第59話

「ソフィアさん、可愛い・・・です」

「ミレイさんはその・・・過激じゃない?」


 2人が更衣室で水着に着替えて出てきた。


 ソフィアは薄水色のフリルが付いたビキニだ。可愛らしさと清楚さが出てて、ソフィアによく似合っている。


 そして意外なのがミレイだ。

 こう言ってはなんだが、ミレイはかなりのお子様体型で、性格も物静かで大人しい性格だ。

 それに反して水着はその・・・水着といえるのか?


 ミレイの水着は紐のような物を身体に最低限隠すように巻き付いているような水着だ。色々と際ど過ぎて、とてもじゃないが直視が出来ない。子供が着ているように見えるので、より犯罪に近い臭いがする。


「・・・そう?私の種族の・・・水着なんだけど」


 そうか。ミレイはエルフ族だから・・・・え?エルフ族ってそんな際どい水着を皆着てるのか?


「で、でもその、ずれて見えちゃうんじゃ」

「これ・・・魔法でずれないようになってる・・・」


 ミレイは胸元の紐を引っ張るが、重要な箇所から水着が離れることはなかった。


「それならいいの・・・かな?」


 いや、よくないとは思うぞ。


 そこで俺はやたら静かだということに気が付く。


(そういえばカリーナはどうしたんだ?ソフィアがこんな格好をしているのなら飛び付いて来そうなもんなんだが)


 ソフィア達と一緒に更衣室に入って行ったカリーナの姿がなかったのだ。


 そこで俺は何やら赤い液体が更衣室の床を濡らしているのを見つけた。

 女子更衣室なので少し躊躇われたが、そっと更衣室に足を伸ばしてみる。

 そこには鼻から血を流して倒れるカリーナがいた。


(・・・え、大丈夫なのかっ!?これっ!?)


「し、しあわせ・・・しあわせですわぁ・・・」


 赤い水着なのか分からないが、カリーナは少し面積が小さめな赤いビキニ姿だ。


「リアン様、覗いちゃダメですよ」

「・・・にゃあ」


 いつの間にか少し怖い笑顔をしたソフィアが、俺の後ろに立っていた。



 ☆     ☆     ☆



 カリーナが復活し、俺達は浜辺に向かった。


(って!?あつっ!!熱過ぎるだろっ!!)


 砂浜は太陽の光でかなり熱くなっている。ソフィア達はサンダルを履いているので、大丈夫なようだ。


「きゃっ!ちょっとリアン」


 俺は耐えられなくなり、ソフィアの肩に飛び乗ろうとした。しかし、足場が砂だったのが悪かったのか、予想より低い跳躍になってしまった。


 結果、俺はソフィアの胸の谷間に挟まるような感じ飛び付いてしまう。


「足が熱いんじゃないのですの?』

「あ、そうか」


 ソフィアはそれがわかると、俺を抱っこしてくれる。

 すると、余計に俺はソフィアの胸に挟まれる形になった。


(って、片足がソフィアの水着に入ってっ!?)


「きゃっ、り、リアン、暴れないで」


 ソフィアは俺を抱き直し、ずれた水着をそそくさと直す。


「おーい!こっちこっち~!!」


 歩いていると、遠くからココナが沖合いで手を振ってきていた。


「あんな沖合いに・・・」

「ここ・・・遠浅みたいです」


 そう言うと、ミレイはジャボジャボと海の中に入っていく。


「・・・にゃ?」


 だが、ソフィアは海面が足首辺りで立ち止まってしまう。


「ソフィア、どうしたんですの?」


 隣にいたカリーナが立ち止まったソフィアに話しかけてくる。


「・・・・・・私、・・・ない」

「・・・え?今なんて」

「私、泳げない」


 ソフィアは恥ずかしそうに呟いた。


「そうなんですの?ならわたくしが泳ぎを教えて差し上げましょうか?」

「い、いいんですか?」

「ええ。ソフィアと手を無条件で繋げますし」


 こうして欲望丸出しのカリーナの水泳教室が始まった。


 俺は海面から出ている近くの岩の上に置かれる。


 そして、ソフィアとカリーナは腰辺りの深さまで移動した。


(ここからならソフィア達は見えるから大丈夫か)


 ソフィアは最初、水に馴れるために顔を海面に浸けるところから入るそうだ。

 ソフィアは水が怖いわけではないらしいので、これはあっさりとクリアする。


 そして、カリーナが手を引いた状態でばた足をやることになった。


 だが、ソフィアは進まずにすぐに沈んでしまう。


 それから何回も同じことを繰り返していくことで、次第にばた足で前に進むようになってくる。


(へ~、運動音痴の割には思ったより早く出来るようになったな)


 俺はそんな様子をのんびりと眺めていた。

 だが、ここで問題が起こった。


「にゃ?」


 波飛沫が上がり、足に水が掛かったのだ。さっきまで平気だったのにと思い、周りを見てみる。


「にゃっ!?」


 足場の岩が海の中に沈み始めていた。


(やばい、海面が上がってるぞ。俺、猫の姿で泳いだことなんてないぞ)


 人間の時は泳げたが、猫だと勝手が違ってくるはず。


「にゃあ!!にゃあ!!」


 とりあえずソフィアに助けを求めるために出来るだけ大きな声で鳴いてみる。

 しかし、ソフィア達はばた足の練習をしているので気付いて貰える気がしない。


(本格的にやばいぞ。ソフィアが近くにいないと、ただの猫でしかない。誰か・・・誰か近くにいないか)


 俺は周りを探してみるが、誰もいない。

 その時、大きな波が俺を襲い、俺は軽々と岩から落とされてしまった。


「にゃっ!?にゃっ!?」


 何とか手足でもがくようにして動かして、息は出来ているが、そう長く持ちそうにない。


(まずっ!?か、海水がっ)


 海水が口の中に入り始め、俺は更に混乱していく。


 そして、その俺は次々とやってくる波や潮の流れで沖合いに流されていく。


「リアン!!!」


 そんな声と共に俺は誰かに抱かれ、九死に一生を得た。


「り、リアン!っあぷ、だ、大丈夫!?っんく」


 助けてくれたのはソフィアだった。

 まだばた足しか出来ないソフィアが沖合いまで俺を追いかけ、助けに来てくれたのだ。


「ソフィア!!大丈夫ですの!?」


 遠くからはカリーナの声がする。

 どうやってソフィアが泳げるカリーナを置いてきたかは分からないが、ソフィアと接触しているなら助かる。


「あぷっ、り、リアン様!?」


 こんな時に俺はソフィアの魔力制御を勝手に行う。

 突然のことだったので、ソフィアも俺のことを様付けで呼んでるし。


「あぷっ、え、エアロブラスト!!」


 ソフィアは俺の魔力制御でエアロブラストを発動させた。

 海の中で発動させたので、エアロブラストの衝撃で海が爆発し、水飛沫が高く上がった。っていうか、俺が慌てていたせいで、威力が大きくなり過ぎている。


 俺とソフィアはその衝撃で一気に浅瀬まで吹き飛ばされ、大きな水飛沫を上げて戻ってきた。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

「にゃ・・・にゃあ」


(い、生きて帰って来れた)


 俺がそんな事を思っていると、俺の頭を挟むように柔らかい何かが、落ちてきた。


「リアン様・・・いきなり過ぎ」


 ソフィアが少し前屈みになったので、ソフィアのピンク色の先端を持つ柔らかいものが、俺の方に来たのだ。って待て。ピンク色だと?


 俺はハッとなり確認すると、先程のエアロブラストの衝撃で、ソフィアの上の水着が首の辺りまで捲り上がっていた。


「にゃっ!!」


 俺は他の誰かに見られないように、ソフィアの胸の先端を両手両足を使って隠した。その際に少しコリっとした感触とポヨンという感触が同時に伝わってくる。


「んっ!?り、リアン様っ!?」


 突然の行動にソフィアはガバッと姿勢を上げる。って、そのままじゃまずい!!

 だが、猫の俺には姿勢を正した胸を隠してあげることは出来ず、ソフィアの胸は観衆の目に。


「ソフィア・・・さん。ずれてますよ」


 すると、いつの間にか側にいたミレイがソフィアの水着を正してくれた。


「~っ!?あ、ありがとう、ございます」


 そこでソフィアは自分の胸が丸出しだったことに気が付いたようだ。

 そして、俺のことを顔を真っ赤にしながら睨み付けてきた。


 俺はそれに気が付かない振りをして、周りを見渡す。すると、一部の海が赤く染まっていた。


 よく見てみると、カリーナが鼻血を出して、ぷかぷかと仰向けで浮かんでいた。


「そ、ソフィアのおっ・・・綺麗過ぎますわぁ」


 その後、ソフィア達もカリーナに気が付き、一緒に救助をするのだった。

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