第60話

「こんなのいた!!」

「えっ!?な、なんでそんなの獲ってるんですの!?」

「凄い・・・です」


 遠くではココナが何か捕まえたらしく、カリーナ、ミレイの3人で騒いでいる。


 俺とソフィアはというと、砂浜にタオルを敷いて、2人並んで座り、そんな3人の様子を見ていた。


「リアン、疲れたね」

「にゃあ」


 慣れない泳ぎなんてしたもんだから、俺もソフィアもかなり疲弊していた。


「にゃ」

「ん、リアン?」


 俺は誰かが近付いて来るのを察して、ソフィアの近くに行き、尻尾をソフィアの下腹部に這わせる。


「なぁ、俺達と遊ばない?」


 日焼けをしたチャラそうなお兄さんがソフィアに声を掛けてきた。


「結構です」


 ソフィアは今までと同じようにばっさりと拒否をする。


 実はここで休んでいる時以外でも、ソフィアが1人になった時に、男の人がよく声を掛けてくるのだ。所謂ナンパというやつだ。


「そんなこと言わずにさ」


 だが、今回の男は諦めが悪く、いきなりソフィアの肩に手を伸ばそうとしてきた。


「・・・エアロブラスト」

「ぎょえぇぇぇぇぇぇ・・・・・・」


 こっそりと俺が魔力制御をしたエアロブラストで、男は海の方へと綺麗に弧を描きながら吹き飛んで行った。


「ありがとね。リアン」

「にゃあ」


 ソフィアもエアロブラストは使えるが、吹き飛ばす方向や、威力等の細かな調整はまだ出来ない。なので、代わりに俺が調整しているのだ。


 ふと視線を感じ、周りを見てみると、ソフィアの魔法を見ていた人達がこちらを見ながら、ひそひそと話しているのが聞こえる。


「・・・・・・私、やっちゃった?」

「・・・・・・にゃう」


 まさかあの程度の魔法でこんなに注目をされるとは思っていなかった。


(いや、一般人はファイアボールですら撃てない人ばかりだったな。フォルティスの町では魔法は当たり前だから懸念していた。なら、この反応は当然なのか)


 俺も周りが魔法を使える人ばかりだったから、感覚が麻痺しているようだ。


「おい!俺達の仲間に何しやがんだ!!」

「っ!?」


 すると、さっきのナンパ男の仲間らしき人が5人程でソフィアを囲むようにして怒鳴り付けてきた。


「・・・・・・・ありがと」


 ソフィアは最初は少し怖がっていたが、俺がすぐに魔力制御を行い、いつでも対処できるようにすると、少し安心した顔をする。やはりまだこういった男の人に慣れていないのだ。


「お前みたいなガキがあんな魔法使える訳がねぇ。何かインチキしたんだろ!!」

「そうだそうだ!!」

「オレ達がこの辺りで有名なの知らねぇみてぇだな」


 そう威勢のいいことを言いながらも、男達はソフィアに詰め寄ろうとはしない。やはり、さっきの魔法に恐怖しているのだろうか。


 そこでふと気付いたが、いつの間にか俺達の周りにいた他の一般人の姿がなくなっていた。

 さっきのあの視線はたぶんこの男達の仲間をやってしまったからもあるのだろう。そして、予想通りのことが起きたからその場から逃げた、と。


 でも誰もいなくなったのなら、やり易くなった。


「ん・・・いいの?」

「にゃあ」


 ソフィアは俺が構築した魔法に戸惑いを見せる。


「ふぅ・・・」

「おいっ!!何か言ったらどうだ!!!」

「トルネード」


 男の注文通りにソフィアが一言言う。

 すると、ソフィア中心に竜巻が巻き起こる。


『ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!!』


 竜巻は男達を5人全て巻き上げ、空高くまで持っていく。


 そして、最後は海の方へと弾き飛ばし、最初のナンパ男の後を追わせた。


 竜巻が収まると、中心にいた俺とソフィアは砂を被ったが、何もなかったように座っていた。


「うぅ、口の中に砂が・・・」

「にゃう」


 俺も身体の毛に砂がかなり入り込んでしまったようだ。


「リアン、洗いに行こ」

「にゃあ」


 俺はソフィアに抱き抱えられて、海の方へ歩いて行った。この様子を離れたところから色んな人達が信じられない物を見たという顔で見ていた。


(うーん・・・水着で抱えられるとソフィアの胸が直にって、あまり意識しないようにしなければ)


 そして、海に辿り着くと、ココナ達がやってきた。


「ソフィア!大丈夫ですの!?」

「うん。大丈夫」

「おもいっきり吹き飛ばしてたね」

「そ、そうかな?」

「流石・・・です」


 ソフィアにあった出来事は皆遠くから見ていたらしい。

 まぁ、あれだけ派手に吹き飛ばせば目立つか。


「それよりソフィア」

「なに?ココナ」

「リアンの足で水着ずれてるよ」

「えっ!?」「にゃっ!?」


 俺も慌てて自分の足を見てみると、ソフィアのビキニの上の水着の紐に足を引っ掛けて、ソフィアの胸を露出させていた。


「きゃっ!!」「に"ゃ!?」


 ソフィアは俺を抱えたまま水に潜り身体を隠す。結果、俺は海の中に沈められた。


「あっ、んっ!り、リアン!んあ、暴れっないでっ」


 俺はいきなりのことでソフィアの腕の中でもがいていた。


「いや、ソフィアが沈めてるからじゃ」

「ふぇ?ああっ!!ごごごごめんなさい!!」


 ココナの指摘にソフィアは俺を抱えたまま立ち上がった。


「にゃぁ・・・にゃぁ・・・にゃっ!?」


 俺は助かったことを理解して、息をついていると、目の前に広がっていた光景に驚いてしまった。だって、ソフィアの胸が隠されることなく晒されているのだから。


「ソフィアさん・・・水着・・・取れてますよ」

「え?・・・きゃあっ!!」


 今度はミレイの言葉でソフィアはまた俺を抱えて海に潜り身体を隠した。


「ソフィア!リアンが溺れるよ!!」

「ああ!!ど、どうしよう!?!?」


 身体を隠したい。でも隠すとリアンが溺れる。ソフィアはそんな葛藤をして混乱していた。


「・・・リアン、離せば?」


 ミレイのその一言があるまで俺は、ソフィアの胸に翻弄され続けられるのだった。


(ソフィアの胸・・柔らか・・・過ぎ・・・)


 男の俺にとって地獄のような天国のような時間だった。


 その後何とか落ち着き、皆でまた遊び始めるのだった。


 そして、日が傾き始めた頃。


「皆さんに見せたいものがあるんですの」


 カリーナのそんな言葉を聞いた俺達は、カリーナの案内に付いていくのだった。

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