第68話
「来た」
俺はソフィアの肩に乗り、イブリスが逃げていった方向を中心に警戒していたら、ソフィアのサーチの魔法にイブリスが引っ掛かった。
サーチは自分を中心にイメージすれば半径300m程だが、方向を指定すればその距離は倍以上伸びるのだ。
「リアン、イブリスの・・・モニカさんの足止めするよ」
「にゃあ」
あのイブリスはカリーナのお姉さんのモニカだという。さっきあいつが逃げたのは、カリーナが話し掛けたことで何かを思い出したのかもしれない。
カリーナは声が届くのであれば、会話をしたいそうだ。
そのためにはモニカの足を止める必要がある。
「にゃっ!!」
「っ!?エアロショット!」
ソフィアは俺の魔力制御に気が付き、魔法を唱えた。
すると、目の前で水が弾け飛んだ。
「あんなところから・・・」
ソフィアは自らも魔力制御を始める。
モニカはまだかなり離れている場所から、アクアショットと思われる魔法で攻撃をしてきたのだ。
「でもカリーナが言っていたことと同じだね」
カリーナから、モニカは生前、水属性を得意としていたと聞いていたのだ。
「リアン、行くよ!」
「にゃあ!」
「ストーンウォール!」
ソフィアはこちらに向けて走ってくるモニカの前に石壁を出現させた。
モニカは石壁を迂回しようとするが、
「ストーンウォール!」
ソフィアが間髪入れずに俺が魔力制御していたストーンウォールで更に逃げ道を塞ぐ。
すると、モニカは石壁を殴り始めた。その一撃は石壁に亀裂が入る程だ。
(身体強化魔法を使っているのか?もしくはイブリスとなった時に身に付けた身体能力か?)
あれだけのパワーは人間では出せない。以前戦ったヘンリー・ヘイグがイブリスになった時も身体能力は上がっていたが、目の前のモニカ程ではなかったはずだ。
「・・・ソフィアさん」
「うん。大丈夫」
ソフィアの隣にはミレイがいた。
ミレイも今回の作戦には協力してもらう。
ミレイは魔力制御を始め、ミレイの周りにキラキラと魔力が渦巻き始める。
「・・・初めての、共同作業」
「うん。リアンもよろしくね」
ソフィアは魔力の制御を完全に俺に任せてきた。これはソフィアが自分にはまだ難しいと自分で判断してのことだ。
俺とミレイが準備をしている間に、なんとモニカがストーンウォールを完全破壊してきた。
「リアンっ!」
「にゃあ!」
俺も今回のような魔力制御は初めてだ。ミレイも初めてらしいので、いつも以上に真剣な顔をしている。
「メイルストロームっ!!」
ソフィアが魔法を唱える。
すると、こちらに走って来ていたモニカの足下に大きな水の渦が現れる。
メイルストロームはソフィアとミレイの試合の時にミレイが使った魔法だ。
俺もこの魔法の魔力制御は知っていたので、ソフィアも魔法名を知り、使えるようになったのだ。
まぁ、ミレイが使うと、ミレイのギフト『氷結』により、巨大な氷塊が対象の周りを高速で転がり、徐々に対象に近付いていくという別物の魔法に変化しているが。
だが、今回はソフィアが唱えた魔法なので、今のところはちゃんとした渦潮となって、渦潮の中心にモニカを閉じ込めることに成功している。
「っ!!っ!!」
モニカは渦潮から抜け出そうとするが上手くいかない。
モニカが手を振るうと、キラキラと光る物が舞い散っていく。
「・・・・難しい」
「にゃう」
俺とミレイはメイルストロームが発動している間、魔力制御をし続ける。
モニカが腕を振るう度に舞い散るキラキラしたものは、氷の粒だ。氷の粒が光を反射してキラキラと輝いているのだ。
これはミレイのギフト『氷結』の魔力を俺が制御しているソフィアの魔力に上手く混ぜ合わせているのが原因だ。
見た目は渦潮なのだが、モニカの辺りだけは砕いても砕いても、渦潮の水がモニカに触れる度に凍り続けるようになっている。
これを持続させるために、俺とミレイはこの微細な魔力制御を続けているのだ。
「カリーナ!今っ!!」
「お姉様!!」
ソフィアの呼び掛けにカリーナが物陰から出て来て、モニカに呼び掛けた。
「ア"ア"ァ"ァ"!!」
カリーナの言葉にモニカは突然苦しみ始めた。
「お姉様!!しっかりしてください!!お姉様!!」
「ア"ア"ア"ア"ァ"ァ"ァ"!!!」
カリーナはギリギリまで近付き呼び続ける。それに比例するようにモニカは苦しんでいく。
「にゃっ!?」
「っ!?逃げてっ!」
「カリーナっ!!」
モニカから黒い魔力のようなものが身体から滲み出るように溢れだし、メイルストロームを打ち消した。
「っ!?お姉様!!」
モニカの鋭く尖らせた指がカリーナの顔に吸い込まれていく。カリーナは叫びながら目を瞑る。
「・・・・・・?」
いつまで経ってもやって来ない死に、カリーナはうっすらと目を開けた。
そして、カリーナが襲われる様子を見ていた俺達も、目の前の光景に言葉を失った。
いつの間にか、カリーナの前に立ち阻む者の姿があった。
「アラン・・・さん?」
それは森の屋敷で死んでいたはずのアランの姿だった。
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