ルマルタ襲撃と過去の幻影
第62話
「えっと、どういうことですか?」
いきなり力を貸してほしいと言われても困る。
「先程、朝食を準備するために厨房にいるコックの方へと出向いたのですが、そこで嫌な話を聞きましたの」
「嫌な話?」
カリーナはいきなりソフィアの方を向きながら、頭を下げてきた。
「お願いしますわ。ソフィア、貴方の力が特に必要なのですわ」
「・・・私ってことはまさか・・・あれですか?」
「はい。アンデッドが町外れの森に多数目撃されているらしいですの」
フォルティスの森に続いてまたアンデッドか。あいつらは対処出来る人間が少ないからな。
「わたくし1人では恐らく魔力切れを起こしてしまいますわ。なので、ソフィアの力を借りたいのです」
カリーナも光属性の攻撃魔法は使える。というよりソフィアの光属性の攻撃魔法の師匠のようなものだ。
だけど、魔力量に決定的な差があるのはフォルティスの森でわかっている。
頼んで来るということは、それだけ深刻になっているということだろう。
「ココナも手伝うよ。ソフィアにこれに魔力を入れて貰えれば戦えるから」
ココナはブレスレット型の魔法具を見せてくる。
これはフォルティスの森で使っていた魔法具だ。魔力を入れられるようになっており、注入した魔力を装着した部分を纏うことが出来るのだ。
一応この魔法具には『魔技の腕輪』という名前があるのだが、ジャネット何も教えていないようだ。
「・・・アンデッド相手なら・・・足止めは出来ます」
ミレイも協力的だ。確かにミレイのギフト『氷結』ならアンデッドに限らず魔獣相手でも足止め出来る。
「皆さん、ありがとうございます」
カリーナが皆に頭を下げた。
さて、それじゃあ現状の確認と作戦を立てるとしようか。
☆ ☆ ☆
情報収集をするためにルマルタにあるレジスタンスの建物にやってきた。ここではレジスタンスの資格を持つ者に任務を受け付けや報告等をする場所である。
学校と似たようなシステムだが、ここでは学生証ではなく、レジスタンスのメンバーカードで管理をしている。
因みにこのメンバーカードは更新期間が3年事に設けられている。理由は強くなり満身して、性格が歪んでしまうものが現れることがあるからだ。
実際にレジスタンスのメンバーが魔法犯罪を犯すようになったこともある。最近だと学生だったが、ヘンリー・ヘイグ。先生をしていたレジーノ・ユバルとかだ。
更に任務の受注が1年間無かったら、そのメンバーカードは無効となってしまう。理由は幾つかあるが、1番の理由は任務中に連絡無いまま亡くなってしまうことだろう。
こういった任務の受注、カードの更新等を行う場所だということだ。
後は隣に酒場が設けられていることが多いぐらいか。俺は酒は好きじゃないからこの匂いはきつい。特に猫だから嗅覚が上がってるし。
そして、ここには学校とは違い、強そうな男の人が多い。女性もいるにはいるが、かなり少数だ。女性は裏方や書類仕事に回ることが多いからな。
そんな中、ソフィアを初めとする4人の少女達がいると、周りからはかなり視線を集めてしまっている。
「あの、すみません」
「はい、何でしょうか?」
ソフィアは受付にいるお姉さんに声を掛ける。ここの受付嬢をやっている人だ。
「最近のアンデッド関連の情報とかありますか?」
「アンデッドですか?任務としてありますよ。まぁでも、受けてくれる方はいないですけどね」
お姉さんは苦笑いをしながら言う。アンデッドは光属性の攻撃魔法を扱えないと倒すことは困難だ。なので、ここでもフォルティスの町同様に、受ける人がいないのだろう。
「ちょっといいです?」
そこにカリーナが割り込んできた。
「あなた、なんで何者かもわからないわたくし達にそんな情報をいきなり与えているのですか?」
ああ、確かにカリーナの言う通りだな。この人もレジスタンスなのに、こんなあっさりと情報開示してしまうと、情報管理が出来ていないと言われてもしょうがないことになる。
「何者か分からない・・・ですか。侮ってもらっては困りますね。私はあなた達のことは知ってますよ」
「・・・そうなんですの?」
「ええ。まずあなたはこの町の町長の娘、カリーナ・メルエム様、オッドアイの子がソフィア・ミールさん、金髪ツインテールの子がココナ・ユースフィアさん、そしてエルフ族の子がミレイ・フィンスさんですよね」
「え、ええ。その通りですわ」
まさか全員の名前と顔を一致させてくるとは思っていなかったカリーナは顔を引き攣らせた。
「あの、なんで私達のことを知っているのですか?」
「カリーナ様はこの町に住んでいればわかります。目立ちますからね」
「そ、そうなんですの?」
本人に自覚はないようだが、いつもピンク色のゴスロリファッションをしているカリーナは町中では・・・いや、どこにいても目立っている。
「ソフィアさんとココナさんは1年生ながら難易度の高いクエストを幾つも成功させてますし、あのディケイル様からもお墨付きをもらっていると噂になってます。ミレイさんはエルフ族ってだけで注目を集めてますから」
なるほどな。受付をしているとそういった情報も入ってくるのか。
「で、話を戻します。アンデッドはここから西にある森で最近になって多く目撃されています。その影響なのか森に住む魔獣も動きが活発になっており、今は侵入規制を設けようと話が出てき始めたところですね。レジスタンスで光属性の攻撃魔法を使える者を緊急要請はしていますが、数が少なくこの付近にはいないと返答をもらい、現在待機中といったところです」
「それ、私達が手伝うことって出来ますか?」
ソフィアが少し遠慮しがちな感じで聞いた。
「ええっと・・・カリーナ様は光属性の攻撃魔法を使えると聞いていますが、他の方は」
「私は使えます。光属性の攻撃魔法」
「そうなんですかっ!?」
受付嬢は立ち上がって前のめりになって叫んだ。
「は、はい。フォルティスの森に出たアンデッドも私達で討伐しましたし」
「ちょっと学生証を拝見させてもらってもいいですかっ!?」
「は、はい。どうぞ」
学生証には討伐した魔獣が記録されている。
メンバーカードにも同じ機能が付いているから、同じ要領で調べられるのだろう。
「アンデッド・・・討伐数167体、このイブリス?って魔獣、見たことも聞いたこともないので気になりますが、これだけアンデッドを討伐出来ているのなら問題ありませんね。というか、討伐している魔獣の数も凄いですが、その種類も・・・・学生とは思えませんね」
そういえばイブリスの情報ってどの程度広がってんだろう。ってか、あの時アンデッドをそんなに討伐していたのか。
「わかりました。これだけの実力があるのなら、こちらからもお手伝いをお願いしたいところです」
「では」
「はい。私、受付嬢シエル、喜んで協力を致しましょう」
俺達はルマルタのレジスタンスからの依頼という形で、アンデッド討伐をすることになった。
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