第76話
「・・・成功か?」
俺は自分の姿を見下ろし、手を見て、足を見る。
ちゃんと2本足で立っており、無事に人間になっているようだ。
「リアン様?」
「お、ソフィア。ソフィアも無事にっ!?」
俺はソフィアの声をした方を向くと、一糸纏わぬソフィアの姿があった。俺は慌てて視線を外す。
「ソフィア、服を着ろ」
「え?・・・~っ!!」
ソフィアは自分が裸だということに気が付き、身体を隠す。
「り、リアン様!?ふ、服はっ!服はどこにっ!?」
「ここは夢の中だから前みたいにイメージして作れ!!」
「ま、まえ?いっ、イメージ?」
ソフィアは混乱しつつもイメージしようとする。
「り、リアンさま~」
「終わったか?」
俺は服の構築が終わったと判断して、振り返る。
「なっ、なっ、なっ!?」
そこにはぼやけたような服らしき物を纏ったソフィアの姿があった。
ソフィアは隠すところは手で隠しているが、服としての機能はほとんど成していない。っていか透けている。
「も、もう一度ちゃんとイメージしてみろ」
その後も試してみたが、上手くイメージが出来ないのか、イメージ通りに構築してくれないのか、成功することはなかった。
「うまくできませ~ん」
ソフィアは泣き顔で訴えかけてきた。
(どうしてだ?ソフィアは以前普通にイメージして服を出来てたはず。俺が魔法として作ったことで何かしらの不具合か?)
とにかくこのままでは、落ち着いて話しなんて出来ない。だから俺がイメージしてソフィアが着れそうな服を出すことにした。
「り、リアン様、着れましたけど、その、下が・・・」
再び振り返ると、そこにはワイシャツ1枚着たソフィアが立っていた。男物の服しかイメージ出来なかったので、ワイシャツの胸部はボタンが閉めきれずに、胸の谷間を覗かせている。
ズボンも渡したのだが、大きすぎて穿けなかったのか、何も穿いていない。
なので、ソフィアは恥ずかしそうにワイシャツの裾を下に引っ張って隠そうとしている。
おかげで胸が強調し、とても扇情的な格好となっていた。これはこれで駄目なような気がするが。
「ま、まぁ、さっきよりはマシか」
「は、はい」
一応は隠れているので、よしとしよう。
ソフィアも恥ずかしそうに頷いた。
「でもこんな魔法、いつの間に作ったんですか?リアン様とはいつも一緒にいるのに」
確かにソフィアとはいつも一緒に行動している。
「まぁ、考えることは猫の時でも出来るからな」
「それはまぁ、そうですが」
ソフィアは納得していないのか、首を傾げる。
嘘は言っていない。ただ、テストの時は寝ているソフィアの魔力を使わせてもらったぐらいだ。
「最近、朝起きるとパンツがまた濡れてるんですよねぇ。まぁ、以前程ではないですが。ただ洗濯が大変で」
「・・・・・・・」
(・・・これはバレてるな)
俺は諦めて素直に話すことにする。
「悪かった。今度からはちゃんと」
「リアン様が責任取ってくれるなら、許してあげます」
ちゃんと言ってから、と言おうとしたのだが、とんでもない要求をしてきた。
「せ、責任って」
「それはまぁ、その、けっ、結婚とか?」
ソフィアは顔を真っ赤にしながら答えた。
その答えはわかってたけど、実際に言われるとこっちまで恥ずかしくなってくる。
「と、とりあえず今はその話は置いといて」
「・・・・・・バカ」
「なんか言ったか?」
「なんでもないです」
ソフィアは少し拗ねた顔で言ってきた。
「一応こんな形だが、ソフィアとは普通に会話が出来るようになった」
「うぅ・・・はい」
今までは筆談か、ソフィアの言葉に頷くことにしか出来なかったからな。筆談といっても、俺は猫だから、かなり書く速度は遅いから、今みたいに話せるのは大きな進歩だ。
「今後は俺に聞きたいこととかあるときはこの『リンク』の魔法を使ってくれ」
「わ、わかりました。でもこれ・・・次もまた裸になってしまうのでしょうか?」
ソフィアは顔を赤くしながら、聞いてきた。
「・・・・・・改良しておく」
「よろしくお願いします」
ちょっと残念な気はするが、仕方がない。
「あ、リアン様。早速1つ聞きたいことがあるのですが」
「なんだ?」
「私がルマルタで戦った時に使った魔法のことなんですけど」
「ディバインロアって言ってたやつか?」
「はい。あの魔法ってなんだったのでしょうか?今まで聞きたくても聞く機会がなくて」
ディバインロアはソフィアがカリーナの姉であるモニカがイブリスとなり、それを倒す時に使ったカリーナの家系であるメルエム家に代々伝わってきたとされる魔法だ。
俺もあの時に初めて聞き、ソフィアが使っているのが初見だ。
ただ、あの時の魔力の流れは今現代の魔法とは異なっていた。
使用する魔力量もそうだが、魔力の質もいつもと違ったような気がしたのだ。
俺も今わかっているのはこれぐらいだ。
使用者であるソフィアにこのことを説明すると、ソフィアは小さな声で「やっぱり」と呟いた。
「リアン様。実はディバインロアを使った時なんですが」
ソフィアが説明してくれたことは、俺もかなり驚く内容であった。
あの時のディバインロアの詠唱は、ソフィアの頭の中に聞こえてきたものを復唱したというのだ。
その声は俺は聞こえてないし、ソフィア自身も声の主はわからないそうだ。
「私、それが少し怖くて」
「でもそれ以降聞こえてないんだろ?」
「はい」
「それなら今はそこまで気にする必要はないと思うぞ」
「そうでしょうか?」
確かに俺も知らない誰かが頭の中に声が聞こえたら怖いと思う。はっきりいって不気味だ。
でも、助けてくれたのは確かだ。
今はそう割り切った方が精神的にも楽だしな。
「ああ。その声はソフィアを助けてくれた。その事実を素直に受け取っておけばいい」
「…………わかりました。今はそういうことにしておきます」
俺の言葉にソフィアは静かに頷いて微笑んだ。
それからソフィアと魔法のことについて色々と話し合うのだった。
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