ぼしているのものだ。
そして、体内に流れる魔力はその人の精神エネルギーのようなもの。
実を言うと、魔法を扱えない人の体内にも魔力は流れている。
それを全て打ち消してしまったらどうなるかわからない。
そんなわけもあり、俺はソフィアには無理だと伝えている。
因みに人間に戻った時に解除の魔法を使おうにも、変身が切れている状態なので、効果がない。
要するに手詰まりということだ。
「にゃあ」
「はぁ、わかってますよぉ」
ソフィアは出来ないとわかる度に落ち込む。
んー、なんとかしたいけど・・・。あ、あれ試してみるか。
「にゃにゃ」
「なんですかぁ?」
俺はソフィアにベッドに横になるように促す。
「え?寝ればいいんですか?」
「にゃ」
俺は1枚の紙に魔法名を爪にインクを付けて書き、横になったソフィアに渡した。
「えっと・・・これを唱えればいいんですか?」
「にゃあ」
俺は頷いて返事をして、ソフィアのシャツを捲り、下腹部に尻尾を這わせる。
「ふふっ、くすぐったい」
ソフィアはそう言うが、だいぶ慣れたのか嫌がることはない。
俺は早速魔力制御を行うことにする。
「んっ」
ソフィアから艶かしい声が洩れる。
「ん、リアン様、い、いきますよ」
俺の魔力制御が終わったことを確認したソフィアが、俺が考えた魔法を唱える。
「リンク」
ソフィアの唱えた魔法の言葉を聞いた時には、俺の意識は夢へと落ちていった。
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