第51話
ソフィアはコロシアムのアリーナに立つ。
相手も反対側から出て来て、ソフィアと向かい合う形で立った。
相手は女子生徒のアレクシア・シャナベル、確か貴族の娘の1人だ。
この国、フォルタールの貴族は親の権力にしがみつき、見栄っ張りな者が多い。
それはフォルタールの首都から離れているここの町、フォルティスでもいる。
数はそこまで多くはないが、目を付けられると色々と厄介なのだ。
因みにフォルタールの首都はそのままフォルタールという名前の町と城がある。ここから北方面へ2週間以上は馬車で移動となるので、結構離れていたりする。
そして、貴族であるアレクシアはソフィアを見下すような視線を向けている。
でも、ここまで生き残っているということは、それなりの実力をもっているのだろう。
「ソフィア・ミール!貴方の噂は聞いています。が、所詮庶民の中でだけのこと。それを思い知らせて上げます!」
「はぁ」
ソフィアはアレクシアの言うことに少々呆れていた。
まぁ、俺もこんなことを言う人がいるとは思っていなかったが。
とりあえず今回俺は、ソフィアの肩でスタンバイはしておくが、基本的に静観しようと考えている。これもソフィアが成長するための一環だ。
1回戦目は相手に使い魔がいたので、一緒に戦ったが、2回戦目と今回は相手に使い魔がいない。
それなら今のソフィア1人での実力を計るのには丁度いいのだ。
実は2回戦目の相手はソフィアの『障壁貫通』のギフトのことを知らずに、障壁で防ごうとして一発でノックアウトしてしまったのだ。
そんなこともあったし、流石に今回の相手はソフィアのギフトの効果は知っているだろう。
「それでは・・・始め!!」
「ホワイトミスト!」
アレクシアは開始早々、水属性魔法のホワイトミストを使ってきた。
ホワイトミストは妨害魔法の一種で、周囲の視界を遮る白い濃い霧を発生させる魔法だ。
だが、相手も同じ条件のはず。
ソフィアは視界が見えなくなり、辺りを警戒し感覚を研ぎ澄ます。
ソフィアは気が付いていないようだが、猫の聴力を持つ俺には、アレクシアが横に回っていることに気が付いている。
そこから魔法を放つのかと思いきや、アレクシアはソフィアに向かって駆け出した。
この動きは完全にソフィアの位置を捉えている動きだ。
「っ!?」
ソフィアも足音でアレクシアの位置を掴んだ。
それと同時にアレクシアの方を向いて、両手を交差させて、守りの体勢を作る。
「はぁっ!!」
白い霧の中から、黒いストッキングに包まれたアレクシアの美脚が襲い掛かってきた。
ソフィアは近接戦闘は苦手だ。というか運動が全般的に苦手だ。
だが、今回の攻撃はちゃんとクロスした腕に当たり、後ろに軽く吹き飛ばされるだけで済んだ。顔は痛そうにしていたが。
「まだいきますわよ!」
アレクシアは更に踏み込み、ソフィアに迫って来る。
「エアロブラスト!」
「くっ!」
ソフィアはアレクシアが近付いてくるのを予測していたのか、既に魔力制御をしていたエアロブラストで、自らの目の前に暴風を生み出しアレクシアを吹き飛ばした。
アレクシアは宙返りをしつつ上手く着地する。
「エアロショット!」
今のエアロブラストで霧が吹き飛ばされ、少し視界が開けた。
相手を捕捉出来ている内にと、ソフィアはエアロショットで追撃を仕掛ける。
アレクシアは魔法障壁を張らず、下手な壁系の魔法も使わないで、不可視の風の弾をアクロバティックな動きで避けていく。
「アクアグイス!」
「きゃっ」
エアロショットを避けながらアレクシアは水属性魔法のアクアグイスという魔法を使ってきた。
アクアグイスは水を鞭のようにして自らの手から出し相手を攻撃、もしくは捕縛する魔法だ。
アレクシアから伸びた水の鞭はソフィアの身体に巻き付く。
そして、アレクシアは身動きを封じたソフィアをそのまま鞭で引き寄せる。
「止めです!」
アレクシアは身体強化の魔法を強め、止めの強い蹴りの構えを取る。
ソフィアは身動きを封じられて、アレクシアのアクアグイスにより、引き寄せられていく。
だが、そんな状況でもソフィアは冷静だった。
「ディスチャージ!」
「きゃあ!!」
ディスチャージは風属性魔法の1つで、自分中心に狭い範囲に放電を起こす魔法だ。
アレクシアの場所はディスチャージの範囲外だったが、アクアグイスを通してアレクシアを感電させたのだ。
アレクシアの集中力が途切れ、水の鞭が霧散する。
「エアロハンマー!」
感電しているアレクシアに向かって、エアロハンマーを上から叩き付けた。
アレクシアはそのまま地面に潰され、動かなくなる。
「勝者、ソフィア・ミール!」
ソフィアはこうして3回戦を勝つことが出来た。
そして、ソフィアは倒れているアレクシアに近寄り、ヒーリングを掛ける。
「大丈夫ですか?」
「・・・ソフィア・ミール」
アレクシアは悔しそうにソフィアのことを見てくる。
「私の完敗です。ですが、次は負けません」
「はい、私だって負けませんから。・・・あ」
アレクシアは立ち上がりながら、ソフィアと再戦の約束をする。
貴族である割にはなかなかいい奴なのかもしれない。
ソフィアもそれに答えるが、ソフィアが注意しようとした時に、悲劇は起こった。
すとん
「~~~~っ!?」
アレクシアのスカートが地面に落ちたのだ。
戦いの最中に止め金部分が壊れたのだろう。
アレクシアの黒いストッキングと黒い下着が、周囲に晒される。
男子生徒からは歓声が大きくあがっていた。
「お、覚えてなさい!!」
アレクシアはスカートを押さえたまま、アリーナから出ていった。
「私のせい?」
「にゃあ」
それもあるかもしれないが、アレクシアはあれだけ激しく動いていたから、自業自得かもしれない。
でも、これで今回の中間試験トーナメントのベスト4が決まった。
主席のアレイン・クリフォード。
次席でエルフと呼ばれる種族の女子生徒、ミレイ・フィンス。
かなりの筋肉質な男で火属性を得意とするカルヴィン・ルノア。
そして、ソフィアだ。
昼休みを挟んでから準決勝が始まることになる。
誰に当たるかはまだわからない。
とりあえず、しっかりと昼食を取って、準決勝に備えておこう。
そして、俺達は食堂に向かう。
(あれ?ソフィアは昼を購買で買って移動を始めたぞ?)
ソフィアは購買でパンを多めに買って移動を始めた。
俺はただソフィアの後ろに付いていく。
やってきたのは医療室だ。
(そうか。ココナの様子を見に来たのか)
中に入ると、ココナはすでに起きており、ソフィアの腕の中にあるパンに飛び付いた。
なんでもお腹がものすごく減っていたとか。
まぁでも、とりあえずは元気そうで良かった。
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