第61話
「ここですわ」
「わぁ~・・・」
「綺麗・・・です」
「いつもよりおっきく見えるね」
森を抜けて、案内されたのは白い花が一面に咲き誇る岬だった。そして、岬からは太陽が海に沈んでいくのがよく見えた。
「こんなところがあったんですね」
「ええ。ここはわたくし達のとっておきの場所ですの」
「へぇ~・・・」
ソフィアは目の前の景色に感動していた。
(・・・ん?わたくし達?)
俺はカリーナのその言葉が何となく気になった。
「・・・様、わたくしにはこんなに素敵なお友達が出来ましたわ」
「何か言いました?カリーナ」
「いえ、何でもありませんわ」
カリーナの表情が少し悲しそうに見えたのは俺の気のせいか?
そして、俺達は無言でこの素晴らしい景色を見続けていた。
(ん?あれは・・・)
俺は後ろの森から視線のようなものを感じて振り向いて見ると、薄ピンクの長い髪の女性が木の影に立っていた。
(前に1度見たことあるな。確か・・・そう。フォルティスの森のアンデッドを討伐した日だ。皆で夕食を取る前にソフィアが話し掛けた俯いて泣いていた女性だ)
「さぁ!皆さん!完全に日が落ちてしまったら暗くて危ないですので、そろそろ帰りますわよ」
カリーナが終わりの時間を告げる。
俺が一瞬カリーナの方に視線を外したら、先程の女性の姿は無くなっていた。
(誰だったんだ?)
俺はその女性が気になりつつ、ソフィア達は少し名残惜しさを感じながら帰路に付いた。
先に歩いていたソフィアはココナとミレイと話していて気が付いていなかったが、ソフィアの肩に乗っていた俺は後ろを向いた時に見てしまった。
最後尾を歩いていたカリーナが一筋の涙を流して岬の方へとお辞儀をしているのを。
☆ ☆ ☆
「・・・うぅ、いたい」
「・・・・・こ、こんなはずじゃ」
翌朝、宿屋の部屋の中に苦しそうな声が聞こえてくる。
「昨日の元気さが嘘のようですわね」
「ソフィアはこうなると予想はしていたけど、ミレイもなんだね」
苦しそうな声を出しているのはソフィアとミレイだ。
「こ、こんなに痛くなるなんて」
「か、完全に予想・・・外です」
2人はベッドから起き上がろうとしているが、なかなか起き上がれないでいた。
「はぁ、筋肉痛でここまで痛くなるなんて、普段から運動していない証拠ですわね」
そう。2人は昨日の海遊びが原因で全身筋肉痛になってしまったのだ。
「はぁ、はぁ、んっ!」
「んっ、はぁ、んんっ!」
2人は息が荒く、力を入れて起き上がろうとする。しかし、身体は言うことを聞かずに、腕とかプルプルとさせて、起き上がれずにいた。
「・・・・・・・」
「んん~・・んぁ」
「んっ!んっ!」
何か変に艶かしい声に聞こえてくるな。取り敢えずソフィアだけでも少し楽にさせるか。
「り、リアン?」
「にゃ」
俺は俯せに倒れているソフィアのワンピースの寝間着のスカートの下から入り込む。いつも通り上から尻尾だけ入れようとしたが、服が捻れていて上手く入れられ無さそうだったのだ。
「ふぁっ!?り、リアンっさ~っ!?」
ソフィアは何かに耐えるように口を自分の手で押さえた。
俺はそんなことを気にせずに、ソフィアの蒸れるワンピースの中を進み、白いパンツに包まれたお尻をプニプニとさせながら越える。
(俺の理性が持てばいいが)
ソフィアは汗ばんでいたこともあり、ワンピースの中は女の子の匂いで充満している。
そんな中、俺は何とかソフィアの下腹部に触れられる位置にやって来れた。
「っ!?」
俺が魔力制御を行うと、ソフィアほビクッと身体を震わせた。
(やっぱり・・・筋肉痛の時は魔力の行き渡りが不十分なんだよな)
俺はゆっくりとソフィアの魔力をソフィアの手の指先から足の指先まで、魔力を浸透させるようにしていく。
「ふぁう・・・・・・あれ?痛くない」
惚けた顔のソフィアがむくりと起き上がった。
「にゃにゃっ!!」
突然起き上がられたもんだから、俺は重力に逆らえず落ちそうになり、咄嗟に何かを掴んだ。
「ふぇっ!?」
だが、その掴んだ物と一緒に、ワンピースの中からベッドに転がり落ちた。
「・・・にゃ?」
外に出られたことで、俺が何を掴んでいたか理解した。
そして、見上げたらソフィアの異性に見られてはいけない部分が、目の前に広がっていた。先程の魔力制御のせいなのか、水滴みたいのも見える。
「~~っ!?!?」
ソフィアは足を閉じて少し距離を取り、俺を睨んできた。
「・・・・・・見た?」
「・・・・・・にゃう」
俺はソフィアから視線を逸らして窓の外を見た。
「うぅ~~~・・・」
「ソフィア、いいではありませんか?別に見られても。リアンは猫ですわよ?」
「そ、それは・・・その」
俺が人間のリアン・ユーベルと言えないソフィアは黙り込んでしまう。
ソフィアは静かに俺を抱き上げて顔を近付けてきた。そして小声で呟く。
「今見たものは忘れてください。リアン様」
「にゃ」
下手な事態になるのは勘弁なので、ここは素直に頷いておく。
「ど、どうやって・・・痛みを消したの?」
未だに痛みに耐えているミレイから、そんな質問が投げられる。
「えっと・・・ミレイさんにもやってあげられる?」
「にゃう」
他人の魔力制御は出来ないからそれは無理だ。なので俺は首を横に振る。
ソフィアとは使い魔契約しているから出来るだけだからな。
「えっとね、魔力を身体の中に循環させる感じで」
ソフィアは自分が感じたことを教えるようだ。
だけど、自分自身の魔力を自分の身体の隅々まで浸透させるのは難度が高いはずだ。
「魔力を・・・循環・・・・・」
ミレイは目を閉じて集中を始める。すると、ミレイの周りに魔力の光がぼんやりと見え始めた。
(凄い魔力量だな。ここまで感じ取れるまでとは。流石はエルフ族といったところか)
エルフ族は魔力の保有量が多い者が多いと聞く。ミレイもかなり魔力量は多いようだ。
「・・・ん、少しは楽になったかも・・・です」
ミレイはゆっくりと起き上がった。
「動けるのならそろそろ朝食にしましょうか。わたくしの方で用意はさせて頂きますわ」
カリーナはそう言って朝食の手配をしに行った。
「ココナは海で泳いでくるね」
「え、朝から?」
「朝だからだよ!朝ご飯用意出来たら教えてね。っとう!」
ココナは昨日と同様に2階の窓から飛び出していった。器用に空中で服を脱いで、下に着ていた水着姿になる。
「・・・凄い元気です」
「なんか身体強化の魔法を使えるようになってから、行動がおかしくなってきた気がする」
ソフィアの言葉通りだと俺も思ってしまった。
「ミレイさん、私達は着替えてのんびりとしましょうか」
「・・・うん」
ソフィア達は俺の目の前で服を脱ぎ始める。が、ソフィアは俺の存在を思い出したのか、ワンピースのスカートの裾をお尻が見える位置の状態で硬直して頬を真っ赤にして睨んできた。
(そういやパンツはまだ俺が持っていたままだった)
俺はパンツを置いて、ソフィア達に背を向けて着替え終わるのを待つことにした。
☆ ☆ ☆
しばらくしたらカリーナが戻ってきて、朝食の準備が出来たことを教えてくれた。海で遊ぶココナを呼び戻し、俺達は宿屋の食堂で朝食を食べることになった。
「はぁ・・・」
美味しい朝食を食べている中、ため息をつく人物がいた。
「どうしたんですか?カリーナ。さっき戻ってきてからため息が多いですけど」
「あら、ごめんなさい。そうだったかしら?」
「うん、さっきから何回もため息をついてるよ」
「何か・・・あったんですか?」
「・・・・・・・・・・」
カリーナは静かに目を閉じる。そして、少し経ってから目を開けて皆の顔を見渡して話始めた。
「皆さんのお力をわたくしに貸しては頂けないでしょうか?」
カリーナは真剣な眼差しでそう言ってきたのだった。
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