第73話
「・・・ん?ここは・・・・・・」
俺は気が付くと白い霧がかかったような場所にぽつんと2本足で立っていた。
「人間に戻ってるということは、ここは夢か何かか?」
俺は自分を見下ろしてそう判断した。
現実では今頃、グランの馬車でフォルティスに向かってる最中のはずだしな。
「リアン様?」
そこにソフィアの声が聞こえてきた。
声のする方を向くと、ソフィアが一糸纏わぬ姿で立っていた。
俺はそれを見て、思考も身体もフリーズしてしまう。待て、これは俺が望んでいたから見ている夢なのか?
そんなソフィアはというと。
「リアン様が裸・・・え?これ夢?私が望んだからこういう夢見てるの?わ、私も裸だし」
ソフィアも俺と同じように混乱しているようだ。
ソフィアは両手で身体を隠しながら、上目使いで俺を見てくる。
次第に思考が動きだし、この目の前にいるソフィアを見ていると、ただの夢には思えなくなってきていた。
「・・・ソフィア」
「ふぁいっ!」
俺が名前を呼ぶと、ソフィアは顔を真っ赤にしてびくっとしながら返事をした。
「なぁ、お前って」
「い、いつでも来て下さい。こ、これは夢ですから。夢の中だけでも私はリアン様と・・・」
俺はソフィアが現実のソフィア自身なのかを問いたかったのだが、ソフィアは身体を隠していた両腕を広げて、そのまま肌を重ねるように抱きついてきた。
そのせいで、俺は何を言いたかったのかを忘れかけてしまう。
って待て待て!!ここは理性を押さえろ!!!
「なぁソフィア、お前ってちゃんとソフィアなんだよな?これは俺だけの夢ではないんだよな?」
俺とソフィアは使い魔契約で魔力的に繋がっている。だから、夢とかを共有する可能性は否定できない。
「こ、これは私の夢ですよ!じゃなきゃこんな大胆なこと出来ませんよ!」
「いや、ソフィアが現実のソフィアの意識だとすると、これは俺とソフィアが見ている夢ということになると思うんだが」
「・・・私とリアン様の夢?ってことはリアン様はリアン様自身ってこと………~っ!?!?」
俺が現実の俺と同じ意識だと理解した途端に、ソフィアは身体中を赤くなるほどに赤面する。
「こここここりぇは違くてっ!!わひゃしはリアン様とこんな淫らなことにゃんて考え、にゃんかなくてぇっ!!」
「いいから身体を隠してくれ。それにここが夢ならしっかりと想像すれば」
俺は想像すると俺は人間だった頃の服を着ていた。
「ほらな」
「わ、わたひも!!」
ソフィアも混乱しつつ想像すると、いつもの制服を着ていた。
「ほっ、なんとかなりました」
顔は赤いままだが、ソフィアは少し落ち着いたようだ。
「それにしてもリアン様。なんでこんな夢を見るんでしょうか?」
「まぁ、考えられるとしたら、意識や魔力の波長が合ってしまったんだろうな。1種の共鳴現象のようなもんだろ」
俺は考えられることを伝えると、ソフィアは感心したように納得していた。
「でも、夢ならこうやってお話し出来るんですね」
「そうだな。これは出来るように考えた方がいいかもしれないな。ま、起きても覚えてられるかはわからないけどな」
これが出来れば意志疎通もやり易くなる。
「そういや大丈夫なのか?」
「えっと、何がです?」
「あの戦いの時の反動とかだよ。俺がソフィアの中の魔力を見たが、変な感じはしない。でも一応な」
「そうですね・・・、あの最後の魔法を使った時、誰かが教えてくれるような・・・導いてくれるような感覚はありました。あれってリアン様ではないんですか?」
「いや、俺はあの時は何も出来なかったんだ。やっていたのはソフィアの魔力が暴走しないように抑えるぐらいだ」
「それじゃあ導いてくれたのって・・・」
ソフィアは首を傾げて考える。
「案外、お前のご先祖様とかかもな」
「私のご先祖様・・・。そういえば私のこのオッドアイってご先祖様の力を強く引き継いだからって、昔お母さんに聞いたことがあります」
「ご先祖の力って、そんなことってあるのか?まぁ、血筋で強い魔力は引き継がれたりはするが」
だが、ソフィアの場合はありえるのかもしれない。
確かソフィアのご先祖はフルーリエの国を作った人のはずだ。
フルーリエの伝承に偉大な魔法使いが建国したというものが残っていたはずだ。
それがオッドアイに現れるかどうかまでは書いていなかったが、ソフィアの魔力総量等から考えると、それは正しくも感じるのは確かだ。
「それとリアン様。最近1つ気になっていることがあるのですが」
「なんだ?」
「私のギフトについてです」
ソフィアのギフトは『障壁貫通』と判断している。しかし、俺は最近になり、少し違うような感じがするのだ。
「はい。私のギフトは『障壁貫通』と判断して頂きましたが、魔法の撃ち合いでも相手の魔法を打ち消しているように感じるんです」
ソフィアも俺と同じことを考えていたようだ。
実際にソフィアと魔法を撃ち合った相手は、魔法の威力云々抜きに、ソフィアが押し勝っているのだ。
いや、相手の魔法を打ち消しているようにも見えるのだ。
「あれ、リアン様?」
「お」
次第にソフィアの姿が、全体的に空間が歪んできた。
そして、そのまま意識は浮上するような感覚を抱いて、ぷつりと切れるのだった。
☆ ☆ ☆
「んん・・・」
ソフィアがゆっくりと目を開けた。
「嬢ちゃん、目ぇ覚めたか?」
「ここは・・・」
ソフィアは眠そうな眼を擦りながら、辺りを見渡す。
実をいうと俺もソフィアの膝の上でさっき目を覚ましたばかりだ。
「フォルティスの町に着いたところだ。ココナ嬢ちゃんとミレイ嬢ちゃんはまだそこで寝てるぞ。ま、今回は色々と大変だったから疲れたんだろうよ」
隣を見ると、2人仲良くもたれ掛かって寝ていた。
「それにしても嬢ちゃん、幸せそうな寝顔だったな。何か良い夢でも見たか?」
「~っ」
ソフィアは寝顔を見られたことが恥ずかしいのか、顔を赤くする。
「そ、その、良い夢だったような気がします。ね、リアン」
ソフィアはそう言いながら、俺の頭を撫でてくるのだった。
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