始まる試験!目指せ優勝!!
第48話
アンデッド討伐をして、皆で喫茶プラリアで食事をした日から1週間程が経った。結局、俺とソフィアがあの日に見た消えた女性についてはわかっていない。俺だけじゃ調べることも難しいし、俺の中では保留となっていた。
そしてあの後、レジスタンスが森を調査し、森にアンデッドは出なくなったことが確認された。こうして、カンポ村と町を結ぶ街道は使用されるようになった。
旅人だというカリーナは、ソフィアと友達になれたことが嬉しかったらしく、しばらくはこのフォルティスの町に滞在することになった。
なんでもいい仕事場を見つけたらしいが、詳しくは何も聞いていない。ただ、お店の人からスカウトされたとか。
とまぁ、ここ1週間は以前のような日常に戻っていた。
そして、ソフィアとココナにはフォルティス教育機関学校の中間試験と呼ばれるものが近付いていた。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
今はジャネットの個室でソフィアとココナは勉学に励んでいた。
個室にはかりかりとペンを走らせる音が響いている。
俺は最近設けられた俺(猫)専用のベッド(箱にクッションが置かれているだけ)で静かに寝て過ごしていた。
「・・・・・ソフィア」
「・・・・・・なに?」
「ここ・・・なんだけど」
ココナは勉学は苦手らしく、しょっちゅうソフィアに質問をしていた。
ソフィアは勉学は出来る方なのだが、集中している途中で話しかけられるのが嫌なのか、少し声がきつく聞こえてしまう。
「・・・これはこうして」
だけど、優しいソフィアは丁寧に1つ1つココナに教えていく。
「わかった、ありがとう」
「うん」
そしてまた無言の空間に戻っていく。
ちなみに試験は勉学の他に試合もある。
勉学の試験は1日目だけで、2日目からトーナメント形式の試合が待っている。
試合は命のやり取りをするわけではないが、場合によっては死者が出そうになることもある。
治癒魔法の使い手が常駐しているので、よっぽどのことが無い限り安全だ。
試合は勝つことも大事だが、負けても高得点な人もいる。
なぜならこの試験は魔法の技量を測るための試験だからだ。
トーナメント形式になっているのは、上位に行けば行くほど、魔法や戦いの技量が求められるような試合になり、技量を向上させることが出来るからだ。
ちなみにこれは試験なので、全生徒強制で参加させられる。
なので、コロシアムの他にこの学校にある5つの練習場も試合の場として使われることになっている。
「2人共、今日はそれぐらいにしておきなさい。詰めすぎるのは良くないわよ」
「わかりました」
「ソフィア!帰りにプラリア行こ!甘い物食べたい!」
ココナは帰れると思った途端に立ち上がって提案をしてきた。
「最近食べ過ぎじゃない?太るよ」
「だ、大丈夫!」
少し言い淀んだが、大丈夫と言い張る。
確かに何かとあの店のケーキを食べに行っている気がするな。
最近ソフィアも少し・・・。
「リアン、何か失礼なこと考えてない?」
帰り支度をしているソフィアからそんな声が掛かる。
「・・・にゃあ」
ふるふる
俺は首を横に振って否定する。
というか、なんか思考を読まれた気がした。
結局、この日はまっすぐに帰ることになった。
別れた後のココナは知らないが。
☆ ☆ ☆
「燃え尽きた・・・」
ココナが机に倒れ込むように俯いた。
今日は筆記の試験があったのだ。
レジスタンスは魔法犯罪を取り締まる目的で作られた組織だが、一般常識も知っておかないと、人間としてのモラルに問題が出てくる。
そのための試験だ。
「ココナ、明日から実技試験もあるんだよ?」
「・・・・・・うん」
ココナは体勢を変えることなく答える。
「ほら、今日はプラリアでケーキでも食べて帰ろ?」
「うん!」
ココナはソフィアの言葉にガバッと起き上がって頷いた。
本当に単純な奴だ。
わかりづらい奴よりはマシだが。
そして場所はプラリアに移り、俺もソフィアからケーキを貰いつつ、明日から始まる実技試験の話題に移っていく。
「明日から始まる試験ってトーナメント形式だよね?」
「そうみたいだね」
「ってことはさ。連続で試合があるかもしれないってことだよね」
「・・・その日にあるかどうかはわからないけど、勝てばまた試合があるのは確かだね」
俺の時は初めの方で試合した奴は午後にはもう一試合ぐらいやっていたかもしれない。
「だよね~。ココナは魔法使わないで勝った方がいいってこと?」
「あ、そうかも」
「だよね~」
そういやココナはギフトの影響で、放出系の魔法を使うと魔力を全て使い切ってしまうんだった。
ってことはココナは身体強化の魔法しか使えないってことか。
魔法を使う相手にするには近付くのが大変そうだ。
「でも近付けたらココナなら勝てるんじゃないの?」
「うーん、もっとスピードがあれば近付くのが楽なんだけど」
「え?もっと?」
ソフィアからすれば、ココナの身体強化での移動は目で追うのがやっとだ。
これ以上速くなると、目で追えなくなる。
「うん!こうパッと相手に近付いて、スパッとやれたら楽かなって」
楽だろうが、身体が先に悲鳴を上げる気がするな。
「ソフィアは楽に戦えそうでいいよね」
「そ、そんなことないよ。ココナみたいな戦法を取られたら、まず対処出来ないし」
確かにソフィアは純粋な魔法使いタイプの戦闘だ。
近距離を得意とする相手に近付けさせてしまえば、ソフィアに勝ち目はない。
(いや、あの魔法でなんとかならないか?)
ふと、俺は昔に考えた魔法で近距離への対処が出来るのではないかと考える。
(いけなくはないか。ソフィアに負担は掛かるかもしれないが)
俺はそう考え、帰ったら俺の書いた本をソフィアに出してもらって、教えるとしよう。
それと少し練習もな。
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